クラブツーリズムとの経営統合でKNT-CTホールディングスとが発足してから約1年9か月。近畿日本ツーリストが持つブランドとネットワーク、クラブツーリズムが持つマーケティング力や商品企画力を合わせ、統合シナジーを生み出すことを目指してきた。こうした中、同社はメディアを対象にした懇親会を開催。代表取締役社長の戸川和良氏が、事業会社各社の状況とグループとしての取組みを説明した。
＊写真は左からクラブツーリズム社長・小山佳延氏、KNT-CTホールディングス会長・吉川勝久氏、KNT-CTホールディングス社長・戸川和良氏、近畿日本ツーリスト個人旅行社長・岡本邦夫氏、近畿日本ツーリスト社長・小川亘氏
戸川氏は、冒頭の挨拶で統合後のシナジー効果による売上げについて「確実に広がっている」と自信を示した。直近で発表されている2014年12月期第2四半期(2014年1月1日〜6月30日)の連結業績では増収も損失が膨らんでいるものの、シナジー効果による売上は2013年度が13億円、2014年度は上期だけで14億円。これは、クラブツーリズムやホリデイ・メイトなどで商品造成会社の枠を超えた相互販売をすすめ、チャーター便の共同販売なども行った結果で、来年以降も拡大して経営改善につながるとの考えだ。
また、「訪日事業を中核事業にしていく（戸川氏）」ことを強調。同社は2014年1月1日から、各社の訪日部門をホールディングス内の訪日FITセンターを設置して集約。また、各社の外国人向け商品を集約した「TABEE JAPAN（タビー・ジャパン）」を開設している。その中では、クラブツーリズムの訪日外国人向けバスツアー「YOKOSO Japan Tour」で2014年から外国人と日本人を混乗させるユニークなプランを紹介。こうしたアイディアや総力を集結することで、効率的に訪日外国人市場の取込みを強化していく方針だ。
▼合併を控える近畿日本ツーリスト個人は「時間をかけて改革」
ネット販売の拡大で“ウェブファースト”へ
一方、戸川氏は事業会社各社の状況も説明。団体・MICEなどを扱う近畿日本ツーリストを「堅調」、会員組織を強みにもつクラブツーリズムを「堅調そのもの」、個人旅行を扱う近畿日本ツーリスト個人旅行について「課題を抱えている」との認識だ。
「課題を抱えている」近畿日本ツーリスト個人旅行については、すでに同社が販売会社である近畿日本ツーリスト個人旅行販売を吸収合併することで製販一体を進めることを決定。その他、社内で構造改革を進めており、商品・店舗・スタッフの教育など「少し時間をかけて改革を進める（戸川氏）」考えを明らかにした。
近畿日本ツーリスト個人が合併する10月1日以降も代表を継続する岡本邦夫氏（KNT‐CT代表取締役／クラブツーリズム代表取締役会長も兼務）は、今後は「ウェブファーストでいく」方針。メイトやホリデイなどのホールセール商品のネット販売比率を、現在の15から22％まで高めたい考えを明らかにした。また、7月に開始したOTA的な宿泊施設の仲介サイト「e宿」の取扱いを、現在の日商約300万円から1000万円へ、登録宿泊施設数を現在の3000軒から1万件に拡大し、500億円規模を目指す。
また、リアルな場としては、東京・名古屋・大阪でクラブツーリズムとの共同店舗として旗艦店を確立していく。クラブツーリズムとの共同店舗とすることで、セミナーやイベントなどでリピーターとなる来店客を増やし、「情報の優位性を高める（岡本氏）」考えだ。
▼吉川会長、業界の一員として取組むべき2つの柱
「地方活性化」と「女性登用」
KNT－CTホールディングス代表取締役会長の吉川勝久氏（写真右）は、業界や経済への貢献という観点から重要視している事として2つのポイントをあげた。ひとつ目は「訪日旅行と国内旅行を一体化して考える」べきという考え。地方活性化の観点からも、双方を同時に考えながら底上げしていくことでキャパシティの問題やリスク回避などが可能となる。吉川氏は日本旅行業協会（JATA）副会長として国内旅行推進委員長も務めており、こうした方針で推進活動を行うという。
ふたつめは旅行業における女性の活躍を推進すること。吉川氏は、JATA副会長として女性を対象にしたセミナーに登壇するなどの活動も積極的だ。女性が経済的に豊かになることで旅行需要が拡大するとの考えで、同社でも積極的に管理職などに登用していきたい方針だという。
（トラベルボイス編集部：山岡薫）
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