ホテルコンサルタントの堀口洋明です。
ハウステンボスが発表した「変なホテル 」。このところ旅行・ホテル業界関係の方だけでなく、インターネットでも注目度が高いニュースとして取り上げられているようです。
このホテル、少なくとも2013年1月には「スマートホテル」の名称で報道されていました。当時の報道によれば「ITを活用して太陽光などの自然エネルギーを効率的に利用する“スマートホテル”」ということで、徐々に情報が公開され「ロボットが活用されるようになる」という点がホテル業界から注目が集まっていました。
日経新聞の記事や、日経トレンディの記事など、今回の報道で「変なホテル」が気になるポイントは以下の通りです。
- ホテル名称。「変なホテル」がホテル名称だというのですからインパクト満点です
- ロボットを活用することで人件費を大きく抑える(報道では1/3以下)
- チェックイン・チェックアウト
- ポーターサービス
- 客室清掃
- 太陽光発電で光熱費を大きく抑える(報道では1/2)
- 宿泊料金をオークション形式で決める(上限下限あり)
- ルームキーを不要に(顔認証)
ちなみに、トラベルボイスの記事はこちら>>
さて、いろいろと興味深い「変なホテル」ですが、今回はロボットの活用について業界の方の代表的な反応を取り上げてみたいと思います。
ところで「変なホテル」以外でも、ホテル業界でロボットの活用はニュースになっています。
こういったニュースを目にする機会が増えるにつれて、宿泊産業の方の反応をお聞きする機会も増えてきています。ロボットの活用をポジティブにとらえる方の反応は概ね下記の通りでしょうか。
- 1、 ロボットがホテルの集客要素になりえるかもしれない
- 2、単純作業をロボットに任せることで人は人でしかできないことに集中できる
実際に変なホテルの報道後、Twitterなどでもフロントのヒューマノイドなどロボットが実際に動くさまを見てみたいという興味・関心のツイートが見られます。ただし、ロボットの活用はハウステンボスだけのことではありませんので、普及するにつれて集客要素から当たり前の要素にコモディティ化(商業的な均質化)していくのでしょう。
ロボットの活用をネガティブにとらえる方の反応は概ね下記の通りの要です。
- 3、 ロボットに置き換えられることによって温かみのあるサービスがなくなるのでは?
- 4、 自分たちの仕事がなくなるのでは?
ロボットに置き換えることがサービスの低下につながるという懸念は、人間はより手厚い対応を求めるお客様に集中できるので、ロボットの活用によりさらにヒューマンタッチが増やせると全く逆の発想を持つ方もいらっしゃいました。
また、航空業界の自動チェックイン機やホテル業界の自動精算機の導入時も同様の懸念を示す方がいらっしゃいましたが、普及とともにうまく折り合いがついて行っているように思います。
2.4.は、これからの労働環境の在り方をどう考えるかによって解釈が変わりそうです。
「変なホテル」では、将来的に業務の9割が自動化できるとしており、ここまで自動化されれば確かに人間の必要性は大きく減ることになりそうです。
しかしこれは何も宿泊産業だけに限ったことではなく、東洋経済ネットによると、コンピューター技術の進歩によって「日本でも2000年からの5年間で、事務用機器操作員5割、会計事務員1割、商品販売外交員1割と高い就業者減少比率が見られた。」とされています。
こうしてみると、ロボットの活用は宿泊産業で働く人たちにとって、失職の可能性を引き起こすものと言えなくもありません。
一方で、人口減少に直面している日本では、既に「人手不足による事業縮小」を余儀なくされている産業がいくつかあるのです。そのような状況に直面しているとされているのは以下の業種です。
- 建設
- 介護
- 外食
そして宿泊産業でも、人材確保が困難になってきている状況を感じている方は多いのではないでしょうか。人材確保の困難さは、今後ますます拡大すると見られ、いずれにせよ生産性を高める努力なしには営業の継続が難しくなる時代がやってくるのです。
そのように考えると、ロボットの活用は生産性向上の手段の一つとして非常に興味深いものだと言えそうです。ハウステンボスの「変なホテル」の動向にこれからも注目していきたいと思います。