サービス・ツーリズム産業労働組合連合会(サービス連合)は、2021年の春季生活闘争(春闘)の方針を発表した。コロナ禍の厳しい環境にあるが、今年度も従来からの中期的な賃金目標「35歳・年収550万円」の実現に向け取り組む。実質的な賃金改善1.0%以上の要求を継続するなど、要求水準は従来通りの考え方で推進する。
サービス連合会長の後藤常康氏は同方針について、「賃金・人事制度は短期間の環境で左右されるものではない」と説明。観光産業の最大の課題に人手不足をあげ、「将来を見据えて、一定程度の労働条件で働ける環境整備が必要。長期の視野で、構造的な課題に労使で向き合い、交渉に臨むことをお願いした」と強調した。
ただし、「実際の支払いという点では、現実的な対応が求められるだろう」と言及。具体的な要求内容は、加盟組合が経営実態にあわせて主体的に策定することとした。すべての労働者の生活を守り、事業を継続させ、雇用の維持・確保を重視し、取り組んでいく。
なお、加盟組合の企業ではこれまで、コロナ禍を原因とする解雇権の行使はなく、社員が自ら選択する早期退職や希望退職の制度に留まっているという。これについても「この状況下で事業の継続性を図る場合、一定の固定費・人件費の削減は理解できる」との認識を示した。
GoTo否定にならない感染拡大防止策・医療体制の拡充を
サービス連合では先ごろ、雇用と事業を守るための第6次緊急要請を与野党や関係省庁等に行うことを確認した。内容は、昨夏にも要請した救済策「観光産業の持続可能給付金」の創設などだ。これは、人件費を中心に事業経費を補填する融資で、従前水準の雇用継続をした場合には、返済免除措置も設けるもの。
後藤氏は「今の状況は、企業や労働者の個々の努力で対応できるものではない。GoToトラベル事業では一定の効果はあったが、加盟組合で収支改善や赤字解消が実現した企業・事業所は1つもない」と現状を説明。人流・交流を止めることが感染拡大防止に有効であるなら協力するべきとの認識を示しながらも、「観光は人の交流で成り立つ仕事。交流を止めるなら、事業継続と雇用を守る仕組み作りをお願いしたい」と訴えた。
さらに、GoToトラベル事業については、大前提として「感染拡大の収束後に再開してほしい」と要望。GoTo事業に否定的な意見が出ないような感染拡大防止策はもちろん、「感染拡大が収まらなければ、商売を続けることは難しい。医療崩壊が警鐘されて久しいが、医療体制や病床確保・拡充を強く望んでいる」ことも主張し、先ごろ、関係省庁や国会議員を招いて開催した勉強会で要望したことを明かした。
冬ボーナスは1か月近い低下
サービス連合によると、2020年秋闘はこれまでにない状況下での交渉となった。業績が厳しいなか、冬期一時金に代えて「慰労金」「生活支援金」などを支給した企業もあった。
12月16日までに合意・妥結した54組合の冬期一時金支給月数は、単純平均で0.36か月(2019年1.23か月)となった。業種別では、ホテル・レジャー(27組合)が平均0.46か月(同1.28か月)、旅行会社を含むツーリズム・航空貨物(27組合)は平均0.26か月(同1.19か月)だった。
夏冬の年間一時金の結果では、集計可能な95組合の単純平均で平均1.30か月(2019年間2.87か月)。業種別では、ホテル・レジャー(41組合)の平均は1.13か月(同2.63か月)、ツーリズム・航空貨物(54組合)の平均は1.43か月(同3.14か月)だった。このうち、ツーリズム(45組合)の平均は0.2か月。サービス連合によると、国際航空貨物業は荷動きが例年の7割であったが運賃の高騰で、業績への影響は小幅に抑えられたことから、業種によって違いが鮮明になったとしている。