JTB総合研究所は、2016年から4か月連続で前年を上回る推移を続ける海外旅行について、緊急調査を実施した。日本人出国者数は出国者数を記録した2012年を最後に、2013年以降は国際情勢や感染症の発生、円安などの影響で低迷。2016年に入って動きは一転したものの、主要旅行会社のパッケージ商品の取扱人数は前年割れが続いている状況だ。
調査対象のうち、2016年1月~5月に海外旅行をした人の旅行目的は「観光旅行・レジャー」(74.6%)が最多で、「家族・友人訪問」(13.7%)、「業務出張」(11.6%)と続いた。性年齢別では2月、3月は学生、3月4月は60歳以上女性、5月は15~29歳男女の割合が高く、JTB総研では15~29歳男女と60代女性が市場を牽引していると推察。2015年に縮小した観光需要が戻っていることがうかがえる。
方面別では、アジアがシェアを広げ半数を占めた。特に韓国やタイの上昇が顕著だ。旅行先を選んだ理由では「ずっと行ってみたい場所だった」(33.3%)、「好きで繰り返し行ってっている場所」(27.1%)、「価格が安かった」(23.2%)がトップ3。15~29歳男女では「友達に行ったことを自慢できる」「SNSやブログの記事でおすすめだった」も、旅行のきっかけとなった傾向が見られたという。JTB総研では、SNSだけではなくスマートフォンでのプッシュ型画像情報の増加が旅行意欲を刺激している可能性があるとする。
旅行形態は「フリープラン・自由行動タイプのパッケージツアー」(38.9%)が最多だが、前年よりも縮小。このほか、添乗員同行型や現地ガイド同行型の食事・観光付きパッケージツアーも減少した。これに対し、2番目に多かった「個人で航空券やホテルを別々のサイトや店舗で予約購入した旅行」(21.2%)をはじめ、ダイナミックパッケージや、個人で航空券のみの購入などFITが増加している。
ウェブ申込みが7割に拡大、60代女性の店舗利用が最小に
旅行の申込先は、ウェブサイトが前年より10ポイント以上増加し、69.1%と約7割に拡大。インターネット調査の結果であることを考慮しても、ウェブサイトでの旅行申込みがごく一般的になっていると指摘する。また、旅行を申し込んだ会社は、旅行会社が8.9ポイント減の51.7%に縮小したのに対し、OTAが3.6ポイント増の12.9%、航空会社が3.6ポイント増の17.2%増と増加。年齢別では、OTAは50代男性、30代女性、航空会社は40代男女の利用が高かった。旅行会社でも、ウェブ申込みが6割以上の会社もあり、昨年よりも上昇しているという。
店舗での申し込みは、15~29歳女性が33.9%で最多となり、15~29歳男性も23.6%と高かった。60歳以上の女性は11.5%と最も低い結果となった。若い世代の店頭利用の理由については、女性は「旅行商品の細かいことについて質問したかった」「現地でどんなことができるか相談に乗ってほしかった」などが上位に。男性は「どんな旅行がお得か教えてほしかった」「インターネットではなく店舗で支払いがしたかった」が高く、女性に比べて「知り合いの担当者がいるので全部任せた」も目立ったという。
JTB総研では、旅行経験が豊富でインターネットに慣れている熟年層はウェブで手軽に申込み、旅行経験の浅い若い層が店頭に相談したいという気持ちが強いと指摘。熟年層に対しては「熟年層=旅行会社の店舗を利用」の思い込みから離れ、インターネットを通じた効果的な情報提供がカギとなるとし、若い世代に対してはいずれウェブへシフトするとしても、少なくとも店舗が最初の入り口になることは間違いないとしている。
調査は2016年5月16日~5月20日まで、全国15~79歳の男女にインターネットで実施。本調査対象者は2014年1月以降に海外旅行をした3399名で、うち2016年1~5月の海外観光旅行経験者は1157名、海外ビジネス渡航者は192名。