群雄割拠の旅ナカ市場に、日本から新たなプレイヤーが誕生した。現地オプショナルツアーの予約サイト「Hello Activity(ハローアクティビティ)」だ。特徴は、現地の体験・アクティビティの代理販売をするのではなく、旅行者が直接、その催行会社に問い合わせや予約をできるようにしたこと。旅行者と現地ツアー会社がつながり、円滑に旅行契約や決済、ツアー実施ができるサポートを提供する。これによって、旅ナカ予約で生じていた旅行者の不便や催行会社の課題に対応できるという。
なぜ同サイトでは、旅行者とアクティビティ会社の直接取引を推奨するのか。運営するMEGURU(メグル)社に、ビジネスモデルとその背景、旅行者と催行会社のメリットを聞いてきた。
代理販売から転換した理由
旅ナカのツアー・アクティビティ選びでは「自分が宿泊するホテルまで送迎は来てくれるか」「アクティビティの具体的な終了時間が知りたい」という、細かな疑問や要望はつきもの。そんな旅行者と、ツアーやアクティビティの催行会社をつなげ、質問や予約など直接取引ができる仕組みを提供するのが、旅のアクティビティ・マーケット「Hello Activity」だ。2022年3月のサービス開始後、現在、ハワイ、韓国といった日本人に人気の海外旅行先や沖縄、北海道を中心に、国内外450社1800の現地ツアーやアクティビティが登録されている。
運営するのは、「まっぷる」や「ことりっぷ」を出版する昭文社の旅行事業部からスタートしたMEGURU社。当初、MEGURU社はHello Activityの前身となる予約サイト「MAPPLE Activity」で、契約する催行会社の商品を販売するサービスを展開し、順調に成長していた。
しかし、コロナ禍で旅行がストップすると、状況が一変。「苦しい時期だったが、ビジネスモデルの見直しを図る機会と捉えた」と、トラベルプラットフォーム事業本部副事業部長の松本哲弥氏は振り返る。
そこで注目したのは、消費者のオンラインでの情報収集や購買行動の変化だ。松本氏は「近年、個人がインターネットで様々な情報を取得できるようになり、旅行でも航空券やホテルを直接予約することが容易になってきた。さらにコロナ渦の影響で、ホテルの営業状況や飛行機の運行状況など、リアルタイムで正確な情報交換をするニーズが高まり、個人での直接予約が増えている」と、旅行者の情報感度や予約形態の変化を指摘。
そのうえで「旅ナカの現地ツアーやアクティビティも、旅行者と催行会社が直接やりとりする時代がもうそこまで来ている。そのトレンドを逃さず、両者が抱える不安や不便を解消することで、ビジネスチャンスがあると判断した」とサービスを立ち上げた背景を説明する。
前身の「MAPPLE Activity」のように、催行会社のツアーを販売会社が代理販売する場合、旅行者側には「急用のため現地でツアー会社に連絡を取りたくても、購入先の販売会社の営業が終了している」「お願いしたことが現地ツアー会社に伝わっていない」といった不便や不満があった。そうかといって、旅行者が催行会社のウェブサイトで予約・決済をする機会は少なく、特に海外であれば「言語やセキュリティ面で不安」とハードルが高いのが事実だ。
一方、催行会社側にも「ピックアップに行ったのに旅行者と会えず、連絡も取れない」「販売会社に回答した内容が伝わっていない」「一度参加してくれた方にリピートしてほしくとも、コンタクトを取るのが難しい」などの問題があった。MEGURU社は、こうした旅行者と催行会社の不満や問題を解消するサービスとして、Hello Activityを開始した。
直接コミュニケーションする効果
では、Hello Activityのサービスを見てみよう。
Hello Activityの予約までの遷移は、多くの旅ナカ予約サイトと同じ流れで、ユーザーにとっても慣れ親しんだ操作性である。一方、Hello Activityが一般的な旅ナカ予約サイトと大きく異なるのは、商品概要のアイキャッチとなる画像や動画のそばの目に入りやすい場所に、「催行会社にチャットで聞く」のボタンがあること。ここから簡単な会員登録(無料)を済ませた旅行者は、催行会社に直接、問いあわせができる。
問いあわせは、メッセージチャット形式でHello Activity上で展開。その内容は、マイページでいつでも確認ができるようにした。メールや電話ではなく、メッセージチャットを採用したのは「日本人に親しみのあるLINEやSNSのDMのような形にすることで、直感的なメッセージングを可能にするとともに、その履歴を視認しやすいベストな方法だと判断した。既読・未読もわかり、双方にとってストレスが少なくなるはず」(松本氏)というのが理由。自動翻訳機能も付けており、海外の催行会社とのやり取りでも、お互いが自国語で入力/閲覧が可能だ。
松本氏は「催行会社からは、スムーズなやり取りに対する評価に加え、事前にコミュニケーションをとることで『直接お客様とのやり取りができるため誤解が生じない』『最初から参加者の信頼感が強く、満足度が高くなる』といった声が多数寄せられている」と説明。旅行者と催行会社が事前にやり取りをするメリットをアピールする。
さらに「催行会社のプロフィール」ページも設定し、テキストや画像、動画などを通して、会社の想いやアピールポイントなどの企業紹介を商品概要のページから閲覧できるようにした。特に動画の効果は抜群。「代表者のメッセージや現地の様子がわかる動画があると、旅行者から『安心感が違う』という声を聞く」と松本氏。このプロフィールページは、催行会社の公式SNSなどにリンクを貼り、PRやブランディングに活用することも可能だという。
デジタル対応を徹底サポート
旅行者と催行会社の双方の問題解消を目指したMEGURU社。しかし、旅ナカは観光分野の中でも、デジタル化が遅れている領域だ。ツアー運営と顧客・販売管理を少数で兼務する事業者も少なくなく、いまだ「現状(アナログ)の管理で十分」「これ以上業務が煩雑になるなら、新しい販売チャネルは入れたくない」という声も根強い。
こうした催行会社の実情を踏まえ、Hello Activityでは管理画面もシンプルに操作できることに注力した。仮登録して本人認証を終えると即、商品の入力が可能となり、MEGURU社の審査を経て5営業日以内に公開。催行会社が入力するのは、ツアータイトル、料金、申込人数単位、スケジュール、キャンセルポリシーといった簡単な内容だ。キャンペーン料金は上位表示することも可能。催行会社が直接登録するため、タイムセールなど、自社のタイミングで販促を強化できる。
松本氏は、大手旅行会社の出身。さまざまな催行会社と協力しながら旅行販売に尽力してきた。「これまでの旅ナカ販売は、細かな商品情報を入力し、さらに販売開始まで販売会社側の作業を待つ必要があった。こうした手間が双方にとって生産性を下げると実感しているから、必要最小限のフォームにこだわった」と話す。
Hello Activityの特徴であるメッセージチャットやプロフィールページには、フィルターをかけており、不適切な表現のある内容が投稿されないよう、予防線を敷いている。さらにシステム面だけでなく、人的なサポートも重視し、エリアごとに専任担当者を置いている。松本氏は「自社ホームページやSNSのない催行会社は少なくなく、オンライン上で表現することに不安の声もある。安心して対応できるようサポートしていく。何でも相談してほしい」と語る。
固定費は不要、手数料は販売額の5%または8%
MEGURU社は料金プランにも工夫を凝らした。商品を掲載するための登録料・掲載料・月額利用料といった固定費は一切不要で、Hello Activityからの予約に対する「紹介手数料」は、ツアー料金の5%または8%(プランによる)という破格の設定だ。松本氏は「当社が旅行者とのやり取りに介在しないことで、最低限に抑えた」と話す。
手数料率5%の「マッチングベースプラン」の場合、キャンセル/中止を問わず確定した予約が手数料収受の対象。そして、先ごろ開始した新プランの「参加実績ベースプラン」は、手数料は8%で、旅行者が参加した予約だけが対象だ。参加実績ベースプランは、天候に左右されやすいアクティビティなど、予約実績での手数料設定に不安を感じる催行会社の要望に応える形でこの7月から新設したもの。
MEGURU社は現地ツアー主催事業として、グアムでマリンスポーツ施設やパラセーリング催行会社も運営しており、サービスの設計には催行会社側の視点もいかしている。「催行会社の運営実態やコロナ禍の痛みもわかる。だからこそ、催行会社に寄り添った新しい旅ナカ予約の形を提供できると確信している」(松本氏)。今後は、掲載する催行会社や商品の範囲を、国内外問わず、日本全国、全世界に広げ、レストラン予約や送迎、ガイドなど、ジャンルを問わず、旅行者の利便性向上につながるコト・モノを掲載したい考えだ。
Hello Activityを運営する上で大切なのは、お客様の選択肢を増やすこと。そしてサイトにユーザーを呼び込むこと。MEGURU社ではそのための施策も重視している。現在、催行会社数の増加に向け、紹介者/紹介された側の双方に2万円を提供する「招待プログラム」を実施中。招待がなくても、サプライヤー登録(無料)ですぐにアクティビティ販売を開始することも可能だ。さらに、消費者向けのキャンペーンも随時展開している。松本氏は「アクティビティ予約サイトとして、まずは国内ナンバー1を目指したい」と意気込む。
催行会社が予約を獲得するほどHello Activityが活況になり、さらなる集客に向けたマーケティングを強化できる。松本氏は「そのような好循環を回し、時代にあった新しいサービスとして成長させていく」と力を込めた。
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対応サービス:旅のアクティビティ・マーケット Hello Activity
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記事:トラベルボイス企画部