香港旅行業界から日本人旅行者への期待が高い。2015年9月末に開催された香港政府観光局の日本の旅行会社向け商談会(香港トラベルミッション/トラベルマート:右画像)には、現地から46社86名が来日。東京では1日600の商談が成立したという。香港政府観光局の堀局長は、この状況を「香港旅行業界の(日本市場への)コミットメント。期待が大きい」と語る。
日本と中国の両国間で尖閣問題が大きくなった2012年秋以降、両国間の交流人口は減少傾向をみせていた。特に2013年は日本人の香港への渡航者数は1月~9月まで2ケタのマイナスが続き、年間を通しては前年比15.7%減の105万7000人に。香港への渡航者総数に占める日本人のシェアは2004年以降初めて2%を切り、1.94%となった。
堀氏は、こうした時期も香港旅行業界が「日本市場を重要視してきた」と指摘する。これは、尖閣問題に両国が揺れるなかでも、“香港”は「独自路線で進んできた」ことや「親日の意識が高い」点に起因するという。
香港の人々の日本への態度について、堀氏の言葉を裏付ける1つの材料として香港人の訪日旅行者数の増加傾向がある。日本政府観光局(JNTO)の統計によると、香港から日本を訪れる旅行者は2013年2月以降、2ケタ増で大きな伸びを続けている。また、2013年は香港人のアジア各国・地域への訪問者数が台湾に続いて日本が2位、続いてタイ、シンガポール、韓国の順となった。
>>>JNTO資料
今回のミッションでは、ホテルやアトラクションなどの観光施設が守ってきた日本語スタッフなどのリソースをフル活用するために「このタイミングでたくさん集まった(堀氏)」という。こうしたことを受けて、堀氏は香港への日本人旅行者増加に向けて「(中国の一部であるものの)都市のブランドが重要で香港ブランドを確立していくことが重要」として、日本人旅行者を増やすために西洋と東洋のミックスした文化などを伝えていくという。
▼訪日需要で航空座席が増加、
日本人の海外旅行にもメリットに
堀氏(写真右)は、香港人の訪日需要の堅調さが航空座席の供給量を増やし海外旅行にいい影響を与えている点を指摘する。特に、香港/日本間にはLCCの就航が相次ぎ、フラッグキャリアのキャセイパシフィック航空も地方路線の拡充などに積極的だ。それが、訪日需要が強いことに起因した供給座席の増加であったとしても、そこには「(日本人が)必ず香港に行ける手段・メリットが生まれ、新しい需要を創出している(堀氏)」との考え。香港への渡航者数は2013年7月から回復。2014年1~7月では4.4%増の61万2500人。堀氏は海外旅行全体がマイナス傾向であるなか、「手堅く順調に伸びている」と評価している。
こうした好機を受けて、香港政府観光局は2014年前半に雑誌やテレビなどメディアの露出を強化。ターゲットをOL層に据えて、「食」を通じた香港の魅力を訴求してきた。2014年後半にかけては、旅行会社の販売促進をサポートするなどで送客増加に期待する。現地の旅行業界からの期待に応えたい考えだ。
(トラベルボイス編集部:山岡薫)