楽天トラベルは報道関係者向けの事業説明会を開催し、トラベル事業長の山本考伸氏を筆頭に、マーケティングや国内、国際、アクティビティ等の各4事業の責任者が現況と方向性を説明した。
このなかで、副事業長で国内宿泊担当の羽室文博氏は、国内OTAが拡大した理由として楽天の創業当時からのコンセプトである“集客”にあると説明。従来の旅行会社の値付けによる“送客”から、宿泊施設が自由にリアルタイムで値付けをし、インターネットを介して宿泊客を集められるようになったことが、施設と楽天会員の双方の利便性を向上し、楽天の量拡大につながったとアピールした。
現在はさらに、予約プラットフォームから楽天会員とサプライヤーの双方に最適な選択を実現する「ベストマッチング」プラットフォームへの進化を推進しているところ。楽天の強みである会員データとAI(人工知能)を活用し、楽天会員が自分にあった施設を探しやすくすると同時に、宿泊施設も個々の楽天会員にターゲティングできる仕組みを構築していく。昨年には、宿泊施設が日にちと割引率を自由に設定できる新クーポンも開始した。
こうした取り組みは業績にも反映されつつあり、2015年の国内旅行取扱額は前年比23.7%増の4651億6998万円。観光庁が発表する主要旅行業者の旅行取扱状況速報による伸び率の平均8.3%増を大きく上回った。これについて山本氏は「ふるさと割」の効果と国内事業部で行なっている地域振興事業に加え、特定条件のセグメント別に仕掛けることができるプロダクト開発の仕方が「ふるさと割の思想にフィットした」と説明。各種データも見えやすく、ふるさと割の利用者から「プロモーションしやすいプラットフォームだった」との評価が得られたという。
国際事業も拡大へ
一方、海外旅行は1.5%減の156億6010万円で減少。ただし、国際営業部長の幅屋太氏によると今年に入ってから上向き傾向で、特に今夏(7月~9月)は前年比39%増の伸び。円高や燃油ゼロ、急速なFIT化という外的要因に加え、「サプライヤーのOTA志向を強く感じる」こともアピール。施設の値付けで施設にあう楽天会員に在庫を販売できるメリットが理解され、仕入れ状況が良くなっているという。
例えばハワイではアウトリガーホテルズの取り扱いを開始するほか、マリオットともグローバルコントラクトを交わし、システムを構築中だ。楽天ではプラン設定やカスタマイズページの用意によって、レジャーマーケットでも5つ星ホテルや高単価な客室の販売が多く、「グローバルと戦う上で強み」(幅屋氏)と強調する。
2015年10月にはワールドトラベルシステム(WTS)を子会社化して航空券ラインナップを拡充しており、航空券販売を入口にホテルとのエリアマッチングを強化。「航空券は楽天ポイント1%還元し、手配手数料もゼロ。ホテルは各施設のベストレート保証に対しポイント還元を行なう。どこよりも安価を実現している」(幅屋氏)と価格競争力の面からも攻勢をかけていく方針だ。
なお、山本氏はテクノロジーを活用したプロダクト開発を進める一方で、オフラインのつながりを重視し、電話予約やサポートセンターへの投資を拡充していることも説明。今年4月から24時間予約と問い合わせ対応を開始したが、このオフラインに寄せられる問い合わせ内容を技術開発に活かしていることも明かした。
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