フランス観光開発機構(ATOUTフランス)は2016年のツーリズムEXPOジャパン出展にあわせ、総裁のクリスチャン・マンティ氏と、アルザス、サントル・ロワール、ミディ・ピレネーの各地方観光局の代表者が来日し、記者会見を開催した。
パリ同時テロ以降、日本人訪問者数が厳しい状況にあるなか、「今年こそ参加しなくてはならない」(フランス観光開発機構在日代表のフレデリック・マゼンク氏)と、2011年ぶりの出展を決定。マンティ氏は日本市場について、「質的に大切なマーケット」と述べ、今回の出展を通してフランスの現状を伝え、日本の旅行業界との関係をさらに強化したい考えを示した。
マゼンク氏によると、テロ事件以降、最も大きな影響を受けたのは1月~3月の卒業旅行マーケット。その後は回復傾向で推移し、7月前半までは右肩上がりの推移だったものの、ニースのテロ事件が発生した。同テロ事件によるキャンセルで、前年比15%減の影響があったと見ている。2016年の年間では前年比約30%減になる見込みだが、今後は予約状況を踏まえると、「10月~12月の3か月間で、ある程度回復する」との見方だ。
こうした日本人旅行者の推移について、マンティ氏は「日本旅行業協会(JATA)をはじめ旅行業界の尽力が大きい」とコメント。フランス観光開発機構とJATAは日本人旅行者の回復に向け、様々な取り組みを行なってきたが、特に今年1月に行なったトップレベルの視察ミッションがベースとなり、「効果がすぐに表れた」という。
地方の魅力への注目高まる、日本人旅行者も増加
JATA副会長の菊間潤吾氏を団長に、安全・治安体制についてはパリの警察署のシステムを直接視察したのに加え、アルザスやミディ・ピレネーなどの地方にも足を運び、素材を視察。商品化の意見交換を行なった。その結果、その後の旅行会社のFAMが増加し、地方を訪れる旅行商品も増加。ミディ・ピレネー地方観光局の場合、同観光局がプロモーションするオクシタニア地方では旅行会社の商品設定が前年比で30%増加した。隣国・スペインとの組み合わせや、8泊までの滞在型商品など内容も多様化し、日本人旅行者数も増えているという。
このほか、アルザス地方観光局も主力のストラスブールやコルマールへ行くツアーのほか、JATAのヨーロッパの美しい村30選に選ばれたリクヴィルなど、小さな村を訪れるツアーも商品化されてきた。主要都市からのアクセスの良さに加え、パリに次いでミシュラン星付きレストランの多い美食やワイン、クリスマスマーケットなどの魅力もアピールしていく方針だ。
一方、渓谷に古城が点在する風景で人気のサントル・ヴァル・ド・ロワール観光局は、今年はメンテナンス中の古城が多いため日本人訪問者数は減少。ただし、シャンボール城では往時の風景を再現する工事など、魅力の磨き上げも行なわれている。さらに2017年は「庭園年」に設定しており、毎年開催している「国際庭園フェスティバル」とあわせてプロモーションを強化していく。
なお、ミディ・ピレネーは今年から、ラングドック=ルシヨンと合併し、行政名称はオクシタニア地方となった。観光局の名称はミディ・ピレネー地方観光局に変更はない。
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記事:山田紀子(旅行ジャーナリスト)