ジェイティービーが発表した2017年3月期第2四半期(2016年4月1日~9月30日)の連結業績は、売上高が前年比4.7%減の6561億300万円、営業利益が61.6%減の45億5800万円、経常利益が61.4%減の61億1500万円、四半期純利益が63.3%減の37億4700万円で、減収減益となった。減収は5期ぶりのこと。
訪日旅行は10.4%増の374億円で増収となったが、国内旅行が4.7%減の3050億円、海外旅行は5.9%減の2338億円と振るわなかった。この理由についてJTBでは、国内旅行は熊本地震や過去最高となった前期の好業績(6.6%増の3200億円)の反動、海外旅行は欧州でのテロの不安や燃油サーチャージ下落などの影響と説明した。
特に、MICEの強化や事業領域の拡大、全社を挙げたリオデジャネイロ五輪パラリンピックなどで前期並みを維持した法人営業に対し、個人旅行が振るわなかったのが大きな原因とする。パッケージ商品の売上げは、国内旅行のエースJTBは5.0%減、海外旅行のルックJTBは3期連続の前年割れの6.6%減。また、エースJTBの九州方面は32%減、ルックJTBの欧州方面は24%減、燃油サーチャージは4.4%減となった。
6月に発表した情報流出の可能性による影響については、6月の日販が店舗は5%減、オンラインは7%減。全体の業績に対する影響は分析中としながらも、「情報流出事案を受けてテレビや新聞、交通、オンラインなど、一切の広告を自粛したことによる影響が大きい」(常務取締役国内旅行事業本部長の今井敏行氏)との見方を示した。これにより、広告宣伝費は減少したが、下期は内容を変更して再開し、年間では大きく変わらない見込み。ネット広告のみ、昨年のリスティング中心の展開からの移行により、5億円程度減少する予定だという。また、グローバル事業は11.6%減の989億円となった。これは円高による為替の影響によるもので、実質では1.1%増のプラスと説明。2016年度もマレーシアやフィリピン、ベトナムなど、成長市場であるアジアでアウトバウンド拠点を拡大したほか、グローバルOTAなどとの提携も進めている。事業別の業績は最下段に記載。
仕入れ確保へ投資強化、個人旅行対策で販売システム刷新も
JTBによると、当初上期は前期並みの推移を見込んでいた。そのため「減益部分が計画に対して届かなかったところ。原因は売上げの落ち込み。一番の理由は個人旅行が想定より伸びなかった」(取締役財務部長の木村岳志氏)とし、特に「(海外旅行は)ルックJTBのパッケージ中心でやってきたが、マーケットとずれてきたところがある」と、変化への対応を強化している。
特に海外旅行は先月、仕入れ強化を目的に、2017年4月に仕入れ・造成会社を再編する構造改革を発表したところ。現在も航空会社のイールド戦略で、特に減少しているパッケージ向けの航空座席に対しては買取やチャーターなどを積極展開しており、例えばハワイでは既存の日本航空(JAL)やデルタ航空に加え、ハワイアン航空の年間買取を強化。これにより取扱人員は、上期が前年比92%に対し、下期は110%を上回る推移で、効果が出てきているという。こうしたリスクを負った積極的な仕入れで、バリューチェーン全体の利益最大化を目指す方針だ。
また、仕入れ強化は国内旅行、訪日旅行にとっても課題となっている。国内旅行ではインバウンドの急増によりホテルの在庫不足と料金の高止まりが起きているとし、プリンスホテルや京王電鉄との提携など、在庫の確保や独占販売に向けた積極的投資を強化。過去最高となった前年は、ユニバーサルスタジオジャパン(USJ)への協賛による15分前入場の独自施策が大きな要素だったといい、独自商品の重要性を示す。
好調の訪日旅行でも、オンライン予約サイト「JAPANiCAN.com」の取扱人員は2.7%減と前年を下回った。これについては、システムダウンの影響に加え、品揃えの中心である東名阪のホテル在庫の枯渇と、急激なインバウンド増加で変化したホテル料金設定への対応の遅れをあげた。料金については事前取り決め型から変動制のダイナミックレートに転換していることから、今後はJAPANiCAN.comでも場貸しサイトの「るるぶトラベル」の商品をメインとすることで、ダイナミックレートに対応する。また、ウェブの提携販売先も増やす考えだ。
なお、市場の個人旅行化への対応では、販売も強化する。2017年4月には個人旅行販売の専用コールセンターを開設。2018年をめどに店頭の個人旅行販売システムを刷新し、この手配を簡便化する計画も明かした。
【JTBグループ2016年4月~9月期連結決算 事業別業績】
- 国内旅行
- 売上高:3050億円(前年比4.7%減)
- 売上総利益:608億円(6.0%減)
- 商品別売上:エースJTB 5.0%減、法人営業 1.0%減、メディア 15.7%減
- その他トピック:エースJTBの九州方面32%減、伊勢志摩地区32.1%増(首都圏発・人泊)、道南エリア97.0%増(首都圏発・人泊)
- 海外旅行
- 売上高:2338億(5.9%減)
- 売上総利益:504億円(7.0%減)
- 商品別売上:ルックJTB 6.6%減、法人営業 1.2%増、メディア 20.1%減
- その他トピック:ルックJTBの欧州方面は24%減、燃油サーチャージ下落の影響で4.4%減
- 訪日旅行
- 売上高:374億円(10.4%増)
- 商品別取扱人員:JAPANiCAN.com 2.7%減、SUNRISE TOURS 10.4%増、EXPERIENCE JAPAN 34.9%増
- グローバル事業
- 売上高:989億円(11.6%減)※実質(為替分換算)1131億円(1.1%増)
- その他トピック:海外拠点数37か国107都市422拠点(前期比6都市増加、98拠点減少。店舗の減少は韓国における提携販売の見直しによるもの)