ヤフー・ジャパンがオンライン旅行(OTA)事業を、今年3月に子会社化した「一休」に集約する。トラベル事業の再編の一環で、「Yahoo!トラベル」は他社OTAのプランを比較掲載するメタサーチに回帰。宿泊施設の直接の窓口を「一休」に一本化させる。この動きについて、同社でトラベル事業含むeコマースを統括する執行役員ショッピングカンパニー長の小澤隆生氏がトラベルボイスの取材にこたえた。
小澤氏は「グループ内でOTAをふたつ持つのは効率が良くない」と話し、この背景に経営効率を上げる狙いがあったことを明かす。今回の事業再編で、OTA事業の社内リソースを一休に集中させ、トラベル事業全体のサービス強化や事業の底上げを図る考え。すでにYahoo!トラベルで宿泊施設を担当していた人員は一休に出向。一休の担当者とともに、今回の再編について宿泊施設側に説明にあたっているという。
ヤフーでは、一休買収後、両社の連携強化による宿泊事業の強化を行ってきた。例えば、「Yahoo!検索」では宿泊施設名の検索結果で一休のプランを上位に表示。今後も、双方の強みを生かした取り組みを展開していく予定だ。
こうした中、実行される具体的なトラベル事業の再編はこうだ。
Yahoo!トラベルで宿泊施設との直接契約プランとして展開してきた「Yahoo!トラベルプラン」を2017年5月末に掲載・予約を終了(ユーザーの宿泊予約が完了するまで、システムは稼働)。その後、宿泊施設は一休の予約管理システムを活用することでYahoo!トラベルに宿泊プランを掲載することが可能となる。この宿泊プランは、新名称「ヤフープラン」として掲載される。
一方で、一休は別ブランドとして従来通りの展開を行う。「Yahoo!トラベルプラン」に掲載してきた宿泊施設が一休の予約管理システムを利用可能になるものの、一休.comへの掲載基準は変わらないという。一休の取締役副社長、中山一郎氏は、「これまでと同様に厳選の宿を掲載していく」方針を強調。「(今回の再編は)ユーザー側には変化を感じさせないもので、あくまで内部を変えるもの」と説明した。
なお、ヤフーと一休ともに展開している飲食店予約については集約していく予定は、今のところないという。
一休の子会社化が転機、「前提が変わった」
Yahoo!トラベルは、2015年2月に大幅なリニューアルを実施し、提携サイトから提供される旅行商品とともにヤフーと宿泊施設の直接契約で掲載をする独自商品「Yahoo!トラベルプラン」の取扱いを開始。それまでメタサーチとして展開してきた同社がOTAとして再出発するというものだった。
そんな中、同じ2015年末には一休を買収することになる。当時の発表によれば、一休の創業者であり代表取締役社長の森正文氏が株式売却の意向を表明したのが2015年8月。秋にはヤフーによる買収が決定し、OTA事業の取組みで「前提が変わった」(小澤氏)。今回の再編は、経営の前提が変化したことに対応したものだ。
一方で、宿泊施設側が気になるのは、OTAに支払う手数料だろう。終了する「Yahoo!トラベルプラン」は、宿泊施設が支払う利用料を他社と比べて最低ラインの5%程度におさえてきた。ユーザーに付与するポイントの原資など実費的な利用料のみだった。一方で、一休のシステム利用料は10%。従来のプランで掲載してきた宿泊施設にとっては、利用料が上がることになる。
この点について、小澤氏は「様々なサービス強化を検討している。送客で返したい」と話す。実際、一休の予約管理システム(新たな「ヤフープラン」)では、オンライン決済が可能になり、サイト内で予約を完結できるようになるという。こうしたことで成約率が向上する点やヤフーのサイト内での露出を拡大していく方針を強調。さらには、ショッピング(物品販売)で成功しつつあるプレミアム会員向けサービスを、来年にもトラベル分野で拡充したい考えを明らかにした。
トラベルボイス編集部 山岡薫