
グリーンランドで観光熱が高まっている。この氷の土地は、すでに観光客過多状態だ。温暖化が進むなか、新しい空港を備えたグリーンランドは、大西洋の次の主要観光地となるのだろうか。
グリーンランドでツアーガイドを務めるシグルド・ヤニシェ トムセン氏は、ユネスコ世界遺産に指定されているイルリサット氷河フィヨルドをガイドしながら、「差し込む光は毎回変わります。氷山の姿も変わります」と話す。
小さな遊覧船では、遠くから氷が割れる音だけが聞こえ、不気味なほどの静寂が広がる。氷点下27度の極寒の中で、そびえ立つ氷山(高さ100メートルに達するものある)が、ディスコ湾に向かってゆっくりと流れ、さらに外洋へと向う。
ヤニシェ トムセン氏は、巨大な塊がセルメック・クジャレク氷河の端から崩れ落ちる様子を説明する。氷山の分離のスピード、地球の温暖化によって、以前よりも早くなっているという。
トランプ米大統領が所有を望む世界最大の島は、持続可能な観光と地元住民の経済的利益の増大を目的とした新しい法律を制定し、観光の拡大に取り組んでいる。2035年までに観光客数を倍増させ、その輸出額を全体の40%まで引き上げ、2000人以上の雇用を創出することを目指している。
グリーンランドは、急激な成長を遂げたアイスランドの観光ブームを再現できるだろうか?アイスランドは2023年に230万人の観光客を迎えたが、これはアイスランドの人口の6倍にあたる。
一方、グリーンランドの住民はわずか5万7000人。グリーンランド観光局のタニー・ポー氏は、「グリーンランドは、未だに発見されていないところが多く、手つかずの自然も多い。かつてアイスランドが持っていた謎がここにはある。それが最大の魅力」とアピールする。
持続可能で地域密着のパーソナライズされた旅行を好む少人数のグループ向けのツアーが人気だ。伝統的な犬ぞりやオーロラツアー以外にも、イグルーの家に泊まったり、氷床を探検したり、手つかずの山の頂上でヘリスキーを楽しむことができるという。
アイスランドを教訓に持続可能な観光を
2200メートルの滑走路を備えたヌークの新空港が、グリーンランドに変化をもたらしている。コペンハーゲンから直行便でわずか5時間。途中で乗り換える必要がなくなった。2026年後半までにイルリサットにも新しい国際空港が開業する予定だ。
グリーンランド空港の責任者であるイェンス・ローリセン氏は、急成長したアイスランドの観光業が陥った失敗から学ことは多いと話す。環境への悪影響やインフラ不足による荒廃や混雑といった「第二のゴールデンサークルになることは望んでいない」という。グリーンランドは、季節や地域を超えて観光を広め、持続可能な成長を確保する計画を立てている。グリーンランドの自然のままの自然を維持しながら、観光客と地元住民の両方に利益をもたらすバランスの取れた観光モデルを目指している。
ユナイテッド航空は6月中旬から、ニューヨークのニューアーク国際空港からヌークへの直行便を9月まで運航する予定。スカンジナビア航空も、コペンハーゲンからヌークへの直行便を準備しているという。
グリーンランドが、グリーンランド独自の目標を達成できるのかが問われている。
※本記事は、ロイター通信との正規契約に基づいてトラベルボイス編集部が翻訳・編集しました。