2023年11月13日~16日にフロリダ州ハリウッドで開催された「フォーカスライト・カンファレンス2023」。世界中で紛争が続いているものの、旅行市場は旺盛な需要に支えられ、会場の空気は明るかった。今年のテーマは「You, Me, and The Machine」。これまでもパーソナライゼーション、シームレスな旅行の構築について議論されてきたが、まだやるべきことは多くある。これに乗り遅れる会社は、2020年代後半には苦労することになるだろう。会場での発言をまとめた。
生成AIは、実用から新たに活用へ
AIは個人的な推奨事項を作成しながら旅行を構築、あるいは旅程を作成できるため、旅行への影響は無限だ。 ただし、まだ初期段階。参加者誰もが、今後の旅行の発見や体験にAIがどのような影響を与えるかを語るのは時期尚早であるという点で同意した。
現在のところ、AIは主に顧客サービス (チャットボットなど) とバックエンドで使用され、企業の生産性を向上させているほか、ChatGPTプラグインやコンテンツのキュレーションなどて旅行計画の高度化を進められている。
Googleトラベル担当マネジング ディレクターのスージー・ヴォウィンケル氏は、BardのOpen AI拡張機能が Gmail、YouTube、航空券、ホテルの検索にどのように接続されて旅程が作成されるのかを説明。パートナーにとっては、マーケティング担当者が投資すべき役割を果たすことできる自信を見せた。
トリップアドバイザー(Tripadvisor)のマット・ゴールドバーグCEOは、AIが10億件以上のクチコミを分析して、旅行者にホテル、体験、レストランのより詳細な情報を提供できる大きなチャンスがあると説明。「ほかの強力なテクノロジーと同様に、長期的な影響が過小評価されている」と話した。
スカイスキャナー(Skyscaner)のジョン・マンゲラーCEOは、数か月にわたるテストの結果、AIの変換率は向上し、初期のアプリケーションのほとんどは本質的に実用的なものであることがわかったという。
また、トリバゴ(Trivago)のヨハネス・トーマスCEO は、AIを使用して世界中の複数の言語でテレビCMをローカライズし、コストを10分の1に削減したことを明かした。さらに、ゲット・ヨアー・ガイド(GetYourGuide)のヨハネス・レック共同創設者兼 CEOは複数言語での対応力、ヴィアターのベン・ドリュー社長はコールセンターなどでの時間の節約など「実用的な」用途を説明した。
生成AIが旅行を変えると言われ、いわゆる「AIベース」の企業が急増しているにもかかわらず、そうしたスタートアップの評価はまだ高くない。フォーカスライトのデータによると、2023年の調達額は8年前の水準を下回るとの試算されている。
投資家は、生成AIでの「大きな勝者(Big Winner)」が登場するのを待っているようだ。ジェットプルー・ベンチャーズりエイミー・バー氏は「まだ投資に値する実例はまだ見つかっていない」と話した。同社は業務効率化のためにAIを使用する企業を探しているという。
投資家は、2024年から2025年にかけて新たな動きが出てくると期待しているが、投資を受けるためには企業は収益性の道筋を示す必要があるだろう。
勝者と敗者
カンファレンスでは、旅行エコシステムに対する生成AI の影響も議論となった。勝者は誰になるのか。BTIG, LLC マネージング ディレクターのジェイク フラー氏は「もちろん、OpenAIなどスタートアップ企業が勝つ可能性はあるが、一方、OTAは数十年にわたって、AIに必要な膨大な量のデータを蓄積してきた」と話す。
カヤック(KAYAK)のスティーブ・ハフナーCEOも「蓄積されたデータに基づくAIによって、大手ブランドが成長し、市場シェアを獲得できると思う」との見解を示した。一方で、同社の共同設立者ポール・イングリッシュ氏は「AIのおかげて、生産性が大幅に向上した。もはやエンジニアが何人いるかは関係ない」と話した。
収益の分岐点
最近立ち上げられたスタートアップは、収益を改善する時期に来ている。OTAホッパー(Hopper)は、立ち上げからほぼ9年で、黒字化のめどがたったという。同社フレッド・ラロンドCEOは「基本的には2024年までに黒字化する必要がある」と話した。同社はBtoB事業はすでに黒字化を達成している。
タビナカ体験予約のヴィアターやゲット・ヨアー・ガイドも2024年に黒字化を達成すると見込んでいる。ヴィアター(Viator)のドリュー社長は「長期的には、OTAのような利益率を目指す」と明かした。
カンファレンスでは、このほかに、持続可能性、NDCと業務渡航の現状、ツアー・アクティビティ、デジタル認証、クルーズ、グローバリゼーションなどの議論が行われた。