富良野の観光課題を、大学院生チームが分析し改善策提案、北海道大学と日本オラクルが市と報告会

日本オラクルと北海道大学(北大)、富良野市は、2022年度の「北海道富良野市のスマートシティ推進支援プロジェクト」の最終報告会を開催した。

3者は2021年度から連携し、産学官で同市の産業発展や住みよいまちづくりに向けたスマートシティ推進の施策立案を開始。北大の「博士課程DX教育プログラム」の一環として、大学院生のチームが富良野市から提示された課題をテーマに仮説を立て、オラクルのクラウド・サービスによるデータ分析やワークショップ、視察や調査等のフィールドワークで検証し、施策を提案する。これをもとに富良野市が実証実験の検討する。

2回目となる2022年度のテーマは、(1)環境「富良野市民の省エネ行動変容によるカーボンニュートラルの促進」と(2)観光「富良野スキー場の若年層の顧客開拓」の2つ。

このうち、市から学生たちに対して、観光分野での課題を「観光に対する若年層の認知低下」と提示。同市の観光データ等を活用して、若年層の顧客拡大に向けた富良野スキーのブランディングや施策を試行し、富良野市スキー場の観光施策・実行計画への提案につなげることを求めた。

富良野市の観光客数が1998年を境に夏と冬で逆転し、冬は減少が続いている現状について、学生チームは、同市の冬のメインコンテンツであるスキーを楽しむ日本のスキー人口が最盛期から半減していることが背景にあると指摘。スキー場の利用者増加には、スキー以外のコンテンツを増やすことも重要とし、ラベンダー畑などで人気の夏に比べて印象が薄い冬の観光の発信を課題にあげた。

その解決方法として、夏の来訪者に対し、アプリを活用したクーポン配布などでの来訪訴求を提案。市や店舗が直接、消費者とつながる機会とするだけでなく、若者のデータ収集も可能になるとした。学生チームは同市の観光データには年代の偏りがあり、若年層のデータが少なかったことも指摘。若年層の顧客開拓には、同年代に関するデータ収集が課題であることも指摘した。

これ以外にも、SNSの活用に関する調査を報告したほか、冬の観光客増加に向けたアイデアも紹介。冬もラベンダーで富良野に来てもらえるよう、雪の積もったラベンダー畑やゲレンデをラベンダー色にライトアップする「冬のラベンダー戦略」や、道内の認知度が高いスキー場が「キロロ」「ニセコ」など3文字のカタカナが多いことを踏まえ、富良野も「フラノ」と表記して愛称の定着を目指す、などを提案した。

発表資料より

報告を受けた富良野市副市長の稲葉武則氏は、「“目からうろこ”の発想や施策の提案が多くあり、スキー場の差別化でラベンダー色というのは思い浮かばなかった。できることがたくさんある」と述べ、報告内容を参考に、事業者と一緒に面で取り組んでいく考えを話した。

日本オラクル執行役員の本多充氏は、「スキーだけに焦点をあてなかったのが面白い。報告内容はすぐできることなので、富良野市にはぜひすぐ活用してほしい」と評価。一方で、若年層のデータがないことに「大きな課題。市としても収集を考えたほうが良い」とアドバイスした。

講評として北海道庁でDXを担当している次世代社会戦略局局長の所健一郎氏は、「富良野の観光に冬のイメージがないと言い切れるのは、行政にはできないこと。外の意見が大切だと思った」と評価。国のデジタル田園都市国家構想を踏まえ「デジタル活用には、地域や社会を良くしようという思いが大切で、それが今回の発表に入っていた。道としても、学生の経験を地域に還元していきたい」と話した。

実際に動き始めた2021年度の取り組み

報告会では、初年度である2021年度の取り組みの概要と進捗状況も発表。2021年度は「環境:ゴミ分別とリサイクル促進」と「ワイン:販売促進」の2テーマで施策提案をした。

環境チームでは、ゴミ収集時に清掃員がタブレットで分別状況を記録することを提案。これを受けて同市はゴミ収集アプリを開発して実証実験を実施し、ゴミ収集の現況と課題を把握した。今後は、データ取得とともにアプリの社会実装に向けた検討をする。

また、ワインチームはコロナ禍で落ち込んだ名産の富良野ワインの売上回復のため、販売データの分析などからミニボトルでの販売を提案。試験的に販売したところ、好評だったという。

3者連携プロジェクトでは新年度についても、富良野市の重点施策の中から、環境分野と観光分野を中心に事業をピックアップする予定。2年間の取り組みで得られた知見と課題をさらに生かし、取り組んでいく方針だ。

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