エイチ・アイ・エス(HIS)の2019年10月期決算(2018年11月1日~19年10月31日)連結業績は、売上高が前年比11.0%増の8085億1000万円、営業利益が3.0%減の175億4000万円、経常利益が12.4%減の170億8900万円、当期純利益は10.7%増の122億4900万円となった。
主力事業である旅行業の売上高が10.9%増の7224億6400万円、営業利益12.7%増の137億5400万円と好調だったのに加え、個人家庭への電力小売りを中心とするエネルギー事業の売上高が70.7%増の204億6100万円となり営業利益も9億7400万円を産み出した。
一方でハウステンボスグループ(HTB)は売上高が8.5%減の280億8600万円、営業利益は30.6%減の50億7500万円にとどまった。ホテル事業は売上高5.3%増だったものの、新規ホテルの開業関連費用を前倒しで追加計上したこともあり2億1700万円の営業損失となった。また九州産交グループは売上高が222億3000万円で2.7%の微増となったが、熊本市内での再開発事業の費用増を受け営業利益は60.3%減の1億5800万円に落ち込んだ。
結果的に売上高は過去最高を記録したが、円高基調による為替差損9億円に加え、ハウステンボスグループ(HTB)における7億円の資産評価損等で営業外費用が16億円増加するなどした結果、経常利益は前期より24億1000万円減少することになった。
好調な旅行事業、海外旅行でネット販売送客数が店舗を上回る
旅行事業の事業分野別の動向は、海外旅行事業と海外における旅行事業が前期からの好調を維持したが、訪日旅行事業は前年割れとなった。
海外旅行は10連休となったゴールデンウィーク需要を取り込んだうえ、夏季に月間3000席規模の積極的なチャーター便を展開してグアム需要の回復を果たした一方、単価の高い添乗員付き欧州ツアーを25%伸ばすなどGW以降の反動減対策にも成功した。オンライン販売も販売サイトのリニューアルなどで強化し、チャネル別送客数はインターネット販売の送客数が初めて店舗を上回った。
これらが好業績につながり、海外旅行取扱額は3.8%増の4521億1700万円となった。なお、HISの推計では主要旅行業者の海外旅行取扱額に占めるHISのシェアは、前期に続き2年連続で2割を超えた。
海外における旅行事業は、買収したカナダのアウトバウンド旅行会社「REDLABEL」が第3四半期から新規連結となり売上高増に寄与したほか、韓国やグアムを中心とする現地インバウンド事業も好調に推移。海外法人アウトバウンド取扱高が50.4%増の1202億9800万円、海外法人インバウンド事業も9.6%増の1833億4300万円と大きく伸びた。
訪日旅行は欧米方面からの旅行者の受け入れが伸びたものの、中国市場の競争環境が変化。中国からの訪日客を扱うジャパンホリデートラベルの収益悪化が足を引っ張り、4.0%減の286億800万円となった。
決算記者会見に臨んだ代表取締役会長の澤田秀雄氏は今後の取り組みについて言及し、「来期は旅行事業で10%増の7940億円、全体では9000億円超えを目指す」とした。また来年6月には本社を虎ノ門に移転し、オフィススペースを1.5倍に拡張する。8月には事業の多角化をにらみホールディングス化を図る計画で、「来年はいろいろな意味で大きな変化の年になる」として、HISが新たな節目を迎えようとしていることを明かした。