「じゃらんnet」の2015年度の国内宿泊予約流通取扱高(予約受付時)は、前年比19%増の8086億円と2ケタ増となった。2016年6月29日に開催した「じゃらんフォーラム2016(東京会場)」には約800名の宿泊事業者が集結。リクルートライフスタイル執行役員旅行領域担当の宮本賢一郎氏が、会場でじゃらんの取り組みとあわせて発表した。
じゃらんでは「需要にこたえる」「需要を創る」「地域を共に創る」の3つの基本方針のもと、宿泊集客を含む旅行全体のプロセスにかかる「旅行情報サービス」としての取り組みを目指しているところ。
昨年の取り組みのうち、大きなトピックである「ふるさと旅行券」では、じゃらんnetでは49行政から受託。宿泊人数は93万人、予約取扱額は約115億円で、旅行消費額は約345億円を創出したと見込む。宮本氏は、クーポンを利用して地域を訪れた約7割の人が初訪問だったという内閣府の調査を踏まえ、「満足度が高かったお客様のリピートが期待できる」と今年度にも繋がる効果への期待を示す。
また、若者の旅行需要創出を目的とする行動支援プラットフォーム「マジ☆部」では、昨年には釣りを加えてコンテンツを5つに広げ、会員数が18歳~22歳の10人に1人に相当する累計58万人に拡大。さらに昨年7月に開始した「遊び・体験予約サービス」では、下半期に上半期比300%増の大幅な伸びを実現。今春には観光協会など地域の団体や事業者に、地域情報を紹介するコンテンツとして掲載も可能とし、アフィリエイトも開始した。
さらにインバウンドでは対応言語を8か国語に拡大したほか、2015年11月から海外旅行会社向けにじゃらんnetの在庫を直接予約できるサービスや地方と協業した誘客の取り組みを実施。こうしたサービスを通して、需要創出から誘客、現地消費の拡大、さらなる地域の魅力創出に繋げていく考えだ。
このほか地域創生のキーワードとなっている「日本版DMO」に対しても、地域資源を掘り起こすための調査から商品化までのプロセスをフォローできる体制を構築。地域のマーケティングからコンテンツ開発、集客、現地消費までを一貫してサポートし、「宿泊の集客サービス」だけではなく旅行全体のプロセスをカバーする「旅行情報サービス」への展開を図ることを強調した。
テクノロジーでインバウンド強化、VRゴーグル20万部配布も
リクルートライフスタイルでは同社の主要領域である旅行・飲食・美容事業に対し、テクノロジーを活用した業務支援を強化している。このうち、今回のフォーラムでは同社代表取締役社長の浅野健氏が、インバウンドとメディア展開での新たな取り組みを説明。インバウンドでは、タビナカ事業者も対象の業務支援構想「Airシリーズ」と多言語音声翻訳「VoiceTra.R」を紹介した。
なかでも「VoiceTra.R」は接客・観光に特化した翻訳アプリで、日英中韓の4か国語に対応。接客特有のフレーズや独特の地名にも対応できるほか、インターフェースも、実際の接客シーンを想定して使いやすいデザインとしたのも特徴だ。現在、実証実験の第2弾を進めているところで、2017年以降の実装開発を予定している。
一方、メディア展開では、2016年に本格普及するといわれるVR(ヴァーチャルリアリティ:仮想現実)への取り組みを強化。見て読んで理解するだけでなく、現地を訪れたような体感できるメディアへ進化し、旅行意欲の喚起を図る。2016年5月28日発行の「じゃらん家族旅行」と11月4日発行予定の「じゃらん沖縄」ムック版の計20万部の付録として、手持ちのスマートフォンで使える簡易型VRゴーグルを配布し、「じゃらん沖縄版」では広告でもVRに対応する予定だ。
同社が制作するVRコンテンツは閲覧のための特別なアプリは不要で、QRコードを読み込ませてそのまま見ることができるため、宿泊施設のホームページにリンクを貼ることで利用できる気軽さもポイントだという。
なお、「じゃらんフォーラム」は宿泊施設や観光関連事業者を対象に、全国8地域で開催。東京会場は関東甲信越地域を対象に開催しており、同社によると約800人が参加した。
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