デルタ航空は2016年8月10日(米東部時間)、成田/ニューヨーク線、成田/バンコク線、成田/関空線(乗継用)の成田空港発着3路線を今秋に運休することを発表した。同社は、「長期的にアジアでの成長と強化に注力」することを表明しており、北米とアジアを結ぶハブ拠点とされてきた成田空港の位置づけに変化がおきそうだ。
2016年2月の日米航空協議の決定後、デルタ航空は米国会社に配分された羽田の昼間発着枠5枠のうち2枠を仮に割り当てられ、数週間前に米国運輸省(DOT)から羽田/ロサンゼルス線、ミネアポリス線の暫定承認を受けていた。同社は、今回の運休がこの暫定承認を踏まえて決定したとしている。
デルタ航空では、アジア太平洋地域担当上級副社長のヴィネイ・デューベ氏のコメントとして、日米航空交渉の合意内容に関わらず引き続きアジアを重視する方針を示す一方で、成田3路線の運休について「アジア地域で長期的な成功を確保するため」と説明。「ネットワークを大幅に再編成しなければ、アジア太平洋地域における地位は著しく低下する」との考えを強調した。
デルタ航空では以前から、羽田の完全自由化を訴え、2016年2月の日米航空交渉については「羽田空港への昼間のアクセスを制限するもので、日本に共同事業パートナーを持つ他の米国航空会社が有利になる」と主張してきた。デルタ航空が加盟する航空連合スカイチームには、JAL・ANAとった日系航空会社が属していない。
デルタ航空が成田をアジアの重要ハブとして路線展開するなか、羽田空港は日系航空会社が10年以上をかけて広範なアジア路線のネットワークを構築しており、「日系航空会社とその共同事業パートナーの米航空会社は日米全12枠のうち8枠をアジア路線ネットワークに繋げられる。顧客の流れはデルタ航空の既存の成田便から地理的優勢の高い競合他社の羽田便に移ってしまう」と、デルタ航空の主張の背景を説明する。
ただし、該当3路線の運休後も、デルタ航空は成田発着便でシアトル、ポートランド、デトロイト、アトランタの米国本土線のほか、上海、台北、シンガポール、マニラのアジア路線を運航。ホノルル、グアム、サイパン、パラオの各リゾート路線も継続する。DOTの最終承認後に運航する羽田/ロサンゼルス、ミネアポリスをあわせ、日米間で最大規模の航空会社の一つとアピールする。
なお、羽田/ロサンゼルス線には使用機材を大型化し、ボーイング777型機を導入。羽田/ミネアポリス線では、米国中西部や東海岸への乗継需要にも力を入れる。
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