MICEや宴会の需要は予測できる?宿泊部門のノウハウ応用で利益を増やすテクニック

ホテルコンサルタントの堀口洋明です。

宿泊部門では日本国内でもかなり認知されているレベニュー・マネジメントは、実は宴会部門にもレストラン部門にも使える手法です。

私たちはレベニュー・マネジメントを「需要予測を基に 販売を制限することで 収益の拡大を目指す 体系的な手法」と定義しています。宿泊業の産業特性は、需要に合わせて供給を調整することができない点。その特性を考慮して、供給が調整できないなら(料金や予約経路など)他のものを調整しようというのがレベニュー・マネジメントです。

前回の「レベニューマネージメント」コラム>>>

この宿泊業の特性は、よく考えると宴会やレストランにも当てはまることがわかります。

宴会も宴会場数や営業時間から1日に実施できる宴会の数には上限があり、需要が高くなったからと言って宴会場を増やすのは無理があります。

レストランも同様で、需要が高くなったからと言って営業時間を延ばしたり席数を増やしたりということは(無理をすれば多少は増やせるのでしょうが)ほぼ無理と言えるでしょう。

特に宴会は、宿泊と同じく予約が中心ですから、予約の取り方を工夫する=販売を制限することができるわけです。需要が高い日であれば、売上があまり望めない会議を取るより大きな売上が期待できるパーティーを取ったほうがよい、という具合です。

▼宴会の需要をどうやって予測するか?

宴会でレベニュー・マネジメントを実施しようとすると、最初の課題になるのは「需要をどうやって予測するか」という点です。宿泊では予測の確立した方法があるのですが、残念ながら宴会ではまだまだの状況です。

その理由は、発生がパターンとして予測できるほどの数がない、というものです。

前年の実績値からある程度の傾向を予測することもできますが、それだけでは十分とは言えません。去年と今年は景気動向が違ったり、競合施設の増減やリニューアルがあったりと、同じように市場が動くとは言い難いのです。

例えば宿泊は、客室数100室、年間稼働率70%だとすると年間の利用客室数は2万5550室となり、予測を数学的に行うのに十分な数のデータが得られます。

婚礼でも年間100件もあれば、やはり数学的な予測が行えます。では、法要とよばれるご葬儀はどうでしょうか?現時点では数学的な予測を行うのはちょっと難しい件数です。

予測が数学的に行えないなら、それ以外の方法を取ればよいだけです。

簡単に言うと、そのポイントは以下の2点です。

  •  毎年利用していただけるお客様は次も利用してくださる可能性が高い(こういう宴会は「定例案件」と呼ばれています)
  •  入ってきた予約のリスク管理を行うことで、減少の予測は可能(仮予約>確定予約>最終予約 という具合に、商談の進み方を管理する。この商談の進み方は、売り上げ減少リスクと連動する)

実はこの2つのポイントは、宿泊部門の団体管理のノウハウとほぼ変わりがありません。最近注目度の高いMICEは「宿泊+宴会」と考えることができますので、レベニュー・マネジメントのポイントが同じになるのは、予約管理上非常に助かります。

▼予測したらまず「稼働率」を見る

需要の予測は、宴会の件数、宴会の単価、そして最終的には宴会の売上や利益という形で表すことになります。

なかでもレベニュー・マネジメントの需要予測に続く次のステップである「販売の制限」に繋げるためには、件数を「稼働率」という指標にすることが重要です。

稼働率の予測が高いということは、それだけ販売できなくなる可能性が高くなるわけですから、販売の制限を強める方が効果的な販売ということになります。

売り切れそうかどうかという判断は、客室数や宴会件数といった実数より、稼働率という指数の方が販売にかかわる多くの人が直感的にわかりやすいので、稼働率を使いたいのです。

稼働率とは「持っている施設がどの程度使われているか」という割合を示す指標です。宿泊部門では 客室稼働率 = 販売した客室数 ÷ 総客室数 と計算されます。

>>> 実際には総客室数から計画的な販売停止数を差し引いて計算することが一般的

では宴会は・・・というと、宴会場の大きさと営業時間を加味して考える必要が出てきます。

稼働率の計算には宴会場の大きさを考慮する

まずは大きさの影響を考えてみましょう。

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300平米の大宴会場、200平米の中宴会場、100平米の小宴会場がそれぞれ1つずつあり、小宴会場だけで宴会が実施されていたとしましょう。

会場数で稼働率を計算すると、1会場使用÷3会場保有=33.3%となります。

平米数で稼働率を計算すると、100平米使用÷600平米保有=16.7%となります。

大きな会場と小さな会場では売上に対するインパクトや重要度が異なりますから、宴会場の大きさを考慮して平米数を使う方がよいということになります。

▼稼働率の計算には営業時間も考慮する

次に時間の影響を考えてみましょう。

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時間を考慮しないと、2時間のパーティーも9時間の展示会も同じ稼働率100%ということになってしまいます。パーティーの前、午後に別の会議でも入ってくると、稼働率は100%を超えてしまうでしょう。それでは需要予測の評価には向いていません。

一方で時間を1時間単位で考慮したらどうなるかというと、施設によって営業時間も異なるでしょうから、分母が安定しなくなり、他の施設との比較が難しくなってしまいます。そこで、1日を3回転に分けて考えるというのが現在宴会稼働率を考える際の主流となっているのです。( 専門的には1日3回転の問題もあります)

宴会場の稼働率計算式

以上を含めますと、現在のところ主流となっている宴会場の稼働率を求める計算式は以下の通りとなります。

宴会場の稼働率 = 使用する宴会場の平米数 × 使用する時間帯数

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全宴会場の平米数 × 使用できる時間帯数(3)

▼宴会場の稼働率を考える実務上のポイント

上記の計算式には、時間帯ごとの需要が大きく偏るため、全般的な稼働率は低めになることが多いという大きな問題があります。

朝食の時間帯は宴会の利用が少ないことが多いため、単純に計算してしまうと稼働率は66%程度にしかならないことになってしまうのです。

ですので、実務上は少なくとも時間帯別に稼働率を検討する方がよいでしょう。

私たちのツールでは、稼働率を 時間帯別 × 月別 × 曜日別 の3つの観点から分析するようにしています。

今回は宴会にもレベニュー・マネジメントが使えることを説明し、需要予測として稼働率を計算するところまで説明させていただきました。

次回は宴会レベニュー・マネジメントの販売制限と評価について説明させていただこうと思っています。

堀口 洋明(ほりぐち ひろあき)

堀口 洋明(ほりぐち ひろあき)

ホテルコンサルタント。長崎大学卒業後、国内のリゾートホテル、シティホテル、ファンド系ホテルチェーン本部勤務を経て2007年に株式会社亜欧堂を設立。国内系・外資系、シティホテル・ビジネスホテル・リゾートホテルといったホテルの業態を問わない経験を持ち、「ホテルマネジメントをサポートする」をコンセプトに、国内ホテルを中心にコンサルティングを提供中。著書に「ホテルの売上倍増実践テクニック100(オータパブリケイションズ)」など。

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