今秋開催されたツーリズムEXPOジャパン2017に合わせ、日本政府観光局(JNTO)はインバウンド商談会「Visit Japanトラベル&MICEマート2017」を実施した。今年は、世界33カ国・地域から約450社のバイヤーおよびメディア、国内から約580社のセラーが集まり、3日間にわたって商談会を実施。欧米豪市場へのプロモーションが強化されているなか、欧米豪からのバイヤーは前年を約40社上回り、全体の5割を超える参加社となった。
今回、同市場からの誘客に力を入れる京都市の事業者に同行。バイヤーとの商談会で話を聞いてみた。
里山デザイン ✕ エア・カナダ
里山デザインは、京都市北部の京北地域で着地型体験プログラムを提供している。築100年以上の古民家農家での宿泊体験、里山でのトレッキング、郷土料理のクッキング教室、酒造でのテイスティングなど京北ならではの体験を紹介。里山デザインの中山慶さんは「京北は『となりのトトロの世界のようだ』とよく言われる。非常に混んでいる京都市中心部を離れて、もっと静かでリラックスできる京都を求めるニーズはある」と話し、京都駅から1時間ほどでアクセスできることから市内と京北とを組み合わせた旅程を提案した。
エア・カナダ・セールスマネージャーのマリア・ルーさんは、体験プログラムであることから言語の問題を指摘し、通訳ガイドの手配に関心を寄せた。また、エア・カナダ・ルージュが運航するバンクーバー/関西線に触れ、「夏季はデイリー運航しており、カナダからの旅行者の京都へのアクセス機会も増える」と説明し、この路線のプロモーションに合わせて京北地域を含めた京都を紹介していきたいと応えた。
京都伝統産業ふれあい館・京都工房コンシェルジュ/MKグループ ✕ 米国Business World Travel
京都伝統産業ふれあい館では、展示のほか職人の実演、体験教室などを通じて、京都の歴史文化を伝える多彩な伝統工芸品を世界に発信。その取り組みのひとつして、京都工房コンシェルジュが、見学や体験が可能な工房と「本物の体験」を望む旅行者との橋渡しをしている。京都工房コンシェルジュのアナスタシア・ブルカヴェツさんは、茶道、生花、京漆器、日本傘、京友禅、西陣織など70種類以上の京都らしい工房体験を用意していると紹介。「ディープな京都を知るいい機会」とアピール。神社仏閣や芸姑舞妓など一般的なイメージとは異なる京都を知ることができると強調した。
ハイヤー/タクシーサービスでVIP対応に定評のあるMKグループ。同社外商部課長の佐野義一さんは、昨年の伊勢志摩サミットでも送迎したことを説明したほか、ビジネス総合誌プレジデントでの「接客好感度企業ランキング2014」でも第3位に入ったことなどを紹介し、質の高いサービスを提供しているとアピール。「ドライバーは外国語対応も可能なほか、京都の隠れた名所も案内できる」と付け加え、単なる送迎だけではなく観光の足としての利用も勧めた。
ニューヨークをベースとするBusiness World Travelの主要な顧客はコーポレート。インセンティブツアーも多く手がけ、ハイエンド旅行者が多いことから、同社イベントマネージャーのクリスピン・フェルナンデスさんは、京都らしい体験ができる京都工房コンシェルジュとVIP対応のMKのプレゼンテーションに真剣に耳を傾けた。同社は年間400名ほどを日本に送客。京都への訪問については、ビジネス目的での訪日が多いため、東京をベースとして往復するパターンが一般的だという。
Tabikyo Japan ✕ 豪Flight Centre Travel Group
Tabikyo Japanは、京都から奈良、熊野古道までの着地型商品を提供している。コンセプトは一歩踏み込んだ日本の旅をテーラーメイドで手配すること。ディレクターの田村啓さんは「大手旅行会社では提供していないローカルツアーを造成している」とアピール。サービスマネージャーの羽田明史さんは、独自のコネクションで一般公開していない寺社での宿坊、問答、座禅など体験を紹介。「お寺での生活をそのまま体験できる。より精神的な世界を知りたい人の希望を叶える」と説明した。
シドニーをベースとするFlight Centre Travelはオーストラリア最大の旅行会社。タイ、日本、韓国担当プロダクトマネージャーのデビット・バセットさんは、「オーストラリア人には、ニセコ、白馬などのスキーリゾートが人気だが、歴史文化体験を求めるニーズも高くなっている」と応えた。同社の顧客はFITがほとんど。日本への送客は年々増加しており、昨年は前年比で90%増となったという。バセットさんは、日本の観光素材の豊かさと安全性に加えて、日豪間の航空ネットワークが拡大していることが大きいと説明。「リピーターも増えており、2回目以降は高山、金沢、沖縄など地方に足を伸ばす旅行者が多い」と付け加えた。
サムライ剣舞シアター ✕ 豪Get Educational Tours
伝統芸能剣舞の鑑賞および体験プログラムを提供しているサムライ剣舞シアター。取締役で東京道場の責任者を務める荒井龍風さんは「剣舞は侍によって作られた日本の伝統芸能のひとつ。サムライ剣舞シアターでは、研鑽を積んだ剣舞師から本格的な剣舞を学ぶことができる」とアピール。剣舞ショーのほか日本刀の説明や体験、着物での写真撮影などのコースを提案した。また、学生向けの特別料金も設定していることから、教育旅行のプログラムとしても受け入れられていると説明した。
メルボルンのGet Educational Toursは、学生旅行を扱う旅行会社。マネージング・ディレクターのアン-マリー・ミッチェルさんによると、高校生が中心で、1グループ約25名、年間40グループほどを日本に送客しているという。平均12日間の日程で、東京、大阪、京都、奈良、広島などを回る。伝統文化体験を組み込んだ旅程が多いが、最近では日本の科学技術を学ぶ学生や日本のオーケストラと共演する学生など、さまざまな分野での教育交流が増えているという。「日本からも多くの学生がオーストラリアを訪れている。日豪の学生交流が増えていることはとても喜ばしいこと」と付け加えた。
茶道体験カメリア、2年で集客倍増、予約はウェブサイト中心
京都で外国人向け茶道教室を展開する「茶道体験カメリア」は、VJTM2017に単独でブースを出展。海外バイヤーとの商談を進めた。カメリアは2014年3月に二年坂に茶道教室をオープン。翌年には龍安寺にプライベート体験専門の教室を開いた。日本文化の「コト」消費への関心の高まりから、年々集客を増やし、オープン当初は年間2,000人ほどだったが、2015年に5,000人、昨年には1万人を超えたという。代表の森温子さんによると、顧客のほとんどが欧米から。アメリカ、イギリス、フランス、オランダ、ドイツ、スイスからの旅行者が多く、アジアからの旅行者はほんどいないという。「旅行ガイドブック『ロンリープラネット』に掲載されたことが大きい」ようだ。
また、顧客のほとんどがFIT。同社ウェブサイトから直接予約する旅行者がほとんどで、同社のフェイスブックから情報を得る外国人も多いという。13人いるインストラクターはすべて英語対応が可能。ただ、今後も欧米豪の旅行者をターゲットにしていくため、「あえて多言語化は考えていない」(森さん)。
取材・記事 トラベルジャーナリスト 山田友樹