小野アムスデン道子の「観光J活コラム」
新定番観光地を掘り起こせ
エリア発信型の国内観光アイディア・コンテスト<前編>
2013年12月20日、遂に年間訪日観光客数が1,000万人を突破し、五輪開催の2020年に年間2,000万人という目標に向けて動き出した日本の観光政策。観光で日本が元気になって行くためには、大都市だけではなくエリアや地方への観光促進の広がりが必要だ。
今回からスタートする「観光J活コラム」とは、地方の観光政策に耳を傾け、エリア観光を掘り起こし、アジアからだけではない訪日旅行のアピールを図るなど、“観光で日本を元気にする活動(アクション)を探る”コラム。トラベルジャーナリストの目線から日本の観光を応援したい。今回は、私が審査員を務めた国内観光のアイディア・コンテスト「タビカレ学園祭」を紹介する。
▼新たな観光資源の商品化を官民協働で
集大成の「タビカレ学園」に至るまで
2013年1月11日に閣議決定された「日本経済再生に向けた緊急経済対策」に盛り込まれたのが「官民恊働した魅力ある観光地の再建・強化事業」で、「タビカレ(日本タビカレッジ)」と名付けられた。2013年3月に613件の応募の中から78地域の取り組みを選定し、「今までにない国内観光の魅力を遊んで学ぶ場」と位置づけて、エリアの新たな観光資源の商品化に向けてのアドバイスやPR・モニターツアーの実施などを官民恊働で行い、一般向けには新たな国内観光の魅力を知ってもらう場を提供してきた。
その集大成として行われたイベントが2014年2月1日(土)〜2日(日)にかけて東京ビッグサイトで行われたイベント「タビカレ学園祭」だ。魅力的な観光商品づくりに取り込んで来た78地域がブースを出展し、来場者による投票での新定番観光地投票が行われた。また、特別カリキュラムとして46地域がメディア、旅行会社、学生・社会人による審査員を前に修了プレゼンを行うコンテストも開催され、筆者も審査員としてプレゼンを評価した。
ここに至るまでのタビカレ活動は、まず「課題提出」として「地域の魅力を伝える販促ツールコンテスト」を開催。78地域中の15エリアが参加して、2013年9月26日に審査会が行われた。この時にも審査に当たったが、3月からの活動開始後に作成したツールということもあり、まだまだ消費者に内容を伝えるためのノウハウが消化されていないという感が拭えなかった。観光ポイントの説明に5W1Hがないとか、タイトルにカメラ愛好家向けを謳っているのに、撮影した作品が一つも出て来ないとか、一般消費者の目線が欠けているというのが私の評価であった。
▼消費者の声に触れてブラッシュアップ
総選挙1位は、古代文字を観光資源とした福島県・喜多方市
その後、2013年10月23日~11月6日にわたり、東京駅直結JPタワー内「TOKYO City i」に「タビカレ・カフェ」が期間限定オープン。78地域中16地域はツアーデスクを出して、一般消費者の対応をし、50地域はパンフレットの陳列とiPadを使っての情報アピールを行った。ここで生の消費者の声に触れたことが、かなり参考になったという。地域の観光担当者にとってはPRの前に、一般消費者と出会って意見を聞くということ自体が貴重な機会なのだと改めて感じた。そして、迎えたのが翌2014年2月の「タビカレ学園祭」への出展と修了プレゼンだったのである。
2日間の来場者数は約5000人を超え、ニコニコ生放送を通して約6万7000人が視聴。今まで注目されなかったエリアの観光アイデアを発信する初のイベントとしては一定の成果を得た。地域PRブース、ご当地アトラクション体験、「世界にも通用する究極のお土産」販売にご当地キャラクターやマドンナ達、また人気声優5人のタビカレ・ガールズも登場と、楽しみながら地域の魅力を発見してもらおうという熱気が会場を包んでいた。
投票によるタビカレ総選挙での1位は、“古代文字”を新たな観光資源としてアピールする福島県・喜多方市。「蔵とラーメンのまち」だけでない魅力の掘り起こしと永続性や独自性が評価されたようだ。学生部門の1位は、伊賀忍者育成ツーリズムの三重県・伊賀地域。ブラッシュアップされて楽しい伊賀忍者体験が受けていた。特別賞は石垣島でのおじい・おばあによる子育て道場と題した、ホームステイ体験などを組み込んだプランの沖縄県・石垣市。PR大賞は、ロリータ+カワイイのカルチャーと異国情緒ある街並のマッチングを図ったと札幌市・小樽市の“ロリカワツーリズム”。
▼入賞エリアは地域の持つ歴史や特性にひと工夫
価格でない市場からの評価を重視
いずれの1位入賞エリアも、従来にあるような史跡や自然遺産的な観光自然ではないが、地域の持つ歴史や特性を、訪れる観光客に楽しんでもらえるようなコンセプトや見せ方にとても工夫がされていた。タビカレの担当である観光庁観光地域振興部観光資源課課長補佐の地主純氏(写真右)は「魅力に気づかれていない無名の観光地を掘り起こすためのタビカレ。地域同志、学んで切磋琢磨して、新しい観光定番地を目指していただいた。モニターツアーでは、安いというのではなく、市場からの評価を得られるという点を重視してもらった。旅行商品の市場を評価するのは一般消費者、そのために一般入場可能なイベントを集大成の場とした」とその意図を語った。
今後の観光客予備軍である一般消費者からのダイレクトな反響、そして互いに魅力のアピールや付加価値付けを学べるという点も評価ができるイベントだったと言える。次回の後編では、審査を担当したタビカレ学園祭特別カリキュラム修了プレゼンの第1位だった「酪農エリアを歩こう!『北根室ランチウェイ』」を中心に、入賞観光アイデアに焦点をあててご紹介しよう。