“インバウンド・バブル”と言われるほど活況を呈する日本市場に対し、エクスペディアではグローバル規模でキーマーケットと捉え、戦略的な誘致を強化している。2015年3月24日、国内ホテルや日本政府観光局(JNTO)、自治体関係者約300名を招いたパートナーイベントには、本社から複数のエグゼクティブが来日したのをはじめ、エクスペディアから約100名が参加し、日本市場を重視する姿勢が示された。
副社長兼グローバル最高事業責任者のシリル・ランク氏(写真上)と、アジア地区最高事業責任者のクラム・マルヒ氏(写真右)によるプレゼンテーションによると、エクスペディアでは31か国のサイトでホテル43.5万軒、航空会社400社を扱っており、年間売上は約5.2兆円(2013年10月~2014年9月)。日本へのインバウンドの予約数は右肩上がりで、日本での宿泊件数の8割を占める。2014年は全世界からの予約者が87%増、アジアに限ると211%増で、アジアにおける伸び率で1位となった。
好調の最大要因は、日本への予約のトップ10のうち8か国を占めたアジアの急伸。1位の香港は640%増、タイは316%増など、いずれも倍増以上で成長した。これは、円安や政府のビザ緩和施策、アジアの経済成長による海外旅行需要の増加に加え、エクスペディアのアジアにおける拠点体制の充実にある。
▼2014年日本への旅行予約数
日本地区マーケティングディレクターの木村奈津子氏によると、エクスペディアの世界戦略においてアジアは欧米に比べて新しく、初の日本設立が8年前のこと。現在11か所に広がったが、韓国は4年目、香港では3年目だ。最初は現地での認知が低く、日本など他拠点からの送客先としてホテル仕入れを増やすことで需要が増えていくため、本格的なマーケティングを行なって現地発の予約を増やせる体制がこの数年で整ってきたという。このタイミングにも合わせ、各拠点でのブランド力をさらに高めるための投資を強化し、現地発の予約に繋げる方針だ。
日本ではホテル・旅館向けサービス担当者を現在の47名から倍増。福岡や那覇などの地方も伸びていることから、地方都市へのプロモーションも強化する。価格的訴求型だけではなく、デスティネーションマーケティングやコンテンツマーケティングに力を入れており、JNTOや自治体など関係各所とのコラボレーションや、対象市場の特性を踏まえたコミュニティ、ブログ、SNSを活用したメディアマーケティングも引き続き行なう。
▼左)2014年日本の人気都市ランキング、右)日本の人気都市・急上昇ランキング
さらに、自らを“テクノロジーカンパニー”と称するように、技術開発、特にモバイル関連にも注力。スマートウォッチなどウェアラブル端末を含め、ウェブ環境やデバイスの多様化に対応し、プロモーションや提携ホテルの販促や差別化に繋がるサービス、支援ツールなどでも活用していく。
なお、イベントで発表されたアジア各国の人気海外旅行先ランキングは以下の通り。
▼2014年アジア各国海外旅行 人気の国・都市ランキング