タイ国政府観光庁は、2015年を観光年として旅行者増加に取り組む計画だ。現政権で継続している戒厳令下の観光について、日本人旅行者の不安を取り除き、観光年と位置付けて強力にプロモーションすることで、日本人旅行者の増加を目指す。このほど同庁本国からタワチャイ・アルンイク総裁が来日し、その方針を語った。
アルインク総裁は、まず、前政権と現政権で観光プロモーションの方向性に変わりがないことを強調した。これは、観光業が経済を活性化する産業であるとの見方を現政権が持っているからだという。戒厳令発出された直後の5月末には、陸軍総司令官の名のもとに安全に過ごすアドバイスなどを発表しており、その姿勢が見て取れる。
現在のタイ・バンコク周辺には、未だ戒厳令が発出され続けているものの人々の生活や観光は通常通りの状況。しかし、2014年の日本人旅行者数の見込みは昨年から1割減の約130万人程度を見込む。アルインク総裁は2014年の前半6か月が「良くなかった」と評価し、その理由を政情不安と消費税(景気)と考えているという。
こうしたことから、タイ国政府観光庁は来年のプロモーション方針として“ディスカバー・タイ”のフレーズのもと“タイらしさ”を訴求する。楽観的で友好的なタイ人の気質、生活様式、人、などをフォーカスしてプロモーションすることで「タイの本当の姿をアピールしたい(アルインク総裁)」という。アジア南太平洋地区担当副総裁ポンサトーン・ゲートサムリー氏副総裁(写真右)は、戒厳令は日本人にとって不安視されるものだが「タイ人にとってはどうということもない」として、日本人にタイ人の気質を実際に知らせる重要性を強調した。また、2015年は1~9月に新たなイベントも用意。また、主要都市周辺の魅力的な小さな10の町を新デスティネーションとしてフォーカスする。こうしたことで、約7割がリピーターといわれる日本人旅行者に新たなタイの魅力を発信する。
▼戒厳令下、旅行者の不安を取り除く施策を続々
戒厳令の不安のひとつは、旅行保険が適用外になることだ。これを受けて、タイ国政府観光庁は、2014年8月からタイ国内の損害保険会社4社と提携して、外国人観光客向けの特別旅行保険としてネット保険“Thailand Travel Shield”を提供している。タイ全土に入国する外国人観光客を対象に、一般的な旅行保険の代わりとなるもので手続き用に専用サイトを設けている。
9月現在の利用者は約350名。アルインク総裁は、日本人に認知の低い保険会社であるため親近感がわかないかもしれないが、今後はPRしていく考えだという。
また、2014年11月にはタイ国政府観光庁本部のウェブサイト(英語)を刷新する予定。SNSの普及で旅行者の情報収集スピードが高まる中、旅行者とのコミュニケーションもできるインタラクティブなものとし、旅行者の質問などに対応するという。アルインク総裁は、旅行者の利便性を高めるとともに「データベースをマーケティングに活用していくことも可能になる」として積極的に活用していく考えだ。
8月末には48か国1地域を対象にビザなし滞在を最大30日間から60日に延長。この措置で、対象国・地域では2015年の旅行者が「約5%増加するだろう(アルインク総裁)」との見込みで、様々な施策とともに来年の観光年を弾みに、タイは旅行者誘致を積極的に行っていく。
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(トラベルボイス編集部:山岡薫)