公益財団法人日本交通公社(JTBF)が2013年12月19日に開催した第23回旅行動向シンポジウムで、観光政策研究部次長の塩谷英夫氏は2014年の国内旅行市場について「やや厳しい1年になる」との予想を発表した。主要旅行業者の取扱額が9ヶ月連続で前年を上まわるなど、2013年の旅行市場を支えた国内旅行の堅調な推移に、歯止めがかかる可能性を示した。
まず、宿泊費(パック旅行費を含む)の家計消費に占める比率を長期スパンで見ると、ITバブルやリーマンショックなど景気状況と連動して比率が上下する傾向が見られ、1989年の消費税導入時と5%に増税した1997年の翌年にも低下。古くは74年のオイルショックとその後の景気停滞時なども縮小しており、家計支出引き締め時には宿泊費率が低下するとのデータを示した。
さらに、日本交通公社が2013年11月末に実施したオピニオンリーダーに対する調査(※)で、2014年の国内宿泊旅行の回数に対する「かなり増える」「少し増える」を足した「増える」との回答比率は31.8%となり、前年調査の40.4%から8.6ポイント下落。塩谷氏によると、このオピニオンリーダー層調査の旅行意欲の結果と宿泊費の家計消費に占める比率の実績値には連動性があるといい、2014年の宿泊費の比率は2013年の2.12%を下回ると見る。
旅行回数が増えない理由について、オピニオンリーダー層の回答は「消費税率が8%に上がる」(33.3%)が最も多かった。また、昨年よりも増えた項目では「給与やボーナスが減少した(しそう)」が17.4%(4.6ポイント増)、「景気の先行き感が不透明なので控えたい」が11.4%(0.9ポイント増)」、「景気の影響で雇用に影響が出た(出そう)」が4.3%(2.0ポイント増)と、景気への不安をあげる声もあった。旅行消費単価についても「かなり増える」と「少し増える」をあわせた「増える」は28.1%(4.0ポイント減)となったという。
▼次の大ピークは2025年~30年か
また、塩谷氏は超長期でみた国内旅行市場の動向を提示し、「30周年くらいで大きなピークを迎える」と説明。旅行量のピークはインフラ整備が熟し、景気が下り坂になるタイミングで発生することが多いという。
具体的には、1964年の東京オリンピックによる新幹線等のインフラ整備が行なわれ、1970年の大阪万博時に戦後初のピークに。1974年のオイルショックで低調となるが、バブル景気を経て1990年後半(海外旅行は2000年)に戦後最大のピークを迎えた。この流れでいくと「次のピークは2025年から30年くらいに来る」という。ただし塩谷氏は「基本的には景気に連動しており、アベノミクス効果でどう動くかがポイントになる」とし、旅行商品価格や交通インフラ、メディア、社会情勢等も影響することも言い添えた。
なお、シンポジウムでは旅行市場と景気の動向を踏まえた市場展望と観光地の取り組みに関する考察も発表。この内容は後日、記事を掲載する。