【年頭所感】 観光庁・久保成人長官 -広域観光ルート形成など3つの重点取組みへ

観光庁長官 久保成人氏(編集部撮影:2014年9月)

観光庁の久保成人長官は、2015年を迎えるにあたり、年頭所感を発表した。

*写真は20149月編集部撮影。

久保長官は、2014年に1300万人を突破した訪日外国人の増加を振り返り、2015年を更なる「前進」の年とするため2015年に重点的に取り組む3つの方策を発表。「観光振興による地方創生」、「インバウンドの飛躍的な拡大」、「観光による国際相互交流」をあげた。特に、地方創生では複数の県が広域連携することで、地域を「点」から「線」へと結ぶ広域観光周遊ルートの形成を図る。あわせて、無料料公衆無線LAN環境の整備や決済環境の充実など地域の受入環境の整備促進することで、さらなる訪日外国人増加を目指す。

発表された内容は以下の通り。原文のまま、掲載する。

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2015年という新しい年を迎え、謹んで新年の御挨拶を申し上げます。

一昨年、2013年は、訪日外国人旅行者数1000万人を達成するとともに、同年9月には「オリンピック・パラリンピック東京大会」の開催が決定するなど、観光行政を取り巻く環境に大きな「変化」があった年でありました。

そして、昨年、2014年は、この「変化」を、観光立国の実現に向けた力強い推進力とするため、新たな「一歩」を踏み出した一年だったと考えております。6月には、「観光立国推進閣僚会議」を開催し、「オリンピック・パラリンピック東京大会」が開催される2020年に向けて、訪日外国人旅行者数2000万人の高みを目指すための施策をとりまとめた「観光立国実現に向けたアクション・プログラム2014」を決定しました。

インドネシア向けのビザ免除をはじめとするビザ要件の戦略的な緩和やCIQ体制の拡充など、既に「アクション・プログラム2014」に盛り込まれた施策を着実に実行しているところであります。

10月1日からは、消費税免税制度を拡充し、消費税免税の対象物品を全品目に拡大しました。都心の百貨店などを中心に外国人旅行者による買い物が盛況であり、個人消費の下支えをするまでとなっております。

こうした施策を強力に推進してきた結果、アジアを中心とした経済成長による海外旅行者数の増加や円安傾向の継続などの効果も相俟って、2014年の訪日外国人旅行者数は、前年の1000万人を大きく上回り、1300万人を超える非常に多くの外国人の方々に日本を訪問していただきました。また、外国人旅行者による旅行消費額についても大幅に拡大しております。

これらを踏まえ、2015年を更なる「前進」の年とするため、本年は、次の三点について重点的に取り組んで参りたいと考えております。

まず、「観光振興による地方創生」についてであります。


観光は、日本経済の活性化にますます大きく寄与していくものと考えております。今後、更に国内外の交流人口を拡大して、全国津々浦々、各地域に内外の旅行者を呼び込み、地域の経済や社会を活性化していくことが大変重要であります。
このため、複数の県が広域的に連携し、地域を「点」から「線」へと結んで、「太い動線」として広域観光周遊ルートの形成を図り、これを海外へ積極的に発信して、訪日外国人旅行者の増加を図って参ります。併せて、無料公衆無線LAN環境の整備や決済環境の充実など地域の受入環境の整備を促進します。

さらに、地域の観光産業の基盤となるホテル・旅館等の宿泊施設について、今後更なる伸びが期待されるFIT層をターゲットに、宿泊施設に関する情報を分かりやすく発信するとともに、日本の大きな魅力である「旅館ブランド」を磨き上げるため、旅館経営者の人材育成等に取り組んで参ります。


また、国内における旅行消費の大半を占めているのは、日本人による国内旅行であり、地域の観光産業を支える重要な役割を担っております。

このためには、国内、国外の旅行者のいずれにとっても魅力的な観光地域づくりを推進するべく、引き続き、観光圏の取組を着実に実施していくとともに、地域の幅広い関係者が連携し、地域の観光資源を徹底的に磨き上げる取組を進めて参ります。併せて、日本人がより旅行しやすい環境を整備するため、休暇の取得促進を更に強力に推進して参りたいと考えております。

次に、「インバウンドの飛躍的な拡大」についてであります。


今後は、これまでの訪日プロモーションを更に強化するとともに、「春の観桜ツアー」や「秋の紅葉ツアー」などにより、春や秋のシーズンを新たな訪日旅行時期として定着させることが必要です。旅行需要の平準化を意識したプロモーションを行い、一年間を通して、外国人旅行者に日本各地を訪問してもらうための取組を進めて参ります。

また、本年は、日本政府観光局(JNTO)が訪日プロモーション事業を直接執行する最初の年でありますので、JNTOの体制整備を測り、現地における、より効率的・効果的な訪日プロモーションを実施して参ります。

MICEの分野では、昨年、参加者数6,000名規模の神戸での国際会議をはじめとする大型国際会議の誘致や、外国企業における2,000名規模の大型インセンティブ旅行の誘致などが立て続けに成功するなど、近年成果が出てきております。今後とも、MICEの誘致・開催への取組を一層進めて参ります。

最後に、「観光による国際相互交流」についてであります。


諸外国との国際相互理解を深め、国際社会での日本の地位を確固たるものとする観点から、双方向交流である「ツーウェイツーリズム」の更なる拡大が大変重要です。訪日外国人旅行者数は順調に拡大しているところですが、日本人の海外旅行者数については、2012年に過去最高の1850万人を記録して以降、日中・日韓の二国間関係や為替の円安方向への動き等の影響もあり、2013年は1700万人台半ばまで低下しております。

このため、中国、韓国をはじめ、各国との双方向の観光交流を一層活性化すべく、旅行業関係の皆様による訪問団の派遣や海外での交流イベント、二国間の相互協力などに取り組んで参ります。

本年も、関係機関の皆様との連携をますます高め、オールジャパンの体制を強化して、観光立国の推進に取り組んで参りますので、より一層の御理解と御協力を賜りますよう、お願い申し上げます。

観光庁長官 久保 成人

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