国際航空運送協会 (IATA)は2014年6月の輸送実績を発表した。発表によると、総有償旅客キロメートル(RPKs)は前年同期より4.7%上回った。5月の増加率6.2%を下回ったが、6月の有効座席キロ(ASK)は5.0%増加。ただし、座席利用率(ロードファクター)は0.2ポイント減の81.5%となった。
IATAのトニー・テイラー事務総長兼CEOは、今後の展望について「5月より需要の波は減速したが、当初あった需要の軟化傾向は消えている。世界の政情・経済が不安定な時期ゆえに負の影響を受けやすく、特に中東、ロシア、デフォルトが恐れられているアルゼンチンなどが不安要因だが、14年度は前年より収益性の改善を行えると予測している」としている。
同氏が最大のリスクと捉えるのは、エボラ熱の流行。航空会社は近年、世界保健機構(WHO)、国際民間航空機関(ICAO)と協力しながら、さまざまな流行性の病気について対策を練っており、安全に旅行できるようガイダンスや手順を確立させている。これには最前線での食い止め策も含まれる。
IATAが発表した国際線、国内線それぞれの2014年6月の状況は以下のとおり。
国際線の総有償旅客キロは5.5%増。アフリカ以外のすべての地域の航空会社で需要が増加したが、なかでも中東の航空会社の需要が最も強い。ASKは5.7%増で、ロードファクターは0.2ポイント減の81.4%となった。このうち、ヨーロッパの航空会社は5.6%増。安定かつ継続した景気回復によるもので、ASKは5.3%上がり、ロードファクターも0.3ポイント増の83.8%となった。
アジア太平洋は4.9%増加したが、ASKはそれを上回る6.7%増となり、ロードファクターは1.3ポイント減の77.9%となった。だが、中国における製造業や輸出需要を見ると、同地域の展望は明るいようだ。
北米の航空会社は3.1%増。ASKは5.9%増加し、ロードファクターは2.2ポイント減の85.1%と減少幅が大きい。ただし、米国は経済が回復し、失業率の改善傾向も見られることから、楽観的な見方も出ている。
ラテンアメリカの航空会社は7.1%増。ASKは6.6%増、ロードファクターは0.4ポイント増の79.5%。13年の年間成長率8.1%に比べると緩やかな成長だが、貿易需要がと経済の縮小に比例して航空座席の供給量が減少したためと分析している。
アフリカの航空会社は2.7%の減少。ASKは2.0%増加したのにもかかわらず、ロードファクターが3.3ポイント減少の67.3%。ロードファクターとしては他の地域と比べ、最低の数値となった。南アフリカの大きな経済の減速を含め、アフリカの一部地域で、経済が減速していることが上げられるようだ。
一方、国内線旅客市場はロシアと中国が牽引し、前年同月に比べ総有償旅客キロが3.4%上昇した。ASKは3.8%、ロードファクターは0.3ポイント減の81.7%だった。国内旅行の拡大を支持する政府の政策により12%拡大したロシアとは対照的に、FIFAワールドカップのホストであることにもかかわらず、ブラジルは実質的なゼロ成長を経験した。インフレと高い消費マインドに対する「かけ」から、旅行の需要促進へ策を講じなかった結果であるとしている。
(トラベルボイス編集部)