2016年4月にモントリオールで開催されたカナダ最大のトラベルマート「ランデブー・カナダ(RVC)2016」。新たな観光素材やトピックを中心に、会場で入手した最新情報をピックアップし、2回に渡って紹介する。前編は注目の新たなトレンドについて。
カナダ先住民の観光情報を発信する組織が日本市場に意欲
今回、RVCに初参加した団体で注目されたのが、2015年設立の非営利組織「アボリジナル・ツーリズム・アソシエーション」だ。カナダ各地の先住民コミュニティで行われているツアーやアクティビティの情報を発信するとともに、各コミュニティや事業者には持続可能なビジネスや雇用などについてアドバイスも行っている。
ウェブサイトでは、全国に約1500ある先住民観光プログラムの一部を紹介。「カナダには多彩なプログラムがあるが、アメリカやオーストラリアなどに比べ周知活動が遅れている。我々の組織が全国の情報を集約し、ワンストップで提供していきたい」とキース・ヘンリー会長兼CEOは語り、日本へのPRにも意欲を見せる。
やはりRVC初参加でオンタリオ州北部の宿泊施設クリービレッジ・エコロッジも同組織のメンバーで、ムースファクトリーという先住民コミュニティにある。ナショナル・ジオグラフィックで世界のベストロッジ25の一つに選ばれ、クリー族という先住民が運営。滞在しながら先住民文化にふれられ、冬はオーロラを見るチャンスもある。
先住民文化に関連した新しいプロダクトも増えており、ユーコン準州に今夏オープン予定の「チルクートトレイル・ビレッジ」もその一つだ。国立公園の中にあり、グランピングタイプのデラックスなテントに滞在しながら、先住民文化にふれるアクティビティが体験できる。ホワイトホースからの水上飛行機や食事、アクティビティを含む3泊4日のパッケージツアーの販売を開始している。
「地産地消」と「食」を楽しむカリナリーツーリズムが各地でさかんに
カナダでは近年、地元の食をさまざまな形で体験する「カリナリーツーリズム」も発展している。カルガリーでは、ファーマーズマーケットで地元産の野菜について学んだり、地元のシェフと交流するなど食に特化した「カルガリー・フードツアーズ」のツアーが人気。バンクーバーではグランビルアイランドの市場を試食しながら回るフードツアー、オンタリオ州のプリンス・エドワード・カウンティでは、農場や地産地消のレストランなど食をテーマにした観光ルート「テイスト・トレイル」が注目されている。「赤毛のアン」の故郷として知られるプリンスエドワード島も農業や漁業がさかんとあって、農場や魚市場の見学など、食に関するツアーや地産地消のレストランなどがここ数年、急増している。
中でも注目が「イン・アット・ベイ・フォーチュン」というホテル。料理番組で大人気を博し、バンクーバーオリンピックで料理長を務めたカナダの有名シェフ、マイケル・スミスが働いていた。昨年にスミス氏自身がオーナーとなり、ダイニングを中心に大幅リニューアル。グルメな宿として早くも人気となっている。
「日本のツアーは赤毛のアンゆかりの地巡りが中心だが、元々この小説は料理や食材の描写も多い。食に関するスポットや現地ツアーをプラスすることで、より旅の魅力が深まるのでは」とプリンスエドワード島州政府観光局の高橋由香日本代表は語る。
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取材・記事: 井上理江