アジア大手の旅行予約「アゴダ」の日本戦略とは? 日本人の海外旅行市場からインバウンドまで、責任者に聞いてみた

世界2大OTAプライスライン・グループのアゴダ(Agoda.com)は、宿泊予約のOTA。アジアを中心にグローバルに事業を展開している。同グループのブッキング・ドットコム、カヤック、オープンテーブル、レンタルカーズ・ドットコムとは独立した経営で、日本でも独自路線で事業の拡大を目指している。

日本市場に参入して6年。市場環境や予約傾向が変化を見せるなか、アゴダはその変化にどう対応しているのか。WIT Japan 2016に参加した同社ビジネス・ディベロップメント担当VPのティモシー・ヒューズ氏に聞いてみた。

日本での契約は8000軒に、旅館の需要喚起にも意欲

「アジアのハートを持って、グローバルにビジネスを展開しているOTA」——ヒューズ氏はアゴダをそう説明する。

プライスライン・グループの傘下に入ったのは2007年。他グループ企業と同様に独立した経営でオンライン・ホテル予約サービスを提供している。現在、直契約約16万軒を含め、トータルで約80万軒が掲載されているという。

アゴダのビジネス・ディベロップメント担当VP ティモシー・ヒューズ氏

2010年に日本市場に参入して以降、着実にビジネス規模を拡大させており、最近では横浜に専用のコールセンターも立ち上げた。そのコールセンターも含め日本の営業所は全国に5ヶ所。従業員数は100人強。

8,000軒以上の宿泊施設と契約を結ぶところまで成長してきた。「日本市場は競合が多いが、潜在性が高いと見込んで投資を続けている」とヒューズ氏。特に、インバウンドの伸びは大きく、「グローバルでトップ3のデスティネーションに入っている」という。

インバウンド市場では旅館というユニークな宿泊形態があるが、その人気は高まっている、その一方で、ヒューズ氏は「写真や動画などを使って、もっとそのユニークさを伝えていくことが必要。旅館は、ホテルとは異なるリッチでディープな宿泊体験を提供するもの。バリのヴィラやオーストラリアのB&Bなどと似たところがあるだろう」と話し、高まるニーズに応えるとともに、新たに需要喚起にも意欲を見せる。

新しい体験を求める日本人海外旅行者

日本のアウトバウンドについては、予約傾向の変化として「伝統的な観光地に加えて、新しいデスティネーションでの予約が増えており、従来とは違う体験を求める傾向が強くなっている。さらに、宿泊体験も従来のホテルではなく、変わったものを求める需要も高まっている」と明かす。また、「日本に限ったことではないが、モバイルでの予約が増加している」点も最近の特長として挙げた。

日本では、同じプライスライン・グループの「Booking.com」がテレビCMで知名度を上げているが、アゴダはGoogleやYahoo!といったポータルサイトやメタサーチでの露出にとどまっている。しかし、今年中国で異なるメディアでのブランディング・キャンペーンを開始。ヒューズ氏は「まだ実験段階だが、その結果を見て、ほかのアジアでの展開も視野に入れている」と明かし、日本でもアウトバウンドと国内旅行双方の市場で知名度向上の取り組みを強化していく可能性を示唆した。

民泊は市場を活性化、ホテルも消費者ニーズ探るきっかけに

ヒューズ氏は、現在世界的に需要が高まっている民泊についても言及。「消費者は、その旅行スタイルによって求めている宿泊体験は違う」と指摘したうえで、「既存の宿泊施設と共存することは可能」とした。航空業界でいえば、LCCが登場し、市場は変化した。しかし、LCCとFSC(従来型航空会社:フルサービスキャリア)は共存している。LCCがFSCを脅かす存在になったことは否定しがたいが、もう一方で「LCCの登場によってマーケット全体が拡大したことも確かだ」と話す。

さらに、FSCの方も消費者が求めるニーズを探る努力を強めた。「民泊も同じ。民泊の広がりにともなって、既存の宿泊業者は、もっと消費者ニーズを探るようになるだろう。たとえば家族旅行の場合、ホテルのコネクションルームを確保するのが難しければ、Airbnbで一軒家を借りるオプションもある。そうした消費者動向が進めば、ホテルもいろいろとアイデアを練る必要に迫られるだろう」と話す。

アゴダでは、すでに個人所有のアパートメント、コンドミニアム、別荘などを既存のホテルとは異なる「non-hotel property」として取り扱い、一般的な民泊のようにアパートの一室を貸すことはないが、一棟貸しでニーズに応えている。「アゴダの最大の強みはカスタマーケア。その仕組がしっかりしているからこそ、non-hotel propertyの取り扱いも可能になっている」とアピールする。

投資の中心は人材確保、ローカライゼーションには必須

日本で順調に業績を伸ばすアゴダ。今後さらに成長していくうえでの課題は何か?

ヒューズ氏の答は明快だ。「いい人材の確保」。いくらテクノロジーが発達しようとも、オンラインであれ、オフラインであれ、「ビジネスの基本は『人』」と指摘し、「日本に限ったことではないが、地元のことをよく知る人材の確保に投資していく」と強調した。

取材・記事 トラベルジャーナリスト 山田友樹

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