英国政府観光庁の会長に聞いてきた、来年始まる電子渡航認証から、日本人旅行者の動向、滞在長期化まで

2024年10月15日

英国政府観光庁（VisitBritain）会長のニック・ドゥ・ボワ氏が2024年9月中旬に来日した。会長としては初来日。2025年に開催される大阪・関西万博の英国パビリオンの視察が主な目的だ。ドゥ・ボワ氏は、万博を英国の魅力を発信する絶好の機会と位置づける。英国における日本市場の現状、日本人旅行者を誘致する仕掛けとはをドゥ・ボワ会長に聞いた。

日本人旅行者の滞在が長期化、現地消費も拡大

コロナ後、英国の日本市場は順調に回復している。2024年の日本人訪問者数は前年比33%増の29万9000人と推定。また、消費額も同44%増の3億5100万ポンド（日本円で約663億円）と見込む。ドゥ・ボワ氏は「訪問者数は2026年、消費額は2025年にもコロナ前2019年の水準に回復するだろう」と期待を示す。

日英間の航空路線も回復傾向にある。予約数は、2024年7月24日時点で2019年比76%、今年後半では80%に上昇すると予測。現在、東京／ロンドン間で週35便が運航しており、座席供給量は2019年比で96%まで回復した。大阪・関西万博に向けて、2021年夏以降運休が続いている関西／ロンドン線の復便が期待されているが、ドゥ・ボワ氏は「現時点ではコメントできることはない」と話すにとどめた。

また、ドゥ・ボワ氏は、日本人旅行者について、「1人あたりの消費額が大きく、滞在も長期化している」と説明したうえで、「それゆえに、日本は英国にとって重要な市場になっている」と評価した。実際、英国政府観光庁のデータによると、2023年の日本人旅行者の平均滞在日数は、海外旅行者全体の平均8日を上回る11日。また、1人あたりの消費額も、海外旅行者全体の平均約820ポンド（約15.5万円）を上回る1079ポンド（約20.4万円）となった。

「日本は英国にとって重要な市場」とドゥ・ボワ会長。大阪・関西万博への期待も大きい

ロケ地めぐり、スポーツツーリズムの訴求強化

英国政府観光庁は、日本市場の底上げを図るために2025年初頭から新たなキャンペーン「Starring GREAT Britain」を展開する。これは、映画やテレビのロケ地観光の魅力を紹介することで、長期滞在と地方への誘客を進めるものだ。

大手OTAの調査では、お気に入りの映画やドラマのロケ地を訪れたいと回答した日本人は70%で、世界平均の50%を大きく上回った。ドゥ・ボワ氏は「英国は世界のどこよりも映画やドラマのロケ地が多い国。日本人の有望な旅先になりうる」と自信を示した。

そのうえで、例えば、世界中で大ヒットしたドラマ『ピーキー・ブラインダーズ』の世界観が体験できるバーミンガム郊外ダドリーにある「ブラック・カントリー・リビング・ミュージアム」を紹介。また、19世紀初頭のロンドンを舞台にしたドラマ『ブリジャートン家』では、英国中に点在する古城や歴史的建物がロケ地として登場する。

ドゥ・ボワ氏は、キャンペーンではデジタルメディアでさまざまなロケ地を紹介していくとともに、旅行会社に対しては新しいツアー造成を働きかけていく考えを示した。

このほか、新しい観光コンテンツとして、スポーツツーリズムにも注目。特に、日本でも人気の高いプロサッカーリーグ「プレミア・リーグ」は、主力として活躍する日本人選手も多いことから、訴求力は高いとの認識を示す。

ドゥ・ボワ氏によると、英国への外国人旅行者のうち約15人に一人がプレミア・リーグの試合を観戦しているという。「英国のサッカーは外国人旅行者にとって体験の一つ」として、サッカー観戦ツアーの造成にも期待を寄せた。