世界の大手クルーズ会社、海上から地上への進出が続々、リゾート開発に大型投資、収益拡大の新たな機会に

写真:ロイター通信

世界の大手クルーズ会社は、クルーズ船に加えて、さまざまなアクティビティやレストランなどが一体となったプライベートリゾートの開発に力を入れている。この傾向は、ロイヤル・カリビアン・グループが2019年にバハマで開業した「パーフェクトデイ・アット・ココケイ」に始まる。

同社は、このリゾート開発に2億5000万ドル(約383億円)を投資。2019年のオープン以来、人気を博し、販売収入は順調に増加している。現在、ライバルのカーニバルとノルウェージャンクルーズラインも、ロイヤル・カリビアンの成功を追いかけようとしている。

クルーズ会社は、クルーズ旅行を手ごろな価格で提供し、コロナ後に旅行を待ちわびていた消費者を引きつけ、好調に利益を上げている。ロイヤル・カリビアンの株価は、今年これまでに69%上昇、競合のカーニバルとノルウェーはそれぞれ27%と30%上昇している。

ロイヤル・カリビアンのジェイソン・リバティCEOは、「パーフェクトデイ・アット・ココケイは、顧客と事業の両方にとってゲームチェンジャーとなった」と話す。同社は「パーフェクトデイ・アット・ココケイ」に立ち寄る3~4日のツアーで過去最高の乗船客数を更新している。

一方、直接予約も増加。あるアナリストによると、直接予約によって、ロイヤル・カリビアンはクルーズ価格の約10%から20%の販売手数料を節約できるという。

カリブ海で進む大型開発計画

カリブ海では、現在、民間企業が開発したリゾートは12ヶ所あり、そのうち2ヶ所は2024年と2025年に開業予定。今後、さらに増えると見込まれている。

カーニバルは、グランドバハマのプライベートリゾート「セレブレーション・キー」の開発に約6億ドル(約918億円)を投資する計画だ。同社のデビッド・バーンスタイン最高財務責任者がロイター通信に対して、「セレブレーション・キー」の投資収益率は同社の新造船の投資収益率とほぼ同程度と明かした。

ロイヤル・カリビアンは、2025年から2027年にかけて、さらに3つのプライベートリゾートをオープンする予定。メキシコのマハウアルのプライベートリゾートの開発に約6億5000万ドル(約995億円)を投資する計画で、同社は港と周辺の土地を約2億9000万ドル(約444億円)で買収したことを明らかにしている。また、バハマの別のリゾートに約1億6500万ドル(約252億円)を投資する予定だという。

ノルーウェージャンは4月、バハマ諸島にある同社のプライベートアイランド「グレート・スターラップ・ケイ」に新しい桟橋を建設するために約1億5000万ドル(約230億円)を投資する計画を発表した。

ツーリズムエコノミックスによると、2024年7月時点で公表されたツアーに基づくと、クルーズ会社が開発したプライベートリゾートへの乗客定員は前年比41%増の約1000万人。それ以外へのツアーの定員は18%増加し約5700万人に達した。

しかし、カリブ海の一部のデスティネーションへの訪問者は、コロナ前と比較して減少している。カリブ海の観光組織によると、2024年上半期のケイマン諸島のクルーズ訪問数は、2019年比で36%減少した。セントクリストファー・ネイビス、ベリーズ、セントマーチン島などでも、20%以上の減少が見られた。一方、大手クルーズ会社のプライベートリゾートがあるバハマ諸島への訪問者数は、2024年上半期に2019年同期比で66.5%増加した。

ロイヤル・カリビアンのリバティCEOは、「消費者のマインドは変化している。体験に没頭したいと考えている。プロバイダーもレベルアップする必要がある」と話している。

※ドル円換算は1ドル153円でトラベルボイス編集部が算出

※本記事は、ロイター通信との正規契約に基づいて、トラベルボイス編集部が翻訳・編集しました。

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