最後にたどり着く旅、クルーズの魅力を探る(2)
現在、世界には300隻を超えるクルーズ客船が就航しているといわれている。そのうち日本で予約できる客船だけでも、ゆうに50隻以上はある。初めてクルーズに出かけるなら、何を基準に客船を選べば良いのか大いに迷うところだ。そこで今回から、客船の種類についてまとめたい。
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▼クルーズ代金から見た、客船のカテゴライズ
ホテルの格が星の数で分類されるように、クルーズ客船にも評論家が付けたレーティングがある。あるいはビジネスホテルやシティホテル、リゾートホテルのように、一般的に利用目的や顧客ターゲットで分類された区分がある。こうした中で、一番わかりやすいのは料金別、すなわちグレード別による区分だろう。クルーズ客船の場合、「松・竹・梅」の順番に、ラグジュアリー・クラス、プレミアム・クラス、そしてスタンダード・クラスと呼ばれる。それぞれのクラスの特徴は、以下のようにまとめられる。
▼カテゴリー1:ラグジュアリー・クラス
1日当たりのクルーズ代金が300〜400ドル前後
乗客2名に乗組員1名で最高のサービスを提供、高齢者が多く落ち着いた雰囲気
1日当たりのクルーズ代金が300〜400ドル前後、またはそれ以上の価格帯となる客船のこと。1万総トン以下の小型船から、大きくてもせいぜい5万トン程度の客船が多く、昨今話題のメガシップ(10万総トン以上の大型客船)とは別の価値観で運航されている。その価値観とは最高のサービスを提供することにあり、乗客2人に対して乗組員1人の割合で対応するなど、その質は申し分ない。
反面、メガシップのような大がかりなショーは期待できず、イベントも教養講座などのレクチャー系が多い。ハード面でも贅を尽くしているため、華やかなクルーズの雰囲気を味わえる。乗客は高齢者が多く、落ち着いた雰囲気だ。旬の季節にそれに見合った海域をクルーズするため、不定期運航となる。クルーズ日数は10〜14泊と長めだ。代表的な船会社として、キュナード・ラインやクリスタル・クルーズ、シルバーシー・クルーズなどが上げられる。
なお最近はラグジュアリー・クラスの客船の中で、1万総トン前後の小型船を「ブティック・クラス」と呼んで区別するケースもある。
参考>>>
- ラグジュアリー客船「アザマラ・ジャーニー」が船内公開、東京港の初寄港で(2014年3月11日掲載/筆者)
- クリスタル・セレニティが改装後の船内を公開、5年ぶりの横浜寄港(2014年2月13日掲載/編集部)
▼カテゴリー2:プレミアム・クラス
1日当たりのクルーズ料金が100〜200ドル前後
10万総トン超のメガシップが次々に登場、初クルーズに最適
1日当たりのクルーズ料金が100〜200ドル前後のクルーズを行う客船をいう。かつては7万総トン・乗客数1,200人前後の中型客船が中心だったが、最近は10万総トン・乗客数2,000人を超えるメガシップが次々に登場し、スタンダード・クラスと同じように大型化が進んでいる。船内の雰囲気はラグジュアリー・クラスとスタンダード・クラスのちょうど中間。華やかな雰囲気がありながら、しかし気後れするような威圧感はない。
また、スタンダード・クラスよりは落ち着きがあり、サービスの質も上。クルーズ代金も両クラスの中間といったところ。初めてクルーズを経験する日本人にも、安心して勧められる。乗客の年齢層は中高年が主体で、家族連れで乗船している場合もある。運航エリアはカリブ海、アラスカ、地中海、アジア、世界一周など幅広い。それぞれの海域では定曜日発着の運航を行っているため、休暇に併せて乗船することができる。クルーズ日数は7〜10泊前後が多い。代表的な船会社はプリンセス・クルーズやセレブリティ・クルーズ、ホーランド・アメリカ・ラインなど。
参考記事>>>
- プリンセス・クルーズ、2年目の日本発着クルーズ開始、旅行関係者2000名が集結(2014年4月17日掲載/編集部)
▼カテゴリー3:スタンダード・クラス
1日当たりのクルーズ料金が100ドル前後、またはそれ以下
幅広い年齢層が乗船、本格的なエンターテイメントで華やかな雰囲気
「マス・クラス」とも呼ばれ、1日当たりのクルーズ料金が100ドル前後、またはそれ以下の安価なクルーズを行う客船を指す。運航コストを低くするために、10万トン以上のメガシップに2,000人以上の乗客を乗せて運航しているケースが多い。中でもロイヤル・カリビアン・インターナショナル(RCI)が運航する「オアシス・オブ・ザ・シーズ」は22万総トン・乗客定員5400人と、世界最大の客船。アイススケートリンクやメリーゴーランドなどもあり、文字どおり「動くリゾート」だ。
このクラスの客船は大きな船体を活かして本格的なエンターテイメントを行い、ハード面では複数のレストランやバー、ショーラウンジなど数多くの施設を設けている。乗客の年齢は幅広く、若者も多い。大がかりなショーやバラエティに富んだ船内設備などアクティブで華やかな雰囲気だが、落ち着いた雰囲気を好む人は騒がしいと感じるだろう。運航エリアはカリブ海、アラスカ、地中海、アジアなどで、定曜日発着の運航を行っている。クルーズ日数は3〜7泊が多い。代表的な船会社はロイヤル・カリビアン・インターナショナルやコスタ・クルーズ、スター・クルーズなど。
なお上記の区分は、ワールドワイドに展開している外航クルーズ客船を中心に考えてもらいたい。例えば、国内マーケットだけを対象としている日本のクルーズ客船に、こうした区分を適用させることは馴染まない。それでも敢えてカテゴライズするとすれば、ラグジュアリー・クラスとプレミアム・クラスにまたがるような感じだろうか。
また「クイーン・メリー2」などキュナードが運航する客船は、等級制を導入しているために1隻の船の中にラグジュアリー・クラスとプレミアム・クラスの客室があるという見方もある。
- コラム執筆:竹井智