
⽇本の宿泊業界におけるデジタル化・DXを加速させ、観光産業の⽣産性向上を通じて、国際競争⼒を⾼めることを⽬的に、「⽇本ホスピタリティーテクノロジー協議会(JHTA)」が設立された。全国旅館ホテル⽣活衛⽣同業組合連合会、全日本ホテル連盟、日本ホテル協会、日本旅館協会の宿泊施設4団体を中心に、宿泊施設管理システムを提供するPMS事業者、その他テクノロジーベンダー各社と共に、業界で扱うデータの標準化や⾼度化を推進していく。
発足会で、全国旅館ホテル⽣活衛⽣同業組合連合会会長の井上善博氏は、「宿泊産業は、まだまだ、ITテクノロジーで遅れてる部分がある。この協議会で勉強を重ね、次のステップに繋げられるようにしていく」と挨拶。また、観光庁審議官の鈴木貴典氏は、「人手不足の課題があるなか、デジタルツールの標準化・汎用性を高めながら、宿泊産業の生産性を上げて、持続可能な観光を実現していかなければならない」と話し、協議会の意義を強調した。
JHTA設立の背景には、宿泊業界が抱える課題がある。訪日外国人旅行者の急増によって、需要や顧客層も大きく変化しているなか、業界のDX推進が急務と認識。また、PMSなどシステムの連携不足で業務の効率化が進まず、データが標準化されていないために、宿泊施設・ベンダー・行政間の連携も困難な状況だ。さらに、AIなどの最新技術の導入が遅れることで、国際競争力が低下する恐れもある。
課題解決に向けて5つの活動方針
課題解決に向けて、JHTAでは、5つの活動の方向性を示している。
1つ目が、データの標準化。PMSや関連システム間のデータ連携・標準仕様を推進し、導⼊・運⽤コストの削減およびサービス品質向上を図っていく。
2つ目が、業界データの高度化。PMSやIoTなどから得られる各種データを活⽤し、需要予測や顧客分析に基づく新たな収益機会の創出や、顧客体験のパーソナライズ化を推進していく。
3つ目が、最新技術の導入支援。AI、セキュリティ、ロボティクス、クラウドなど先端技術の効果的な活⽤に向けて実証実験などを通じて導⼊を推進する。
4つ目が、人材育成と情報共有。勉強会やセミナーなどのほか、テクノロジーベンダー・スタートアップとの交流機会を設け、業界全体の⼈材育成を⽬指す。
5つ目が、政策提言と支援施策の形成。国・地⽅⾃治体に対して、解決の⽅向性や講ずるべき施策や規制の緩和などの提案を⾏い、単⼀の施設では難しい課題解決を図っていく。
データ連携では国際基準の仕組みを活用
データ連携の標準化に向けては、米国の非営利団体でホスピタリティ業界の技術開発をおこなうHTNG(Hospitality Technology Next Generation)など国際基準の仕組みを活用し、PMSや関連システム間のデータ連携の標準化を進め、運用コストの低減やサービス品質の向上を進めていく。
JHTA発足の準備段階には、データ連携における標準仕様の策定及び活用に関する調査を実施。宿泊施設のPMSと各宿泊施設システムの連携を容易にするため、次世代ホテル関連技術を開発するHTNGのPMS標準API「HTNG Express」を活用していくことを決めた。
HTNG Expressでは、PMSのすべてのデータを開示するのではなく、必要最低限の開示データに絞り、他の宿泊施設システムと連携させる。その基本的な利用範囲は、室内エンタメ、ハウスキーピング、スマートキーなど館内サービス。開発は数週間単位で可能だという。
今後に向けては、2025年にHTNG Expressのワーキンググループを形成し、導入に向けた研究を進める。2026年には、HTNGフォーマットの導入を推進し、実証を開始。2026年以降に業界全体への適用を拡大していくほか、政策提言も強化していく。
発足メンバーとして、宿泊施設4団体に加えて、NEC、タップ、ナバック、ダイナテック、JTB、USEN-ALMEX、ステイシーのほか、オブザーバーとして陣屋コネクトが参画。JHTAでは、発足に合わせて、公式サイトで無料会員の募集を始めた。2027年には、法人会員数100社・団体、宿泊施設会員数1000施設の参画を目指す。