政府は2015年12月24日、2016年度(平成28年度)予算案を閣議決定した。観光庁の予算額は245億4500万円。前年比2.36倍、約140億円増の大幅拡大となった。復興枠を除く予算額は200億1400万円となり、昨年度(99億円)の約2倍を計上している。
予算額245億4500万円のうち、新規事業として注力する「『次の時代』に向けたインバウンド受入環境整備・観光産業活性化」には83億7400億円を計上。継続して推進する「戦略的訪日プロモーション・MICEの誘致」事業には94億8200万円(前年比1.18倍)、「地方創生のための観光地域づくり」事業に63億6700万円(同3.23倍)が設定されている。
宿泊施設不足や地方消費拡大など、インバウンド受け入れ環境整備を新事業に設定、全予算のうち約3分の1を割いて注力するものとなっている。
「次の時代」に向けたインバウンド受入環境整備・観光産業活性化
「『次の時代』に向けたインバウンド受入環境整備・観光産業活性化」では、訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業費に80億円を計上。そのなかで、宿泊施設不足対策や地方での消費拡大に向け、ICTを活用した施設環境整備や空室情報提供の強化、地方での免税取引情報や観光案内所の活用策などを提示。また、SNSなどを通じた訪日外国人の不満・要望調査などもおこなうとしている。
空港や港、鉄道、バスといった交通サービスに関連するインバウンド対応では、Wi-Fi環境整備やデジタルサイネージを活用した情報提供支援を広くおこなうほか、企画乗車券の企画・開発支援、エレベーターやスロープ設置などの支援も推進する。
また、産学連携による旅館・ホテルの経営人材育成事業費として3億2200万円を計上。全国複数拠点で人材育成プログラムを実施することで、次世代の観光産業を担う経営者の成を進め、将来トップレベルの学部・学科の設置にむけた基礎にする計画とする。
そのほか、継続してユニバーサルツーリズム促進事業(3200万円)や通訳ガイド制度の充実・強化(2000万円)予算も計上されている。
地方創生のための観光地域づくり
継続事業である広域観光周遊ルート形成促進事業には、16億4000万円(前年比5.4倍)の予算を計上。引き続き、専門家チームを各ルートに派遣してモデルルートの形成と洗練をおこなっていくほか、ターゲット層に向けたプロモーションを大幅強化する。
また、観光地域ブランド確立事業予算では2億5100万円を計上。ワークショップの開催や地元でのコンセンサス形成を通じて地域の将来像やブランド構築、ガイドツアーや滞在プログラムの実施などにより、その地域ならではのブランド確立を目指す取り組みを支援していく。
そのほか、地域資源を活用した観光地魅力創造事業には3億3800万円を計上。地域資源活用型の施策や日本版DMO(Destination Management/Marketing Organization)を視野に置いた人材育成支援も進めていく。
なお、復興枠の「東北地方へのインバウンド推進による観光復興事業」では、新たに32億6500万円を計上。外国人旅行者増加による観光効果を波及させることで被災地の復興を支援する施策がとられる見通しだ。
戦略的訪日プロモーション・MICEの誘致の促進
戦略的訪日プロモーション・MICEの誘致の促進事業では、日本政府観光局(JNTO)によるビジット・ジャパン事業の運営交付金70億3700万円の一部と、国と地方の連携によるビジット・ジャパン事業予算の12億4500万円を充当。欧米の旅行者に向けた日本の伝統・歴史を訴求するプロモーションのほか、訪日旅行者を含めた地方誘客とよる消費拡大施策として、LCCやクルーズの新規就航や増便、訪日教育旅行エリアの地方への拡大を実施。JNTO海外事務所を現在の14事務所から21事務所に増加、プロモーション体制の強化もおこなうとしている。
なお、プロモーションの分野でも「東北地方へのインバウンド推進による観光復興事業」予算として新たに10億円を計上。ここでは、海外に向けた日本・東北のイメージアップを促進し、誘客につなげるとしている。
MICE誘致の促進では、1億9900万円に加え、JNTO運営費交付金70億3700万円の一部を充当。グローバルMICE強化都市を中心とした集中支援やユニークベニューにおけるMICE開催啓発などをおこなっていく。