世界の航空会社の幹部が常に議論していることは、限られた座席を有効活用して、いかに最大限の利益を出すかということだ。
大手航空会社は、長距離国際線でファーストクラスを廃止し、代わりにビジネスクラスを最も重要なクラスと位置つけてきた。一方で、エコノミークラスでは限られたスペースにできるだけ多くの人を乗せる「高密度化」が進められている。
ファーストクラスは、ビジネスクラスがプライバシー機能を充実してきたため、高額な運賃の価値が薄まり、特権階級のための座席として位置付けられてきたものの、空席が目立ち始めてきた。
インドのジェットエアウェイズは、資金不足のために、ボーイング777で収益性の高い上級座席を追加することできなかったことから、2019年に運航を停止した。
ファーストクラスを強化する航空会社
それでも、富裕層向けにファーストクラスに投資する航空会社は存在する。
エミレーツ航空は2017年に、横4席から横3席に移行し、1席あたりのスペースを拡大した。現在9機のB777に設置されているが、B777Xにも同様の仕様を採用する予定だ。
キャセイパシフィック航空は、新しいファーストクラスのコンセプトに関する特許を申請。二段ベッドも備えた単通路ファーストクラスを導入する計画を立てている。
しかし、やはり稼げるのはビジネスクラスだ。カタール航空が「QSuite」を導入したことをきっかけに、ビジネスクラスでもプライバシースペースの確保が始まった。現在、その動きは多くの航空会社で見られる。投資資金が十分ではないエア・インディアでさえ、2024年に導入する機材ではビジネスクラスにプライバシーシールドを導入する予定だ。
ルフトハンザ・ドイツ航空は、「Allegris」コンセプトで、旅行者の好みによって選べる7つの異なるレイアウトを設置する。
エコノミークラスはさらに「高密度化」
エコノミークラスではさらに薄利多売の傾向が強まる。例えば、エア・インディアは、座席幅18インチ、座席ピッチ31~33インチの横9席仕様でB777を運航してきたが、改修型のB777では、座席幅17インチに縮め、横10席のレイアウトにした。
エアバスは、エコノミークラスへの座席追加の要望を受けて、A350で新しい生産基準を導入。航空機の側壁設計を変更し、4インチほどスペースを広げた。これにより、航空会社はA350-1000では30席を追加することができるという。航空会社や航空機メーカーは、この横10席のレイアウトが物理的な限界と見ている。
プレミアムクラスとエコノミークラスとの妥協案として登場したのがプレミアムエコノミークラス。1991年ごろにはすでに存在していたが、最近になって一般的になってきた。長らくプレミアムエコノミーに否定的だったたエミレーツ航空などの航空会社も導入に乗り出し始めている。
※編集部注:この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。
オリジナル記事: New Rules of Long-Haul Travel: Business vs. First Class, ‘Densification’ of Economy
著者:Ajay Awtaney氏