さる2014年6月5日、2012年に開催されたロンドン五輪で、世界的な英国のPR展開で中心的な役割をになった一人、英国政府観光庁の国際メディア&ディスティネーションPR 部長ポール・ガウガー(Paul Gauger )氏によるセミナーが実施された。語られたのは、オリンピック開催時の英国のメディア戦略と成功要因だ。(文/小野アムスデン道子)
まず、ポール氏は英国の観光業について「現在、国内産業で第5位、雇用では第3位(260万人)、1150億USドルでGDPの9%を占めるという重要な位置づけである。そのなかでインバウンドについては、年間約3300万人の訪問者が210億ポンドの消費を生み出している」とその重要性を述べた。五輪開催の翌年2013年の3300万人の外国人訪問者数は、記録的な数字であり、消費額の210億ポンドも前年比13%のアップ。観光の促進を図ることで英国経済にも大きく寄与しているという。これは五輪のレガシーがもたらした成果だという。
五輪におけるアピールについて、メディア的な戦略が本格的に取られたのは、2000年のシドニー五輪からで、五輪において放送権を持つメディアでなくても使用できる「メディア・センター」が設置されたのもこの時から。開催地のさまざまな要素が報道・メディアで発信される重要性が認識された。ロンドンのメディア・センターは、ビッグ・ベンを背景に報道できる中心地に設置し、主要新聞やテレビで放送権を持っているメディア以外のメディアも朝の8時から真夜中まで使用可能、ロンドンや英国全体の情報や映像などのリソースを利用できる施設で、8,000人を超えるジャーナリストが登録をしたという。また、放送権を持つメディア向けにオリンピック・パークにもロンドン・メディア・センターと同じコンテンツのセンターを設けた。
最終的にオリンピックを通して、英国は3万2000件以上のメディアで露出が図られ、680億人を超えるリーチがあったという。このPRの成功要因として、以下をあげた。
- 5年という準備期間を設けたこと。またオリンピック後もキャンペーンを継続し、オリンピック・レガシーを生かしたこと
- オリンピックの公式スポンサーで関連プロジェクトでもパートナーとなったサムソンはじめ、英国政府観光庁の共同キャンペーンのパートナーとしてヤフー、ブリティシュエアウェイズ、ヴァージン・アトランティック航空、ホテルなどの多く企業の協力を得たこと
- スポーツだけでなく、フードや文化の様々な側面にまで訴求したこと
- 聖火リレーの報道など通して、地方の魅力を伝えることができたこと
- 放映権を持つメディアだけではなく、その他のメディアもターゲットにし、広くSNSなども利用してアピールを拡大したこと
- PRに関してボランティアも参加できるプログラムを取り入れてこと
取材・文/小野アムスデン道子