JTBは「2016年夏休み(7月15日~8月31日)の旅行動向」で、同期間に1泊以上の旅行に出かける総旅行人数が前年比0.7%減の7745万人となる見通しを発表した。国内旅行は1.0%減の7485万人となる一方、海外旅行は7.4%増の260万人と推計。消費に対して全体的に慎重な傾向がみられる反面、円高や燃油サーチャージ廃止を背景に、海外旅行には比較的積極的となる見通しだ。
総旅行消費額は4.5%減の3兆850億円、消費に慎重も「できる範囲で工夫して旅行を」
夏休みの旅行費用の見込みは、国内が2.9%減の3万3700円、海外が14.0%減の21万6300円。これによる総旅行消費額は、国内が3.9%減の2兆5226億円、海外が7.5%減の5624億円で、全体でも4.5%減の3兆850億円との見通し。
この背景には、国内企業の2016年3月期決算で最高益を記録する企業が多数存在し、ボーナス支給額や就職率などが改善傾向にある一方で、急激な円安や株安などによる先行き不透明感がある。アンケートでも消費に対して慎重な姿勢がみられ、夏の収入・支出では「生活はこれ以上切詰められないので、欲しいものを控える」が33.6%と最多。旅行については、「支出を増やしたい」は前年比1.2ポイント減の14.8%、「単価も回数も同程度」が0.9ポイント増の35.3%、「単価を減らし回数を増やす」は前年と同じ12.3%。「できる範囲で工夫して旅行を楽しみたい」意向が強い様子がうかがえたという。
今後の旅行支出に対する意向は以下のとおり。
海外旅行の傾向 ―アジアを中心に、北米・オセアニアなどが好調
JTBの企画商品の予約状況では、海外旅行の出発のピークは長距離で8月13日、中距離で10日、近距離で14日が多い。方面別では、タイ(5.9%増)や台湾(6.6%増)が堅調な伸びを示し、中国(12.1%増)や韓国(29.4%増)、香港(8.9%増)は昨年のマイナスから回復。全体としてアジアを中心とした近距離が人気。また、ヨーロッパはスペインやポルトガルが昨年を超える伸びとなったほか、北米(4.2%増)やオーストラリア(16.7%増)、ニュージーランド(18.2%増)などオセアニアも好調だ。
方面別の海外旅行人数推計値は以下のとおり。
国内旅行の傾向 ―鉄道旅行が人気、宿泊は「実家・知人宅」が前年比増
予約状況によれば、国内旅行のピークは8月12日から15日。利用交通機関では、レンタカーを含む乗用車利用は微減となったものの、全体の7割以上を占めた。また、北陸新幹線や北海道新幹線の開業効果や各地の観光列車人気が続き、鉄道が2.8ポイント増の23.8%で好調。飛行機利用は4.1ポイント減の14.5%、長距離・貸切バス利用は0.8ポイント増の6.2%となった。
行き先としては、新幹線利用の北海道や東北、USJや京都鉄道博物館がある近畿などが人気。アンケートでは帰省やボランティア目的での九州旅行も増加したという。宿泊施設は「実家・知人宅」が前年比5.5ポイント増の27.3%となった一方、ホテル、旅館、民宿・ペンションは減少。ここでも費用を抑える傾向にあるという。
方面別の国内旅行人数推計値は以下のとおり。
この調査は、JTBグループの販売状況と航空会社の予約状況、業界動向、経済動向、1200人のアンケートから推計したもの。アンケートは6月2日~14日、全国200地点で専属調査員による個別訪問調査として実施した。