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トリッピースCEO・石田言行氏のインタビュー2回目は、石田氏が考える旅行の価値と、その目に映る旅行を取り巻く環境について。石田氏の言葉からは、24歳の若き起業家の素顔と旅行を取り扱う仕事への思いが感じられる。(右画像はトリッピース社内)
▼旅行の本質を再提起、若者には体験を売る
「かっこいいという見せ方だけでは、もう売れない」
―観光立国ということで、観光庁はじめ行政が一生懸命、旅行を盛り上げようと動いています。石田さんの目から見るとどういう風に見えていますか。アイディアとか、提案とか。
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結局、クールジャパンも赤字ですよね。これはずっと思っていることですが、「かっこいい」という見せ方だけではもう、売れないですよね。アニメなど、コンテンツが良くても赤字なのは、プロモーションがちゃんとしていなくて売っていないからです。コンテンツが良ければ売れるというのは違うと僕は思いますね。そういう意味ではもったいないかなと思います。
日本のコンテンツは本当に人気があります。ファンは圧倒的に多いので、それをお金に変えて広めていく方法をセットで考えた方がいいと思います。もちろん僕らも取り組んでいきます。そこでご一緒できるところがあるといいですよね。
―旅行業界では、若者の旅行振興に苦労しています。石田さんはその世代ですが、若者に旅を呼びかけるにはどうしたらいいですか。本当に若者は旅に行かなくなっているのでしょうか。
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僕は、旅行の本質を再提起してあげるのが大事だと思います。今の旅行業は、旅行に行く人のためにサポートをしている、そういう風に見えてしまうんです。
以前お話したのですが、日程とお金が前面に出てしまうと、お金を出せば行けることが前提なんですよね。それって僕はあんまり魅力を感じない。旅行という体験をお金で買えるものというイメージは、今の若い人たちには響かない。
お金で提示するとお金で比較してしまいますよね。物質的な価値と置き換えてしまうと物質的な価値の方が分かりやすいので、そっちに動いちゃう。車にしても、車に乗った体験を売った方がいいと思うんです。200万円で車を買ったらみんなでキャンプして楽しい思いができるというテレビCMの方がたぶん流行ると思います。
▼旅の価値を最大化
「本質的に、もっと行きたい旅にしていかなくてはいけない」
―よくケータイとか通信にお金がとられているという話もありますが、そういう印象はどうですか?
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―本質を少し見せてあげるということですか?
石田氏: 本質というか、定義がそもそも違っているんです。旅に行くだけというのはもう、価値じゃない。そこでどれだけのことができるのか。そういったものがつかめればいいと思っています。
―石田さん的な旅とは?
石田氏: 難しいですね。僕は分かりやすく「体験」、「旅=非日常の体験」と答えていますが、行動ではないですね。旅の定義はそれぞれの会社で違っていると思っています。定義が違っていない現状であるのが、難しいのかと思います。
行くことは誰でもできるし、そんなのはOTAを使った方が安い。旅行会社が仕入れで頑張るところに需要はまだまだありますけれど、インターネットの方がコスト構造が圧倒的に違うので、そこに偏っていると不利になるのはもう見えていると思います。
―御社の一番の価値は何ですか?
石田氏 基本的には、僕らが提供する価値を最大化していく。それ以外にやれることはないかなと思います。トリッピースで旅行をして、帰ってくる、そしてまたトリッピースに戻ってくる。その一連のサイクルを繋いで、一生の思い出をプロデュースしていくことが大切だと思っています。
▼石田氏のツアー参加は約20回、ヘビーリピーターとは知り合いに
「いいサービスを提供するにはその価値を知っていないと」
―御社のリピート率はどれくらいですか?最高のリピーターは?
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―そんなに自社のサービスで旅行しているんですね。でも、お忙しいので参加するのもなかなか難しいのではないですか?
石田氏: 最近ちょっと行けていないんです。良くないことですけれども。旅行会社や旅行系の会社が旅行に行けないのは、個人的にはあまり好きじゃない。いいサービスを提供するにはその価値を知っていないといけないですから。会社の成長とうまく合わせて、どんどん旅に参加しようと思っています。2ヶ月に1回は行きたいですよね。国内も含めて。
―それが一番、ユーザーが見えるということですね
石田氏: そうですね。僕は数字よりは直観に強いタイプです。数字は3割、感覚が7割で判断をつけているので、そこはちゃんとやっていきたいと思っています。
>>> 次回へ続く
聞き手:トラベルボイス編集部 山岡薫
記事:山田紀子