みずほ総合研究所は、2020年の東京オリンピック開催による経済効果について、ショートリポートを発表した。このなかで、2020年の訪日外客数は2169万人と試算。経済効果は訪日客とMICE、カジノ開設(東京)が実現した場合、合計で約7.6兆円が期待できるという。
▼訪日外国人数は増加基調、GDPは約3兆円押し上げ
2020年の訪日外国人数は、2003年~2007年(毎年16万人増加)を基準に開催決定前のトレンドでも2020年には1769万人になると推計。そこに、シドニーオリンピック前後のオーストラリアの状況で割り出した400万人を、オリンピックの押し上げ効果として追加した。2014年~2020年までの7年間累計で、オリンピックによる追加効果は1600万人になると見る。
経済効果については、2013年の1人あたりの消費額15.8万円に対し、2020年時点で17.4万円(13年比10%増)まで増加すると仮定。訪日外客数のオリンピック効果分と1人あたり消費額の増加を勘案し、経済効果は2014年~2020年で累計3.1兆円、2013年の名目GDP481兆円の約0.6%に相当する規模になると試算した。
▼MICE、付随的イベントやスポンサー企業の案件増加も
オリンピック開催に伴うMICEへの効果は、8149億円と試算。国際会議場新設による効果が4395億円、国際会議開催による効果が3754億円だ。
試算の仮定では、国際会議件数が2020年に向けて2014年~2020年にかけて累計235件(年間76件)増加すると試算。そのベースは、現在拮抗している中国を上回る増加ペースであることと、大型MICE施設のニーズに対応できる国際会議場の新設が条件となっている。
大型MICE施設の新設については、国際空港から30分圏内で、ホテルやレストランなど周辺施設を一体的に備えた「フラッグシップ型の大規模MICE施設」(日本経済団体連合会が提言)1施設を想定。また、国際会議への来場者数増加による経済効果については、国際会議1件につき8000人の外国人と2000人の日本人が参加すると仮定し、算出した。
▼訪日2000万人の起爆剤として期待されるカジノ
観光立国の実現に向け、政府はオリンピック開催を機にカジノを含む統合型リゾート施設(IR)を本格始動したい考えで、IR推進法の成立が目指されている。今回は東京地区で統合型リゾート施設が建設された場合の施設建の投資額と、カジノ導入による経済波及効果を試算したところ、計約3.7兆円となった。
建設投資額では、カジノ後進国として話題性のある施設開発をするために一定の質と量を確保する必要性から、投資規模を2010年にマリーナベイサンズとリゾートワールドセントーサの2つの統合型リゾートが開設したシンガポールと同等になると仮定。これによる経済効果(付加価値ベース)を8053億円とした。カジノ導入による経済波及効果については、日本人の行動パターンを米国人と同様と前提し、関東地区では2兆8648億円の付加価値になると試算した。
なお、シンガポールでは統合型リゾートの収益のうち7~8割がカジノ事業といわれる。2013年の外国人観光客数は1557万人で、統合型リゾート導入前の2009年比で約6割増課。観光収入も5割以上増加し、観光収入の約2割がカジノを含む観光・娯楽によるものだという。
(トラベルボイス編集部)