日本マーケットを研究したハード&ソフト
ダイヤモンド・プリンセスで巡る日本周遊クルーズ 体験レポート <前編>
2年目を迎えたプリンセス・クルーズの日本発着クルーズ。今年は「サン・プリンセス」に加え、新たに「ダイヤモンド・プリンセス」が就航し、横浜発着クルーズを実施する。今回は「ゴールデンウィーク日本周遊と釜山」(4/26~5/6、横浜~青森~富山~舞鶴~釜山~博多~長崎~横浜)に乗船取材を敢行。乗船してわかった、日本人に対応したハードとソフトのサービスをレポートする。
(取材・文/竹井智)
*右上写真は青森港に停泊中の「ダイヤモンド・プリンセス」。
▼力の入った日本発着クルーズ向けの改装
海外からのクルーズファンも多数乗船
今クルーズは、日程がGWと重なることもあり、乗船前は乗客がほぼ日本人で占められていると考えていた。しかし、日本を周遊できるクルーズということで、海外からのクルーズファンも多数乗船してきたのだとか。国別ではアメリカ、オーストラリアからの乗客が多く、次いでロシアやイギリス、ドイツ、台湾、韓国といった印象で、トータルでは30カ国以上だという。
さて、今年が初の日本発着クルーズとなる「ダイヤモンド・プリンセス」(総トン数11万6000トン、乗客定員2670人)だが、大浴場「泉の湯」や寿司レストラン「海」(Kai)といった目玉的施設などを加える日本マーケットを意識した改装が行われた。これまでも日本船には「泉の湯」のような大浴場が設けられていたが、外国籍のクルーズ客船としてはダイヤモンド・プリンセスが初めて。床から天井まで開いた展望窓と天窓があり、陽光が降り注ぐ湯船に浸かりながら海原が眺められる。打たせ湯や洗い場などもある。なお利用は予約制で、90分20米ドルとなっている。これ以外では、ミニスイート以上の客室には洗浄機能付きトイレを、そして全客室にハンドシャワーを完備したのだ。いずれも日本人乗客の声に応えたもので、快適性はぐっと向上している。
▼特別料理など食事の選択肢が豊富、各レストランでは「和食」を提供
有料レストランでの食事は、別料金の価値
日本発着クルーズでは1航海に一度、メインダイニングで「オードリー・ヘプバーン特別メニュー」が提供される。これは1989年、初代スター・プリンセスのゴッド・マザー(名付け親)として命名式に出席したオードリー・ヘップバーンのために用意されたメニューを再現したもの。今クルーズではフォーマル・ナイトに提供された。
また日本発着クルーズを開始する上で、ダイヤモンド・プリンセスは日本食メニューにも力を入れている。メインダイニングでは朝食メニューのひとつに焼き魚や味噌汁、ご飯、香の物などからなる和定食を用意。「ホライゾンコート」では毎食、ラーメンや蕎麦、うどん、そうめんなどの麺類、日本風のカレーやトンカツ、串焼き、焼き魚などのおかずも提供される。ご飯と香の物、味噌汁は毎日用意されていたし、なんとちらし寿司や巻き寿司、稲荷寿司なども日替わりで提供されるのだ。いずれも一昔前の日本風料理ではなく、ちゃんとした和食になっていることが嬉しい。その他中華をはじめタイやインドなどのアジア料理もあるので、食に困ることはないだろう。
一方、有料のレストランにも注目したい。 まず25米ドルのカバーチャージ(席料)が設定されている「サバティーニ」と「スターリング・ステーキハウス」はともに、吟味された素材を丹念に調理した料理の味わいの良さはもちろん、客席数に対してスタッフの人数を多く割り当てているためにサービスの質は向上している。
さらに日本人として嬉しいのが「海」の存在。ここは街の寿司屋と同じく、単品ごとに値段が決められている。メインダイニングに向かう前に、軽くオードブル代わりに握り寿司をいただくのも粋だし、じっくりと腰を据えて刺身の盛り合わせ、握り、締めのうどんまでいただいてもいい。九平次をはじめとする日本酒も用意されている。
ビュッフェから有料レストランまで、さまざまな形態のダイニングがあるおかげで、ダイヤモンド・プリンセスの日常は一層華やかさを増す。朝食はおかゆで和定食をいただき、昼食はピッツェリアで日替わりのピザを、そしてディナーは500gもあるステーキをレアでいただくということも可能なのだ。その時の気分でいろいろとチョイスできること、それがダイヤモンド・プリンセスの魅力のひとつなのだから。
▼10日間では遊び切れない多様な施設
GW時に混雑感なく、ストレスフリーの乗船に
10万総トンを超えるメガシップであるダイヤモンド・プリンセスには、まだまだたくさんの施設がある。大人しか利用できない有料のリラクゼーションスペース「サンクチュアリ」、プールサイドの巨大スクリーンで映画鑑賞が楽しめる「ムービーズ・アンダー・ザ・スターズ」、日本発着クルーズでは落語も上演される2層吹き抜けの「プリンセス・シアター」、ミニゴルフコースやスポーツコートなどなど・・・。10日間のクルーズでは、すべてを楽しむのが難しいほどの多様なハードが揃っているといえよう。
また興味深かったのが、いずれの施設も混雑した状況にはなかったことだ。これは自他共に認めるプレミアム・クラスの代表プリンセス・クルーズだからこそ、船体の大きさに対して乗客定員を抑えている結果だともいえるし、乗客の出身が30カ国以上と多岐にわたるため、嗜好が分かれて一極集中にならなかったためではないかとも想像できるのだが、どうだろう?
いずれにせよ、ストレスなく楽しめるのはクルーズの基本といえるので、まさに願ったり叶ったりだ。次回、後編はダイヤモンド・プリンセスのクルーズという旅そのものについて書き記したい。
- 取材・文/竹井智