Tourism and Transportation Club of Japan(TTCJ)は、同会の月例会にグーグル(Google)から営業本部、旅行業界統括部長の陳内裕樹氏を招いて特別講演を実施した。講演では、グーグルの目指すネット社会や世界の潮流、消費者動向など旅行業界がネット対応でとるべき方策のヒントとなる内容が語られた。今回は、その一部をレポートする。
▼インターネットと旅行業は好相性
「検索」で旅行者傾向を把握、「地図」で旅行をバリアフリー化
陣内氏によると、グーグルはこの数年来「旅行業とネットは相性がいい」という方針で様々なアクションをとっているという。これは、旅行者が旅行前、旅行中ともに「地図」に触れる機会が多く、観光地情報を「検索」して調べることからだ。
グーグルは、この「地図」と「検索」で優位性が高く、消費者行動を注視している。特に、旅行者の検索キーワードの傾向は、旅行者の嗜好を知る一つの手掛かりとなるため、旅行業界が外国人旅行者、日本人旅行者の取込みのために「検索」傾向を有効利用することを提案した。参考までに、2013年に同社が発表した検索結果を以下に掲載する。
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- グーグル、2013年の旅行関連の検索ランキングを発表、今年もっとも検索された旅行会社は?
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「地図」では、同社はグーグルマップやストリートビューを提供している。無料で提供されているこのサービスは、人々の日常だけでなく「旅行」の場面でも接点が多い。グーグルは、このストリートビューの精度をさらに高度化するという。これは、旅のバリアフリー化をめざすもので、地図上の段差を最小3センチまで表示できるように改善をする投資を行う。少しの段差でも注意しなければいけない車椅子の利用者でも移動を可能とするものだ。
▼旅行者は、急速にスマートフォンにシフト
スマホで旅が完結する時代、「今からがチャンス」
インターネットが持つ影響力増大が続く中、消費者が利用するデバイスには急速な変化がみられている。陳内氏は、インターネットを閲覧する環境がパソコンからスマートフォンに急速に移行していることを指摘。グーグルの旅行関連の検索では、2013年8月段階でスマートフォンからの検索がパソコンを超えた事実を紹介し、「パソコンを見ている人は増えていないが、スマホで見ている人が増えている」状況を解説した。
このように、スマートデバイスでネットを利用する旅では「言語の壁も超えやすい」。旅先でグーグルの地図に表記される言語は、ユーザーが現地語と母国語の双方を利用することができるからだ。「検索」では音声による検索や人と人のコミュニケーションの音声翻訳にも注力しており、グーグルは旅行者が旅行しやすい環境を整えている。
こうした傾向のなか、陣内氏は最低限の行動として「スマホでPCサイトがどう見えているか、チェックしてほしい」と呼びかけ、旅行業のスマホ対策が必須であることを強調。一方、この市場は伸びシロが大きく、逆説的には「今からがチャンス」でもあるという。
そして旅行前・旅行中の情報収集や予約、旅行後の情報共有いたるまで、一連の旅行サイクルが「スマホで完結する時代になりつつある」として、グーグルがこうした活動をすべてのタイミングをカバーするサービスを提供していることも紹介した。興味関心のポイントではYouTubeやストリートビュー、予約・計画ではホテルファインダーやフライトサーチ、目的地ではスマホを利用した検索情報や、旅行後の体験共有ではGoogle+がある。
一方、Googleと旅行会社の関わり方について陳内氏は「パートナーである」点を強調。ホテルや航空券を扱うホテルファインダーやフライトサーチは、あくまで比較・検討を一覧してネットユーザーの利便性をあげるもので、旅行商品を提供する旅行会社とは役割分担をしていくのが同社の方針であることを説明した。
なお、TTCJは月例会で旅行業界の専門家や海外機関(大使館や観光局など)の各界の専門家を招いた講演会を開催している。参加は、旅行業界専従者であれば会員以外でも会員のゲストとして参加が可能だ。
グーグルに関する記事一覧は
- トラベルボイス編集部:山岡薫