カナダ観光局は、約3年のコロナ禍を経て、「リジェネラティブ・ツーリズム(再生型観光)」にその観光客誘致戦略の舵を切る。旅行者数や消費額という定量目標から、旅行者と地域コミュニティの満足度を指標として掲げ、旅行会社と共同で体験商品の開発を進めていく。
このほど同局国際担当副社長のモリーン・ライリー氏が来日。「ロックダウンが行われたなかで、観光に対する考え方が変わった。地域コミュニティが安心できるかどうかを重視するようになった」と、戦略転換の背景を説明。観光による地域住民と旅行者の「幸せ」を追求していく考えを示した。
そのためには、地域コミュニティでは「観光客を受け入れる価値を認識してもらうことが重要」と指摘。コロナ禍では、カナダ国内の旅行キャンペーン「This is Canada Nice」を展開し、国外からの旅行者(インバウンド)向けの旅行会社とのパートナーシップで「カナダ人の知らないカナダを再発見してもらうことで、観光の価値の理解に努めた」という。
また、旅行者に対しては、「環境、経済、文化それぞれのサステナビリティを柱として、カナダをもっと深く知りたい人を呼びたい」と話し、ターゲットをこれまでの属性から変更し、マーケティング方法も変えていくとした。
今後、マーケティングや商品開発で注力していくのが先住民族体験。カナダ観光局としては、カナダ先住民族観光協会(ITAC)の活動を支援し、ITACが開発する体験コンテンツを日本市場にも紹介していく。
ライリー氏は「カナダは先住民族の歴史が長く、文化も多彩。それぞれに自分たちのストーリーがあり、体験コンテンツもさまざま。体験プログラムを造成すれば、先住民族たちの言葉や文化が再生される機会にもなり、コミュティの維持にも繋がる」とその意義を説明した。「リジェネラティブ」は、先住民族の考え方がベースとなっており、観光局としては、その考え方を「サステナブルツーリズムの次のレベルの観光の力」として再定義した。
日本の需要回復、早まる可能性
カナダへのインバウンド市場について、ライリー氏は「まず動くのは欧州。アジア太平洋の回復は、現状の旅行規制を考えると、最後になる」と予想。ただ、国境再開後に状況が急激に変化したオーストラリアのように、日本も水際対策の緩和次第で海外旅行の需要も高まると見ている。「当初は2024年あるいは2025年までは回復は難しいと予想していたが、もっと早まる可能性がある」と期待をかけた。カナダ観光局としては、今冬に向けて、日本の旅行会社と準備を進めていく考えだ。
カナダ観光局日本地区代表の半藤将代氏は「カナダ観光を変えるチャンス。旅行会社、エア・カナダ、カナダ大使館などともコミュニケーションを取りながら、満足度の高い新しい旅を創っていきたい」と意欲を示した。
5月24日からは旅行業界の商談会「ランデブー・カナダ2022(RVC2022)」が3年ぶりにトロントで開催される。約580人のバイヤーがすでに登録。日本からは約30人が現地に赴く予定だ。