2021年6月15日に閣議決定された2021年版観光白書の第Ⅳ部では、新型コロナウイルス感染症の対応と観光の復活に向けて2021年度に実施される施策が明記されている。日本政府観光局(JNTO)と地域(地方公共団体・観光地域づくり法人)の適切な役割分担や地域が行うべき活動なども示された。
観光地域づくり法人(DMO)を核とする観光地域づくりの推進では、DMOの育成・支援、情報支援・ビッグデータの活用を促進。適切な役割分担に基づく広域的な連携の強化などを実施する。また、役割分担として、地域(地方公共団体・DMO)は、観光資源の磨き上げや域内交通を含む交通 アクセスの整備、多言語表記等の受入環境の整備等の着地整備を最優先に実施する。
着地整備を行った地域・DMOが作成したデジタルコンテンツは、JNTOが発信・分析を行う。訪日プロモーションでは戦略的高度化も実施。「東京2020大会」後を見据えて、観光ブランドイメージの確立に向けたグローバルキャンペーン、欧米豪市場などで現地PR会社などを活用した効果的なプロモーション事業、アジア市場のリピーターを対象とした大規模キャンペーンなどを展開する。
インバウンドの段階的復活に向けては、新型コロナウイルス感染症の状況が落ち着いている国・地域から小規模分散型パッケージツアーを試行的に実施。ツアー主催会社がビジネストラックに準じた防疫措置を徹底、管理された小規模分散型パッケージツアーを試行的に実施することで、地域の受入環境の醸成や「安全で安心な新しい旅のスタイル」の普及を図るものとしている。
出入国の円滑化、休暇改革、観光教育にも
また、観光インフラの整備として、出入国の円滑化にも取り組む。最先端技術を活用した革新的な出入国審査の実現に向けて、世界初の出入国審査パッケージの導入や世界最高水準の技術を活用し、空港での入国審査待ち時間20分以内とすることを目指す。また、FAST TRAVEL推進の一環として、顔認証技術による旅客搭乗手続の一元化(One ID化)や、自動チェックイン機、自動手荷物預け機、スマートレーン、CUTE システム、インラインスクリーニングシステム等の導入を促進する。
さらに、観光振興を図るための施策として、休暇改革に取り組む。年次有給休暇の取得推進、休暇取得の分散化等による観光需要の平準化などを図るほか、持続可能な観光地域づくりを進めていく。
このほか、観光の意義に対する理解を深めることを目的として、初等中等教育を対象とする主体的な学びを設計した探求学習型の教育プログラムを開発し、観光教育の充実を図り、ワークショップなどを通じて全国への横展開を実施していく。