格安の高級リムジン配車サービス「ウーバー(Uber)」が人気な理由

鶴本浩司の観光ITレビュー

海外旅行中、日本語でタクシーを乗りこなす


 

こんにちは。観光IT専門コラムニストの鶴本浩司です。本コラムでは「観光ITレビュー」と題して旅行・観光に役立つIT関連の情報やアプリをご紹介していきます。今回はアメリカで利用者が急増しているアプリ「ウーバー(Uber)」を取りあげます。

米国のリムジンカーは一般のタクシーに比べ高級で、当然ながら料金も高額となります。日本のハイヤーと似ていますが、多くは日本よりも大型の高級車です。そんな高級リムジンカーを格安で使えるようにしたのが「ウーバー(Uber)」というマッチング配車サービスです。2010年に米サンフランシスコでサービスを開始して以来、着実に利用者を増やし、米国主要都市はもちろん、欧州やアジア、アフリカなど世界規模で展開中です。そして今年11月、ついに東京でもようやくサービスを開始しました。2012年11月に同社CEOが来日、日本への参入意向を表明していたので、ようやく実現した格好です。

現在は全世界21カ国で配車サービスを提供、同一アプリで利用できるので観光分野でも活躍することは間違いありません。英語だけでなく、日本語で利用できるため、日本人の海外での行動を言語の部分でサポートするでしょう。また、訪日外国人も英語対応をしていないタクシーを気軽に乗車できる優れものです。


▼スマホをタップするだけ、簡単な操作で依頼

ウーバーの使い方はスマートフォン(スマホ)でタップのみ、簡単に利用できます。以下、実際の利用時の画面とともにみていきましょう。

まず手持ちのスマホでウーバーのアプリを起動。自動的に現在位置が地図上に点描されるので、迎えに来てほしい場所を選びます。現在位置でよければそのままで大丈夫です。

次に車種グレードを選択。後述しますがウーバーは当初、高級リムジンだけの配車サービスでした。しかし顧客の幅広いニーズに対応できるよう、その後は他のグレードも追加設定して選べるようになりました。ここでは高級リムジンの「ブラックカー」を選択してみます。

出発地を選び車種グレードを選べば、近くにいるクルマが地図上に点描されます。

 

さらに「見積り」ボタンを見れば、目安の料金が表示されます。事前に料金確認ができるのは安心の機能です。

そして「ご依頼」ボタンを押すと近くにいる車両が応答して配車されます。

 

到着までの時間はもちろん、運転手の写真やクルマの種類、ナンバープレートも表示され、さらにこれまでの乗客から付けられた星付きレビューもみることができます。

配車されたクルマは分ごとのカウントダウンで地図上に刻々と描写され、そして目の前に到着。わかりにくい時などは事前に登録してある番号に運転手が電話をしてきてお互いの場所を確認することもあります。

ほどなく配車されたリムジンが自分の前に到着するので後は乗り込むだけ。依頼した段階で行き先も入力してあるので、運転手はすでにどこに行くかも伝わっているが、念のため確認すれば安心です。

支払いは事前に登録してあるカードに自動的に課金されます。金額の確認もありません。依頼する前に見積りで確認したその金額が課金金額です。しかもチップもその中に含まれているのでわずらわしさもありません。

 

下車した次の瞬間には、登録してある自分のメールアドレス宛てに領収書が届きます。領収書には金額だけでなく、乗車したルートや運転手の情報なども記載されているという親切さ。とにかく便利さが際立ちます。


▼このビジネスモデルが生まれた背景

ウーバーは高級リムジンの配車サービスとして誕生した背景には、もともと米国ではタクシーと別に黒塗りの大型乗用車によるリムジンが数多くあることが挙げられます。高級でゆったりとしていますが料金もタクシーよりはるかに高いため、待機時間や利用されていない時間も少なくありません。その隙間の時間を格安で利用できるようにしてはどうか、ということから生まれたのがこのビジネスモデル。運転手は個人事業主であることが多いため、本業のリムジンサービスの空き時間をウーバーによって有効活用して売上を上げられ、乗客はタクシーよりわずかに高い金額で高級感を味わえます。そしてウーバー自体はリムジンと乗客をマッチングさせることで運賃の2割を手数料として得られるというわけです。


▼タクシーより安いグレードも開始、「ウーバーX」

これまでは高級路線で急成長したウーバ―。しかし、2012年に一般のタクシーよりも安い「ウーバーX(エックス)」を開始しました。これは、一般のタクシーよりも1割から2割も安く、人気に火が付いています。こちらの車両はリムジンではなく、プリウスのようなハイブリッドカーをはじめとした一般車が多いのも特徴です。

その他、従来のタクシーも参画する「ウーバータクシー」、多人数で利用することもできる「ウーバーSUV」と合計4つのグレードから選択することができるようになりました。


▼ユーザーの利便性を考えた設計

スマホで実際にウーバーを使うと、とてもよくユーザーのことを考えていることがわかります。例えば初期登録の際のクレジットカード登録は、カードを撮影することで自動的に番号を読み込むようになっています(かなりの精度でカード番号を読み取ります)。また運転手の顔写真なども依頼した時点でわかるので安心で、通知はSMSでプッシュ型をうまく組み合わせています。

その他、「料金を割り勘にする」という機能で支払いを同乗者と割り勘にしたり、「予定到着時刻を人に知らせる」という機能で目的地の待ち合わせの相手に通知することもできます。

またユーザー評価も独特の考え方です。一般的にユーザー評価は積極的な一部のユーザーにとどまる傾向がありますが、ウーバーはそれを必須としました。下車後に画面にアクセスするとその直前に乗った運転手の評価画面が表示され、評価をしないと次の画面に進めません。ただ星付けだけでほんの数秒で簡単にできるので負担にはならないのです。

日本でのサービス開始もこれから話題を集めるに違いありません。今後の展開に注目したいところです。


鶴本浩司(つるもと こうじ)

鶴本浩司(つるもと こうじ)

観光分野のデジタルマーケティングが専門。日本だけでなく海外の事情にも精通。トラベルボイス(株)代表取締役社長、(株)マーケティング・ボイス代表取締役社長、JTB総合研究所・客員研究員、(株)パイプドビッツ(東証一部)社外取締役も兼職。

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