
エイチ・アイ・エス(HIS)は、2025年3月31日、同社と子会社が新型コロナウイルスに伴う雇用調整助成金(雇調金)を不正に受給した問題の再発防止策として、コンプライアンス意識の醸成、グループガバナンスの強化、公的助成金の申請における内部統制の見直し、労務管理の徹底、内部通報制度の周知と活用の推進、内部監査体制の見直しの6つを挙げた。
なお、管理監督責任、経営責任として、代表取締役社長(CEO)の矢田素史氏の月額報酬を5カ月間、50%減額、常務取締役の織田正幸氏の月額報酬を3カ月間、50%減額するなど関係役員の処分も決定した。
返納はすべて手元資金から
具体的な再発防止策では、全体的なコンプライアンス研修の見直しやトップメッセージの発信、グループガバナンスの強化として検討会を立ち上げ、子会社の役員任期を定めることによるマネジメント固定化の防止、助成金申請内容や勤怠のモニタリング、内部通報制度で現存の外部窓口に通報しづらい場合に選択できる窓口の検討などを実施する。
雇調金の不正受給は、同社がコロナ禍におけるGoToトラベル不正受給の再発防止に向けた改善措置をおこなっている最中に発生。背景には、改善措置が道半ばだった時期的な問題に加え、グループ全体の助成金に関する不祥事リスクへの認識が不十分で、子会社の管理・人事部門の体制や権限を強化する対応までには至らず、雇調金に対するけん制効果が限定的だったことも要因にある。
なお、同グループの中で不正受給かつ役員による指示があったのは連結子会社のナンバーワントラベル渋谷、クルーズプラネット、不正受給があったのが欧州エキスプレス、故意によらない不適正受給があった会社はHISを含めグループ15社にのぼった。業績への影響は合計84億2800万円で、すべて手元資金からの返納を予定。今後の投資については「金融機関とも相談したい」(矢田氏)としている。2020年10月期~23年10月期に特別利益として計上した助成金収入を約20億円減額訂正したほか、約64億円をすでに国に返還している。
HISの矢田氏は2024年10月期の決算会見で、「多大なるご心配、ご迷惑をおかけしていることをおわびする」などと謝罪した。