【年頭所感】ANAホールディングスCEOの片野坂真哉氏 ―世界の70億人を視野に

ANAホールディングスCEOの片野坂真哉氏が、2016年を迎えるにあたって年頭所感を発表した。

片野坂氏は、2016年がANAにとって国際線就航30周年を迎える記念の年であることに触れ、「この30年が決して簡単な道のりではなく、すべての顧客やグループ全社員の支えがあってこそ実現できた」と感謝の意を表明。今後は国家レベルでの構想も見据えて「国内線と国際線を区分する時代は終わりを告げつつ」あるとし、世界の70億人を視野におく展望を示した。また、2016年1月末には今後5年間を見据えた新中期経営戦略を発表、「財務体質強化」「株式還元」「人材育成」「ダイバーシティ&インクルージョン」といったキーワードを含めた施策を明らかにしていくとしている。

発表された内容は以下のとおり。原文のまま掲載する。


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「夢は大きく。世界の

70

億人にとってなくてはならない

ANA

グループに」

年頭にあたりひと言ご挨拶申し上げます。

昨年は、私にとりまして社長就任1年目。4月に就任してから、あっという間の9か月でした。就任挨拶や職場訪問、出張時の空港や機内で社員のみなさんと接する中で感じたことは、ANAグループの職場は、実に大きく広がっているということです。地上での広がりから上空1万メートルにまで、広大な空間で社員が生き生きと働いているという事をあらためて実感しました。

事業においては、総じて航空需要が堅調であり、旺盛な訪日外国人観光客の追い風と、成田・羽田からの積極的な新規路線開設や増便が功を奏し、過去最高の売り上げを更新しています。SKYTRAX 5STARの3年連続受賞に代表される品質やサービスの向上と、従来から取り組んできたコスト削減の努力が、堅調な利益を生み出しています。

15周年を迎えたエアージャパン、3社統合から5周年を迎えたANAウイングス、黒字化が見えてきたバニラ・エア。訪日需要の商機をしっかり活かして増益を続ける全日空商事やANAセールス。ANAテレマートは、24時間サービスを実現するグローバル・コンタクトセンターを開設しました。沖縄貨物ハブをフル活用し、日本各地の産品をアジア各地へスピーディーにお届けするANAカーゴ゙やOCS。また、MRO Japanのスタートなど、整備部門においても整備技術を海外にビジネス展開する取り組みも始まっています。

2月からの新制服、米国LPGAスポンサー、スター・ウォーズ・プロジェクト、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会オフィシャルパートナーなど、ANAの躍動感を日本で、そして世界で高めるための具体策も動き出しました。

こうした数多くのトピックスが、グループのプレゼンスの向上につながっています。

さて、2016年がスタートしました。

ANAは今年、国際線就航30周年を迎えます。グアム線、ロサンゼルス線、ワシントン線を開設した1986年度のANAの売上げは、4800億円。うち国内線が4500億円とほとんどで、国際線は150億円でした。

2015年度の売上予想は、1兆7900億円。国際線収入は6000億円まで伸びて、旅客便は今や39都市59路線に拡大するまでになりました。

申し上げたいことは、この30年は決して簡単な道のりではなく、かつては国際線撤退が真剣に議論される時代もあったということです。

これまで30年にわたりANAの国際線を支えてくださったお客様にあらためて感謝申し上げるとともに、世界の各地で汗を流した社員、安全運航を守り、あらゆる機材のオペレーションに従事したグループ全社員の努力に敬意を表します。

昨年の国内線の実績を見ると、生産量を減らしたにもかかわらず、収入が前年より増えました。国内線は、LCCはもちろん、ANAにおいても工夫と努力で引き続き当社の経営基盤であることに自信を与えてくれました。そしてこれからの時代、旺盛な訪日外国人需要の勢いを日本の地方創生に活かすという国家レベルの構想実現をも見据えると、国際線と国内線を区分する時代は終わりを告げつつあります。

今月末には、2020年までの5年間を見据えた新中期経営戦略を発表する予定です。

国際線で成長するという長期戦略構想で掲げたビジョンをより具体的に精査し、ANAブランド、LCCのバニラ、ピーチブランドでネットワークを拡大していきます。

「成長」「財務体質強化」「株主還元」「人財育成」「ダイバーシティ&インクルージョン」など、大切なキーワードを基にANAグループの持続的な成長を支える戦略と具体策を明らかにしていきます。

高浜虚子の俳句に「去年今年(こぞことし)貫く棒の如きもの」と詠まれています。

私たちの飛行機は、大みそかから新しい年に変わる瞬間も前の日となんら変わることなく、安全を守り、お客様を運び続ける。そういうビジネスであり、去年から今年に向かって、貫く棒のようなものが、私たちの事業そのもの、安全理念、経営理念には流れているのだと思います。

経営環境がどんなに変化しても、我々の事業は、諸先輩から引き継いだ「安全をしっかり守れ」という教え、「自分の足で立ち続ける」という独立独歩の精神、持株会社制になってもエアライン事業が根幹であり続けるということを、年が変わっても貫いて、全社員に共有してまいりたいと思います。

今や世界の人口は70億人を超えています。訪日外国人は昨年2000万人に近づき、2020年の政府目標は、3000万人超への引き上げが検討されています。誰も予想できなかった驚異的な伸び率でした。常識的な予想に留まるのではなく、知恵と工夫で商売の道はどんどん広がっていく。あらゆる社員がイノベーティブなANAグループを創り上げていく、そういう新しい2016年にしたいものです。

年頭であり、夢は大きく。

世界の70億人にとってなくてはならないANAグループになろう。

今年もよろしくお願いいたします。

ANAホールディングスCEO

片野坂真哉

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