民泊の新制度作りに向けた議論が進むなか、旅行業法や旅館業法の改正が再浮上している。2016年5月23日に開催され「民泊サービスのあり方に関する検討会」での議論の中で、厚労省と観光庁が見解を示した。
旅行業法に関しては、旅行業登録について。これまでの議論では、民泊は既存の法制度ではない新たな枠組みで作られるものとし、住宅提供者は「届出制」、管理者や仲介者は日本以外にサーバーを置く海外系事業者を含め「登録制」とする方向で取りまとめられている。現時点でこれに変更はないが、今回の検討会では、民泊のネット仲介業者が扱うサイト上に簡易宿所を含む旅館業法上の施設が1軒でも含まれた場合は、「論理上は旅行業登録をした方が良い」との考えが観光庁から示された。
ただし、現在の旅行業法は日本に住所を置く事業者が対象で、海外系事業者はOTAガイドラインを遵守する形となっている。観光庁では「民泊で国内・海外系とも登録制とする仕組みを考えると同時に、旅館業法上の施設を扱う旅行業の取扱についても考えていく」意向だ。
一方、旅館業法については民泊への早急な対応として今年4月、簡易宿所営業の面積基準が緩和されたところ。また、同検討会の中間整理でも(1)宿泊拒否制限、(2)無許可営業への罰則強化、(3)無許可営業者への立入り権限など、民泊の制度設計に伴う全体的な見直しが必要とされている。
さらに今回の検討会では、旅館業法の「旅館営業」と「ホテル営業」の規定について「室数制限が実情にあっていない。規定とともに許可も一本化すべき」との意見があり、これについても厚生労働省が検討していく考えを示した。
営業日数180日以内は立場越えて「反対」
検討会では、5月19日に開催された政府の規制改革会議の答申の民泊分野について説明がされ、同検討会の議論と方向性が一致していることが確認された。ただし、規制改革会議の答申は同検討会の制度案よりも一歩踏み込んだ内容だ。
例えば、検討会で議論中の民泊の「一定の要件」では、年間提供日数の上限を半年未満(179泊180日以内)で適切な日数を設定すると、具体的な日数を記載。また「家主居住型」は原則として「住民票」がある住宅とした。このほか、「一定の要件」を満たした場合、住居専用地域での民泊を容認する一方、自治体の条例等で禁止できるとした。
これについて意見交換では、特に180日以内とした営業日数について、一定の線引きを求める宿泊業からは「プロのビジネスの世界」、集合住宅の複数住居で参入を検討する賃貸業からは「180日では事業としてペイしない」など、異なる立場から不満の意見が飛び交った。
また、営業日数の把握についても、複数の仲介業者を使用したり、民泊提供者が自ら直販する場合もあるため、「実際的に管理するのは難しいのでは」との意見も寄せられた。
なお、観光庁と厚生労働省の検討会は2016年6月中の取りまとめを予定。政府では2016年度中の法案提出を目指しており、これに間にあう形で民泊を所管する行政庁を決定し、その行政庁を中心に法整備に取り組むことになっている。
トラベルボイス編集部