
米国のシアトルを含むワシントン州は、2025年5月13日からハワイアン航空が成田/シアトル線を毎日運航を開始するのに合わせて、日本市場の回復に向けた取り組みを強化する。セールミッションとして、シアトル観光局、ワシントン州観光局、シアトル港湾局、アラスカ航空などから幹部ら11人が来日。最新情報を提供するとともに、日本の旅行会社との商談会を開催した。
ワシントン州からセールミッションが来日するのは2019年以来、初めてのこと。ハワイアン航空の就航に加えて、2026年にはシアトルもFIFAワールドカップの開催都市になることから、日本市場へのアプローチを強化する。シアトル観光局(Visit Seattle)CEOのタミー・ブロント-カナバン氏は、「日本は、シアトル、ワシントン州にとって長年の友人。変わらず日本人旅行者を歓迎している」と話し、日本人の旅行業界に送客を呼びかけた。
2024年のシアトルへの海外旅行者は約220万人。そのうち、日本人旅行者は約3万5000人にとどまっている。イチロー選手がMLBシアトル・マリナーズで活躍していた頃はおよそ10万人が訪れていたが、まずはコロナ前2019年の5~6万人の水準には戻したい考えだ。
そのなかで、大きな期待がかかるのがハワイアン航空の成田/シアトル線就航。日本からシアトルへは4番目の航空会社で後発となるが、同航空日本支社長の坂口暢氏は、「使用機材のA330は、エコノミークラスの座席も多く、教育旅行も含めてグループ旅行の送客でも貢献できる。ハワイアン航空がシアトルに飛ぶという珍しさも活かしながら、シアトルを再び盛り上げていきたい」と意欲を示した。
2024年9月、アラスカ航空はハワイアン航空の買収を完了した。統合したアラスカ航空はシアトルをハブ空港としており、ワシントン州内のネットワークも充実している。このため、シアトルから、あるいはシアトルを含めたワシントン州内の観光地周遊への期待も大きい。さらに、日本とワシントン州とはビジネス関係も強いことから、ハワイアン航空の就航で「その関係がさらに深まる」(シアトル港湾局)との期待もある。
現在、シアトル・タコマ国際空港は、来年のFIFAワールドカップに向けて様々な再開発を進めているところ。大会期間中は、シアトルでの試合観戦だけでなく、欧州やアジアからシアトルを経由して共催国のカナダやメキシコに移動する需要も増えると見込まれていることから、「大事なゲートウェイとしての準備を進めている」(シアトル港湾局)と話す。
なお、シアトルでは、グループステージ4試合とノックアウトラウンド2試合を含む6試合が行われる予定。
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このほか、日本人の海外旅行回復の遅れの原因の一つと指摘されている現地コストの現状について、シアトル観光局ツーリズム・ディベロップメント・シニアディレクターのリズ・ジョンソン氏が説明。シアトルをはじめとしたワシントン州には、大手IT企業などが多く、その従業員の給料も上昇し、全体の物価も上がっているとしたうえで、「シアトルは、住んでいる人にも、訪れる人にもアクセスしやすい街づくりに取り組んでいる」と強調した。シアトルには公園など無料で楽しめる場所や安価な移動手段も多く、州内にも手頃な価格で楽しめる施設も点在していると紹介するとともに、「シアトル・マリナーズのチケットにしても、他の都市と比べれば安い」と付け加えた。
一方で、現地ツアーオペレーターのコスト増については、「観光局として、常に彼らとはコミュニケーションを取り、価格を2019年水準に戻せないか、交渉している」と話すにとどめた。