
2025年4月18日、ハワイ・ホノルル市内で日本とハワイの旅行業界関係者が集う「ジャパンサミット2025」が開催された。日本の旅行会社ら21社92名、現地サプライヤーら88社216名の総勢約300名が参加。日本とハワイの旅行関係者が一堂に会し、最新の旅行動向や観光素材を共有し、個人旅行化や観光素材の多様化など変化する旅行トレンドに対応する活発な商談がおこなわれた。
ハワイ州観光局本局(HTA)のキャロライン・アンダーソン暫定局長は、冒頭のあいさつで、ハワイの観光振興が地域社会を中心に据えたものであることを強調。住民と観光客の双方に意味のある観光を構築していくことが最も重要との考えをしめし、「今後、さらに調和のとれた再生可能な観光モデルを築いていく」との方針を示した。そのうえで、「日本は、重要な市場のひとつ。今後も日本とのゆるぎない強いしなやかな関係を構築していきたい」と呼び掛けた。
ハワイ州観光局本局(HTA)のキャロライン・アンダーソン暫定局長
2024年のハワイへの日本人旅行者数は前年比22.3%増の72万488人、観光消費額は同14.8%増の10億6780万ドル。1人1日あたりの消費額は同0.4%減の239.7ドル、1人あたり滞在日数は同5.8%減の6.18日。旅行者数については、前年比増であるものの、コロナ禍前の2019年比では約46%にとどまる。
ミツエ・ヴァーレイ日本支局局長(HTJ)は、こうした状況について「日本マーケットは回復が緩やかではあるものの落ちていない。着実に回復している」と評価。現状の航空座席供給量はコロナ前の66%水準だが、今夏から秋にかけて供給量の増加が期待されており、2025年は85~90万人を見込んでいる。
今こそ、旅行会社の存在に期待
コロナ後、ハワイへの日本人旅行者はリピーターから回復が進み、個人旅行化が加速。現地では、米国本土からの旅行者の存在感が増し、仕入れ環境も変化した。また、環境保全や文化継承に貢献する再生型観光への取り組みで旅行素材の多様化もすすんでいる。一方で、直近では、米国市場が落ち着きを見せはじめている状況もある。ヴァーレイ氏は「今こそ、改めて、日本の旅行会社の存在に期待している」と力を込める。
サミットでは、ヴァーレイ氏が日本市場への戦略についても共有。短期的には予約のペースを上げるために、OTAや航空会社、法人の会議や報奨旅行などを推進する「Meet Hawai'i(ミート・ハワイ)」との連携をさらに強化する。
中長期的には、ハワイを初めて訪れる旅行者を増やすことを重視。初めてハワイ旅行を検討する旅行者向けに、安心・安全を訴え、旅行会社のパッケージツアーの利便性や個人旅行時の注意点などの情報をとりまとめているという。また、3世代家族へのアプローチも強化。「やっぱりハワイキャンペーン」で、これまで実施してきた「親子編」「カップル編」に加えて、新たに「ファミリー編」動画を制作し、夏休みに向けた旅行予約を促す。
また、5月以降、新たに「Beautiful Hawai'i」と銘打ったキャンペーンを準備している。それぞれの島の魅力を伝えるショート動画を数多く準備。SNSを通じて動画を拡散していくことで、いつでも旅行先の選択肢として上位にいられる状況をつくる。こうした動画素材については、パートナー各社も活用が可能。ヴァーレイ氏は、「ともに広げていきたい」と参加者に呼び掛けた。
このほか、日本でおこなうBtoC向けのイベント、メディア招請による露出の拡大、アロハプログラムのサテライト357店舗の店頭への協力など、各種取り組みを精力的に展開していく計画だ。
ミツエ・ヴァーレイ日本支局局長
各島が観光素材をアピール、観光客のマナー啓発も
サミットでは、ハワイ各島の代表から最新の観光素材のアピールがおこなわれた。共通するのは、地域の文化や自然を体験できる素材が多いこと。地域に根差した料理教室から、ボランティア、年間を通じたイベントまで豊富だ。
このなかで、オアフ観光局 局長ノエラニ・シェリング・ウィーラー氏は、注目の観光素材のひとつとして最新エンターテイメント「アウアナ(AUANA)」を紹介。シルクドソレイユとのコラボで実現したハワイの伝統文化を反映したアクロバティックな舞台は、「ハワイの文化継承、ネイティブハワイアンの価値、文化の継承を伝えるもの」とアピールした。
ウィーラー氏は、観光素材の紹介とともに「旅行者に対して責任を持った旅行をしてほしいことも伝えてほしい」とも言及。ダイヤモンドヘッドなどでは、混雑緩和や環境保全を目的に予約が必須となっていることや、現地でのマナーを守るために注意書きの看板に注目してほしいこと、また、地元住民も観光地を楽しむことができるよう「観光客には、なるべく平日を選んでもらえたらうれしい」と日本の旅行関係者に協力を求めた。
オアフ観光局 局長ノエラニ・シェリング・ウィーラー氏
また、2023年8月に山火事に見舞われたマウイ島についても、改めて日本人旅行者に来島を呼び掛け。マウイ島の紹介をおこなったカウアイ島観光局マネージングディレクターのスー・カノホ氏は、マウイ島の観光がラハイナの一部地域を除いて「完全に復活している」と強調。来訪による地域コミュニティの回復支援を訴えた。マウイ島では、名産のパイナップルやカカオの畑での農業体験や年間を通したフェスティバルなどが数多くあり、観光客を歓迎している。
カウアイ島観光局マネージングディレクターのスー・カノホ氏
このほか、カウアイ島、ハワイ島でも豊かな地域体験やボランティア体験が数多くあることを紹介。各島で再生型観光の旅行プロダクトの開発がすすんでいるようだ。
ハワイ島観光局 局長スコット・パウリ氏
ジャパンサミットでは、ハワイ州観光局が注力するSNSマーケティングについての講演も実施。HTJのSNS運営を支援するトライバルメディアハウスのマーケティングデザイン事業本部本部長 執行役員プロデューサーの鳴海まい氏が登壇し、SNSマーケティングの基本から成功へのポイントを共有した。
鳴海氏は、ユーザーによるイメージを膨らませるための検索行動への対応として、「なんとなく、何かを探している人に、どう出会うか。琴線に触れるために、一瞬で気持ちが動く投稿づくりが大事」と説明。企業側は正しい情報とともに、多くの人が検索するであろうコンテンツやワードをしっかり投稿文に入れることが重要であると語った。
また、特に若年層とは「SNSでつながり続ける」ことで、旅行の選択肢のひとつとして存在できること、さらにユーザーが0.1秒で投稿を閲覧するかを判別しているという現状を理解し、閲覧してもらうためのクリエイティブ制作の重要性も指摘した。
そして、SNSを実施する企業のゴールについては「行きたい気持ちにさせること」であると説明。売り上げに影響はすることが直接的なゴールではなく、その認識をもってSNSに向き合うべきと呼び掛けた。