ジェイティービー(JTB)は、デジタル決済サービス「PayPal(ペイパル)」と提携し、スマートフォン専用の電子チケットサービス「PassMe!(パスミー!)」の運用を開始した。情報提供から各種施設のチケット検索・販売、入場(認証)までスマホで完結するもので、JTBとして初のサービスとなる。
記者会見で、JTBグループ本社執行役員事業創造部長の鈴木雅己氏は、パスミー!は旅行と異なる日常的なレジャーやお出かけ回りを対象にしたサービスであることを説明。日帰りレジャー市場については「全体で3130億円といわれるところ、JTBは89億円、シェア2.8%と小さく、取り組みが遅れていた」とし、「旅行以外のレジャー市場に向けた新たな挑戦。JTBの新規事業」と意気込みを示した。
サービス開始時点(2015年7月23日)の契約加盟施設は234施設、取扱商品数は520プランだが、2015年末には加盟施設数3000か所、商品数6000プランに広げ、利用者数10万人、取扱額3億円を目指す。2019年末に、施設数5000か所、商品数1万5000プラン、取扱額80億円を目標とする。
パスミー!で阻害要因を解消
JTBでは、これまでコンビニ端末でのチケット販売などを行なっていた。しかし、市場拡大には(1)紙チケットからオンライン販売への移行、(2)システム導入に伴う加盟施設のコスト負担への対応、の2つの課題を抽出。「モバイルファースト」なサービスで、その解決が図れるシステムを実現したのが特徴だ。
強みは大きく2つ。1つが通常のクレジットカード決済に加え、ペイパルのアカウントでの決済も可能としたこと。ペイパルに標準サービス「不正検知システム」「カスタマーサポート」「買い手の保護制度」によって、消費者がモバイル決済を躊躇することなく、安心して利用できるメリットがあるとする。鈴木氏はペイパルに対して「新市場獲得の強力なパートナーとして迎えた」と述べ、その重要性を強調する。
もう1つが、スマホに表示するチケット認証と消込機能を、「電子スタンプ」のみで行なうこと。電子スタンプはJTBが無償貸与して導入コストを不要とし、規模の小さな施設も参加しやすくした。さらに加盟店には、購入者のマーケティングデータやパスミー!での情報発信機能も提供する。販売手数料は10%の設定だ。
当初は国内市場を優先するが、インバウンドも早期に取組み、2017年度には多言語展開を開始したい考え。ペイパルには、203か国・地域で1億6000万人が利用していることから、インバウンドでの戦略的パートナーシップも行なう。既に訪日旅行での活用を視野に、海外OTAからの問い合わせもあるという。
商品サービスと今後の展開
消費者へのサービスコンセプトは、「簡単検索」「お得に買える」「簡単な利用・素早い入場」「チケットをシェア」の4点。チケット管理画面やレビュー投稿機能のほか、テーマや居住地域別のニュース配信も予定しており、休日のお出かけ先をリコメンドする機能も強化していく。
チケットは平均10%、最大70%の割引も設定。将来的にはセット券や回数券、選択型の回遊型チケットなど、幅広いラインナップで需要を促す。購入チケットをメールやLINEで知人に配布できる機能も備えた。開始当初ではポイントプログラムは用意しないが、ポイント統合やオムニチャネル化を進めるJTBの取り組みも視野に入れている。
今後の展開としては、JTBが先般、出資・業務提携したアクティビティ予約サイト「asoview!(アソビュー)」での展開も検討。このほか、スタンプを活用した観光地や温泉巡り、飲食店を中心に店舗を回遊させる販促活動など、チケット販売以外の引き合いも多いという。業界外からの問い合わせも多く、新たな可能性を模索していく方針だ。
>>参考
JTBが着地型旅行で一気にシェア拡大へ、体験予約サイト「アソビュー」に資本参加で5つ領域を協業(2015年 4月 22日)