
フランスの旅行商談会「ランデブー・アン・フランス2025」が、2025年4月1日〜2日かけて、オーヴェルニュ・ローヌ=アルプ地方のリヨンで開催された。2024年に国外からの旅行者(インバウンド)数が1億人を超えたフランス。世界の旅行業界からの注目度も高く、今回62カ国から約820人、日本からは40人の旅行会社からの参加があった。
世界有数の観光立国であり、パリ五輪を終えて、新たなステージを迎えるフランス。商談会で、現状と目指す未来の姿を取材した。
2024年の観光消費額は12%増
パリ五輪が開催された2024年、国外からフランスを訪れた旅行者数は前年比2%増となり1億人を超えた。旅行者による支出額も同12%増の710億ユーロ(約11.6兆円)。ランデブー・アン・フランス2025の記者会見で、フランス観光開発機構(Atout France)暫定CEOのローズマリー・アベル氏は、「この実績は、観光がフランス経済に大きな貢献をしたことを示すもの」と評価した。
そのうえで、「2025年は、パリ五輪のレガシーを活かし、スポーツおよびカルチャープログラムに力を入れていく」と強調した。
また、会見では、フランスのナタリ・ドラートル観光大臣がビデオメッセージを寄せ、「フランスの観光産業の未来は明るい。今年は、フランスを世界をリードする持続可能で、革新的で、包括的な観光国にしていく」と意欲を示した。
2024年を総括したAtout France暫定CEOのローズマリー・アベル氏。
パリと近郊地域、観光コンテンツを多様化へ
パリを中心とするイル・ド・フランス地域圏への企業の進出を支援する政府系の非営利組織「Choose Paris Region」は、2024年のパリ地域への訪問者数が前年比2%増の4870万人、そのうち国外からの旅行者数が同3%増の2260万人に達したことを明らかにした。国別トップは米国で同3%増の270万人となり、英国の260万人が続いた。同様に現地消費額も増加。全体では同8%増の234億ユーロ(約3.8兆円)となった。
パリ五輪・パラリンピック期間に限ると、訪問者数は同11%増の710万人。このうち、国外からの旅行者数は同11%増の230万人だった。
Choose Paris Regionでは、2025年の航空予約の現状も明らかにした。それによると、米国発便は同15%増、カナダ発便は同31%、オーストラリア発便は同30%増など平均で同11%増を見込む。特に、長距離市場からの航空予約が伸びを示しているという。
Choose Paris Regionチーフ・エグゼクティブ・ディレクターのクリストフ・デクルー氏は、「今年は、観光コンテンツの多様化をさらに進め、あまり知られていないエリアの訴求を強めていく。また、ビジネスやイノベーションのイベントを誘致も進め、持続可能で活力ある地域としてのイメージを強化していく」と話した。
また、パリでは、2024年12月からノートルダム大聖堂の一般公開が再開された。ノートルダム大聖堂パブリックマネージメントのシビル・ベラミー・ブラウン氏によると、再開以降、1日平均3万人以上が来場。今年は1300万人~1500万人の来場を見込んでいるという。一方で、今夏に向けては「団体の受け入れでまだ課題がある」と明かした。
五輪のノウハウをMICEでも
このほか、Atout Franceマーケティング・メジャーイベント・マネージャーのジュリー・ガブレル氏は、パリ五輪レガシーの観光への活用について説明。「パリ五輪は、フランスの歴史文化だけでなく、イノベーション、多様性などを世界に示すイベントになった」とした。そのうえで、今後は、五輪競技で注目された場所への誘客、五輪で創出された新しいイメージのビジネス化、アウトドアアクティビティを含めたスポーツツーリズムの推進、五輪で獲得したイベント開催ノウハウの拡張に取り組んでいくとした。
このうち、スポーツツーリズムについては、7月5日に北部リールをスタートする「ツール・ド・フランス」を紹介。オー・ド・フランス地域圏観光局は、これを契機に北フランスでのサイクリング体験を打ち出していく方針を示した。
ランデブー・アン・フランスでは、「観光・旅行イノベーション」のコーナーも設置。デジタルソリューションが多く出展するなか、
新発想の街中案内標識も。地図上で行き先を見つけ、表示された数字に合わせて掲示板を回すだけで、常に一定の進行方向が表示される。
前後左右で迷うデジタルマップの分かりにくさをアナログで解決。
日本ではランデブーからSAKIDORIへ
Atout France日本代表のジャン=クリストフ・アラン氏は、日本市場について「コロナ後、他の市場と比べて日本市場の回復は遅い」と認めつつも、「まず富裕層のリピーターが戻っている。彼らは、パリやモンサンミッシェルなどの定番以外の地方にも足を伸ばしている」と明かし、新たなトレンドが生まれていることに手応えを示した。
また、現状の日欧間の航空便では、航空座席の確保や価格、長時間フライト、現地仕入れ価格など「さまざまな課題がある」としながらも、「フランスの現地サプライヤーは、その状況を理解している。決して日本市場への扉を占めていることはない。日本は引き続き魅力的な力を持っていると考えている」と話した。
そのうえで、「今後、中間層が戻ってきた時、地方分散の傾向が幅広く定着するか注目している」と付け加えた。
日本市場の現状について話すAtout France日本代表のジャン=クリストフ・アラン氏。
今回のランデブー・アン・フランス2025には日本から40人が参加した。例年と変わらない人数だ。「継続してフランスのサプライヤーと会うことが非常に重要」とアラン氏。今年6月に東京と大阪で開催される恒例のワークショップ「SAKIDORI フランス」にも触れ、「ランデブーでの商談が、次のSAKIDORIにも繋がる。定期的にミーティングを重ねることはビジネスにとって重要なこと」と期待を寄せた。
※ユーロ円換算は1ユーロ163円でトラベルボイス編集部が算出
トラベルジャーナリスト 山田友樹
取材協力:フランス観光開発機構(Atout France)