ハウステンボスは6つ目となる「ロボットの王国」が2016年4月29日~5月5日にプレオープン、7月16日にグランドオープンするのにあわせ、記者会見を行なった。※右写真は「ロボットの王国」内にオープンする「変なレストラン」のイメージ
代表取締役社長の澤田秀雄氏は「ロボットの王国」の目的として、(1)テーマパークとしてのエンターテイメント性、(2)世界一の生産性、(3)観光ビジネス都市としてロボットの実用実験の場、の3点を説明。これにより、ハウステンボス全体を「サービスの質や感動を落とさないようにしながらロボット化し、世界一生産性の高い未来のテーマパークを作る」方針だ。
(2)の生産性については、昨年に先行オープンしたロボットホテル「変なホテル」で、スタッフ数を当初の30人から12人へ効率化を実現。3月の第2期棟オープンで客室数が144室に倍増しても、フロントのロボット1台の増設で留めており、目標通り「世界一生産性の高いホテルになっている」とアピール。スタッフ数は将来的に9人にするという。
これを踏まえ、ハウステンボスとしても「仕事の半分を自動化やロボット化する実験をする」とし、その実現を3~5年後と想定。スタッフ千数百人の約半数の仕事が置き換えられることになるが、「人を削減するのではなく、合理化する。創造的な仕事や技術開発など新しい仕事をしてもらう」との考えだ。
また、(3)の実用実験の場については、ハウステンボスがモナコとほぼ同規模の私有地であり、許認可等がほぼ不要で速やかに実験や研究ができる環境をアピール。近々に全自動のバスを走らせることも明かしたが、これも許認可不要で実現できるという。
澤田氏は、ロボット開発では何度も実用して試す場が必要であることを説明。技術革新が速度を増すなか、「すぐに実用実験ができなくては世界に追いついていけない。ここで開発された技術が世界で使われるよう、各企業と取り組んでいく。ロボット産業に出る計画もある」と話す。現在の協力企業はベンチャーから大手まで25社で、今後はドローンの大手など世界トップクラスの企業との提携も決定している。
ハウステンボスを引き継いでから5年、増収増益を続け、100億円弱の利益を出した2015年で再建が終わったとの認識。「2016年はいよいよ観光ビジネス都市の本番」としてギアを変え、「ロボットや新エネルギー、世界一生産性の高い食物工場の建設など、新分野に資源を投入していく」方針だ。澤田氏によると、当初から目指していた「世界最先端の未来都市・観光ビジネス都市」の達成度は、現状「3割程度」。テーマパークの再建で2割、現在決まっていることが1割で、出来上がるには3~5年かかると見ている。
「ロボット王国」 -世界のロボットが見られる唯一の場所に
経営顧問でCTO(チーフ・テクノロジカル・オフィサー:技術責任者)の富田直美氏は、ロボット王国が目指すこととして「世界のロボットを最大級で集める」と説明。「世界中のロボットをネット等で見たことはあっても実際に見た人はいない。経験してみなければわかるようにならない」とし、エンターテイメント性はもちろん、日本の技術発展の裾野を広げる場としても重要な場であることをアピールする。グランドオープン時には約200体で展開する予定だ。
「ロボットの王国」は、既存の「変なホテル」とロボットの体験型ミュージアム&ショップを融合した「ロボットの館」、ロボットがメインスタッフの「変なレストラン」で構成。このうち「ロボットの館」では、西日本初登場となる搭乗型ロボット「バトルキング」などの試乗ゾーンや、キレキレのダンスを披露する世界初のアイドルロボット「プリメイドAI」などによるショー、国内外のロボットを集めたショップなど7つのゾーンを展開する。
「変なレストラン」では、鉄板焼き職人の料理長ロボットが焼き上げるお好み焼きやバーテンロボによるカクテルやドリンクなどの提供を予定。サービスの一部もロボットが行ない、すべてのテーブルにコミュニケーションロボット「タピア」を配置して空席の誘導から園内の情報案内まで、利用客との会話を行なう。さらに、2体のサービスロボが客席間を通行し、案内やバッシング(空いた皿を下げる)作業も行なう。バッシングをするロボットは世界初だという。
プレオープン期間中はロボットのダンスショーや体験コーナー、ショップなど限られた営業となるが、ロボット楽団のコンサートや元世界チャンピオンによるラジコンカーのデモンストレーション、俳優・松阪桃季さんにそっくりの「トーリロボ」など、限定イベントを開催。アニメ映画「THE NEXT GENERATION パトレーバー」で使われた高さ9メートルの実物大ロボットの常設展示も開始する。
なお、集客目標は特に設けていないが、夏期に行なう日本初の水上プールや各種イベントとの相乗効果もあわせ、前年比10~20%増の伸長を期待している。
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取材:山田紀子(旅行ジャーナリスト)