JTB連結決算は好転で「回復に向かっている」、海外ツアー「ルックJTB」が牽引、インバウンドは減収 -2017年度4~9月期

左から)JTB常務取締役国内事業本部長・今井敏行氏、取締役財務部長・木村岳志氏

ジェイティービー(JTB)が発表した2018年3月期第2四半期(2017年4月1日~2017年9月30日)の連結業績は、売上高が前年比0.3%増の6578億円、営業利益が58.7%増の72億円、経常利益が60.3%増の98億円、四半期純利益が77.3%増の66億円で、2期ぶりの増収、1期ぶりの増益となった。前年は個人旅行の不振などで大幅な減収減益となったが、今期は「回復に向かっている」(常務取締役国内事業本部長の今井敏行氏)と好転している。

ただし、主力の旅行事業のうち、国内旅行、海外旅行、訪日旅行は減収。なかでも、訪日旅行は同期間における全訪日旅行者数が19.9%増で推移したのに対し、JTBの売上高は1.2%減の369億円(※実質)だった。

※編集部注:「実質」とは前年と同条件にした数値。JTBでは今年度から、MICEの計上区分を旅行事業からその他の事業に変更した

訪日旅行の減収は、価格競争が激化する中国や台湾など近距離アジアの団体旅行の減少とFIT化が理由。このうちFIT販売は、自社の訪日FIT向け販売サイト「JAPANiCAN.com(ジャパニカン)」の取扱人員が22.1%増。また、販売提携を開始した宿泊予約サイトのアゴダ、中国最大手OTAのシートリップからの流入とあわせて50%増と好調に推移した。しかしながら、ウェブ販売の売上は販売手数料部分のみの計上となるため、団体旅行分の減少をカバーしきれなかった。

ただし、訪日インバウンド事業全体の利益で面は大幅に改善。売上総利益で11.8%増の拡大となり、今井氏は「FIT化の流れに乗れた」とアピール。今後もFITの取り込みに力を入れる方針で、宿泊の単体販売だけでなく、訪日後のツアー販売も強化する考えだ。

(追記:2017年12月5日)記事の公開当初、アゴダとシートリップとの販売提携内容を誤認する記載がありました。販売提携についての内容の訂正とともに、ご迷惑をおかけしました関係各位にお詫び申し上げます。 トラベルボイス編集部

増収増益は海外旅行パッケージの「ルックJTB」が牽引

増益の「牽引役」としたのが、海外旅行ツアーの自社ブランド「ルックJTB」。同商品の売上高は2.5%増で、特に情勢不安による買い控えのあった欧州方面の回復基調が奏功した。欧州はバス移動のツアーが多く、1台の乗車人数によって利益率が変わることから、海外旅行の売上総利益(10.1%増の555億円)の大幅な増加に貢献したという。

また、欧州とハワイ方面で行なった、チャーターを中心とする航空座席買取や繁忙期の早期販売や、さらに、シンガポール政府観光局と民間企業として初めて単独のMOU締結による販売効果なども売上拡大に繋がったと説明。今井氏は今後の海外旅行市場について、「FITで旅行会社を通さないで手配する方面と、スケールメリットや企画力、増員力が働く方面と、強弱が出てくる」と展望し、JTBとして特に後者の領域に力を入れていく方針だという。

一方、国内旅行は売上高だけでなく、売上総利益も7.7%減の562億円で唯一、減収減益となった。旅行意欲が過去最高などと言われた2015年(売上高:3200億円)に対し、昨年(売上高4.7%減)から減少傾向にあり、「回復の兆しが見えてない。次年度の大きな課題」(今井氏)とした。

なお、減収となった各旅行事業だが、ウェブ販売に限ると売上高は6%増で前年を上回った。苦戦している国内旅行に限っても、3.3%増のプラス推移だという。

グローバル旅行が大躍進、M&Aで取得した事業を中心に

旅行事業で増収増益となったのは、グローバル旅行。売上高は40.5%増の351億円(※実質)、売上総利益は59.3%増の81億円となり、事業規模で訪日旅行と肩を並べるまでに急拡大した。

このうち、アウトバウンド事業ではアジアを中心に出店攻勢をかけ、海外の拠点数は2017年3月末以降で、37都市65拠点増加の37か国143都市484拠点に拡大。インバウンド事業ではハワイ最大手のMICE事業会社・MC&A社など、M&Aで取得した企業の展開が奏功した。また、アジアではTour EastグループがグローバルOTAに着地型商品を提供し、大きな成果があったという。

【JTBグループ2017年度(2017年4月~2017年9月)連結決算 主要事業分野別業績】

  • 国内旅行

    • 売上高:2886億5100万円(3.4%減)、※実質:3034億円(0.5%減)
    • 売上総利益:562億3000万円(7.7%減・46億円減)、売上総利益率:19.5%(前期20.0%)
    • 商品別売上:エース0.3%減、団体13.9%減、メディア11.7%減
  • 海外旅行

    • 売上高:2263億9200万円(3.2%減)、※実質:2266億円(3.1%減)
    • 売上総利益:555億2400万円(10.1%増・50億円増)、売上総利益率:24.5%(前期21.6%)
    • 商品別売上:ルック2.5%増、団体8.6%減、メディア3.3%減
  • 訪日旅行

    • 売上高:352億500万円(5.8%減)、※実質:369億円(1.2%減)
    • 売上総利益:82億6500万円(18.0%増)、売上総利益率:23.5%(前期18.7%)
  • グローバル旅行

    • 売上高:348億5900万円(39.3%増)、※実質:352億円(40.5%増)
    • 売上総利益:81億8600万円(59.3%増)、売上総利益率:23.5%(前期20.5%)
  • 旅行事業(上記4事業合計)

    • 売上高:5851億700万円(2.7%減)、※実質前年比:0.1%増
    • 売上総利益:1282億500万円(3.8%増)
  • その他の事業売上

    • 売上高:726億9800万円(32.4%増)、※実質前年比:1.6%増
    • 売上総利益:133億4300万円(52.3%増)

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